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〜異世界転生して100年後の世界を生きてみる〜  作者: 伊政
ダンジョン攻略編
24/29

最後の戦い④・旅人

面白い前書きが思いつかず日々を過ごしていました。

 覚醒を果たし、あの後リルさんから全ての力を渡された私のやるべき事はひとつ、ミノタウロスとオルハーンを倒すことだ。


「リルさん……」


「気にしないでください、私もアキの力に依存しないと存在を維持できないのですからお互い様ですよ」


 リルさんは私に、使える全ての魔法とスキルを共有してくれた。完全に2人で1人というわけだ。

 もちろん魔法やスキルにも適性があるから全部が全部使えるわけじゃないけどね。


「じゃあ行ってくるね」


「アキなら必ず倒せますよ」


「わかってる、待っててね」


 そう言うとリルさんは優しく微笑んだ。前よりも存在が小さく感じる。力を吸われる呪いは大丈夫なのかな。



 ◇◇◇



 目を開けるとミノタウロスが苦しそうに悶えていた。よく見ると私に刺した腕が溶けている。リルさんの使える魔法に炎術がいくつかあったしその類なんだろう。


 ジーノウが驚いたように目を見開いてこっちを見ている。オルハーンは苦々しげな顔だ。


「くっ、キサマ、何故俺の腕が溶けているんだ…!」


「私の事殺そうとしたんだからやり返されても何も文句は言えないはずよ」


「くそっ、手加減してやってればそれをいいことに図に乗りやがって!」


 ミノタウロスは怒りに任せて腕を私から引き抜く。私の体に空いた穴は一瞬で塞がったが、やつの腕は赤くただれ溶けかけたままだ。再生が追いつかないのだろう。


 私は意識の中に"旅人"の存在を確かめる。



「発動…!」


 眠っていた祝福が私を勝利へと導く瞬間だ。




 ─────遡ること数分前。と言っても私の感覚だから現実では数秒にも満たないけど。



「このスキル、調べれば調べるほどその力の恐ろしさ実感しましたよ」


 リルさんが苦笑しながら言う。私も祝福とか言うくらいだしどんな効果を持つのか気になっていた。


「まず魔力炉、このスキルの最大の武器ですね。魔力を無限に作りそれを物理的な力にも純粋な魔力にも還元することが出来るのです」


「えっ、強すぎ!」


 何それ聞いてないんですけど。今までの私の魔力切れが馬鹿馬鹿しく感じてくる。


「そして恒常性。これによりどんな環境にも適応でき、この恒常性が魔力炉の無限の力を可能にしています」


「……!!」


 言葉が出ない。


「そしてこれは薄々気づいていたと思いますがスキル奪取ですね」


「うわ、こりゃ酷い…本当に無敵じゃん」


 まさにチート。よくあるやつだ。私には到底扱える代物じゃない。

 リルさんは答える。


「ええ、"ある"条件を満たしているうちは無敵です」


 なるほど、チートスキルには何かしらの代償があるものだ。しょうがない。というか代償があってもこの世界をひっくり返せるくらいにはやばそうだけど。


「その条件って?」


「旅をすることです」


「…?」


「これがこのスキルの発動条件なのです。この条件を満たしていなければこのスキルはいかなる効果も発揮できません」


 旅をする…か。異世界から旅をしてきたことにちなんだのだろうか?


「まあそんなこと気にしなくても大丈夫です。それに今は目の前の敵に集中しましょう」


「うん、負ける気がしない!」


 そうしてリルさんが解析してくれていたおかげで"旅人"の効果の全貌が明らかになったのだ。正直意味わからない。

 身体強化については思い出した記憶で獲得していたからそのまま前のからだから引き継がれたんだろう。



「ヴォぉぉおおおお!!!!!」


 耳をつんざく咆哮をあげて片手に大剣を持ったミノタウロスが突っ込んでくる。

 私は素早く構え……剣落としたままだ。やばい。


 とはならない。

 素早く前進し両手でミノタウロスの剣の柄を受け止める。なんで勢いよく振り下ろした剣の柄を手で抑えられるかって?炉のおかげで体力もオーバーにあるから身体強化がフルパワーで使えるのだよ…!


「な、なにっ!」


 剣を振る腕がビクとも動かなくなり焦るミノタウロス。私が体重をかけて腕を振るうとミノタウロスは為すすべもなく地面にたたきつけられた。合気道を学校の授業でかじったのが思わぬ所で役に立ったみたいだ。

 そのまま落ちていた剣の柄を足で弾き片手でキャッチ、軽くいやそこそこの力でミノタウロス目掛けて振ってみる。

 ビュンッという音と共に風と薄ら赤い刀身からこれまた赤い光の残像が出る。

 ミノタウロスは辛うじて転がって避け立ち上がっている。タフなヤツめ。


「うおああああっっっ!!!死ねぇぇえ!!!!」


 半狂乱の牛の魔物が再度突っ込んでくる。しかし彼に勝ち目はない。

 撃ち合った剣はことごとく私に擦り流され、払われ。さっきまでのような甲高い金属音がしなくなった。


 そして今度は私が剣を叩き落としてやった。ミノタウロスは丸腰だ。


(今度はしっかり魔術でトドメを刺しに行こう。さっきみたいなことになったら今度こそ死んじゃうからね)


 そう思い私は息を吸い今までにないほどの巨大な魔力を魔力炉からひねり出す。

 リルさんの知る最強の雷術。リルさん換算で1ヶ月分の魔力全てを使う大技だ。


「雷術………」


 私から溢れ出す魔力にたじろぐミノタウロス。


「ヒッ!」


 後ずさるところに狙いを定め……放つ!


「鳴神ッ!!」


 私の前にかざした手から魔力がものすごい勢いで消費されるのがわかる。そして轟音と共に地面を閃光が駆け巡り、極太の光の柱がミノタウロスの周囲に何本も連続して落ちる。そのうちの1本が魔物の胴体を貫いた。


 奥に見えるオルハーンとジーノウもさすがに驚いた様子。そして地面を走る電気に足を掬われ痺れているようだ。


(私の調停者を使い彼の魂を永久に封印してください)


 リルさんが言う。


(わかった。もう彼のことはきっぱり諦められたんだね)


(えぇ、まあ…)


 私は雷撃に撃たれ身体中焼け焦げて倒れているミノタウロスに向けて躊躇わず調停者を発動させる。

 息を吸い込み膨大な魔力を引き出す。


「封魂陣・牛魔!」


 この封印術は魂ごと封じる術。これで体を再生しても二度と動くことは叶わないのだ。


 眩い光の魔法陣がミノタウロスの周りに展開され、収束していく。そして後にはミノタウロスの頭に生えていた角だけが残った。ここにミノタウロスの全てが封印されたのだ。



最近は専ら田舎に引っ越してみたいと考えていたのですが、ある評論で「現代人の田舎逃避思考は休日のレジャーと同義である」と批評されていてぐうの音も出ませんでした。でも1度は憧れますよね。

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