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〜異世界転生して100年後の世界を生きてみる〜  作者: 伊政
ダンジョン攻略編
20/29

堕剣士オルハーン

ポケモンの人気投票でマッシブーンというあまり注目されていなかったモンスターが上位に食い込んでいることで話題になっていますね。ちなみに私はリザードンに投票しました。かっこいいからね。

 やつ(ミノタウロス)の気配に圧倒される私。キモいし空気不味いし早く出たい。


「リルの力を渡して俺を解放しろ。そうすれば命は助けてやる」


 くぐもった低音ボイスで威圧するように私に話してくる。

 その時梟眼の予測機能に一筋の光が映る。発生源はオルハン、ジーノウの首筋まで光は続いている。


「ジーノウ!」


 私は咄嗟にジーノウを渾身の力で吹き飛ばそうとするが……



「!?」


 時すでに遅し。ジーノウの首には剣が押し当てられていた。


「アキ、リルの力を使ってエルネストの封印を解いてよ。君、リルを取り込んだんでしょ?」


 私は反射的に答える。


「無理よ!!」


 頭にかかっていた靄が晴れる。私はその時全ての思考が噛み合った。

 聞きなれた声が聞こえてくる。


(アキ!)



(リルさん!何してたの?)


(何してたってねえ……ずっとあなたに呼びかけていましたよ。まあ全く聞こえていなかったみたいですが)


(そ、そうだったの?てっきり何か作業でもしてるのかと…)


(アキ、もう気づいたかもしれませんがあなたはオルハンに操られていたのですよ)


(そう言えば私、あいつの言うこと何でも信じてた気がする…)


(オルハンはエルネスト側に裏切った聖剣士オルハーンという者で人心掌握に長けているのです)


(そうだったんだ。ごめんなさいリルさん)


(いえ、私も一度オルハンに操られて痛い目を見ていますから。それにしてもこんなところで再会するとは…)


 ちなみにこの頭の中での会話は現実では3秒くらいしかかかっていない。意思と意思が音のイメージになって即座にやり取りされるからだ。


「ジーノウのこと、殺すけどいい?」


 あくまでも涼しげな顔のまま聞いてくる。


「いいわけないでしょ!」


「俺のことはいい、お前の生きる道を選べ!」


 ジーノウがかっこいいことを言う。でもそれは絶対に選んではいけない選択肢だ。


 もやの晴れた頭でリルさんと解決策を模索する。とにかくジーノウを助けないことには二人掛かりで来られて勝ち筋など微塵もない。ここはおとなしく従うしかないかも…。


「仮に、私が彼の封印を解いたとして逃がしてくれるの?」


「命だけは助けよう。ただしこいつ(ジーノウ)も無事に逃がして欲しいならアキ、君はこっち側について働いてもらう」


 やっぱりその答えが返ってくるよね…。

 私はできる限りの苦々しい顔の演技をして答える。


「わかった…封印は解く…」


「君ならわかってくれると思っていたよ」


 ミノタウロスはこちらを憎々しげに睨んでいる。


「ただし、ジーノウを渡すのが先よ」


「それはできないね」


 オルハン改めオルハーンはにこやかに答える。


「そう…わかった」


 今度こそ万策尽きてしまった。ここで奇襲を仕掛けてもジーノウと私がまとめてやられるだけ。ミノタウロスと戦って勝つしかないか…。


 私はゆっくりと磔になった牛魔人のもとへ歩み寄る。ものすごい魔力のオーラが伝わってくる。


(リルさん、調停者を使えばいいんだよね?)


(いえ、そうすれば全ての封印を解くことになってしまいます。オルハーンが騙されることにかけて普通の結界解除で力をセーブした状態で解放しましょう)


(でも私、結界なんて貼ることはおろか解除の仕方なんて…)


(気づいていませんでしたか?鎧の騎士と戦った時に結界術を使用できるようになっていたんですよ)


 えっ、てことは他にも色々力を奪ったりしているのかな?ちょっと楽しみかも。

 とにかく私はリルさんに教えてもらった通りに封印を解除する。


「解魔封印!」


 結界に手をかざすと半透明の結界は消え、ミノタウロスの拘束具も外れた。

 初級の解魔術を使ったのでミノタウロスの動きは半分ほどはまだ縛ったままだ。


「ガキが、お前はまだリルの力を使いこなせていないようだな」


 私の力が未熟ゆえに全てを解けなかったと思ったようだ。まあ調停者のスキルは力の流れが強すぎて使うのを今でもためらっているんだけど。


「ありがとうアキ、さあジーノウは開放するよ」


 オルハーンがジーノウの首から剣を離す。うっすらと血がにじんでいた。


「ジーノウ!!」


 私はジーノウのもとに駆け寄る。


「すまない、事前に察知できていれば…」


「それよりも私たち催眠術みたいなものをかけられてたんだ」


「ああ、アキがオルハーンに楯突いた時ふっと気づいたんだ」


 私の真正面から向けた敵意が術への抵抗につながったのかな。多分ジーノウもそこでオルハーンに敵意や疑問を抱き逃れることができたのだろう。


「さて、感動の再会をしてるところ申し訳ないけど君達はここで死ぬ運命さ」


 待ってました、その言葉。

 王道の展開すぎて笑えてくる。でも死ぬのは二次元のキャラじゃない、私たちだ。


「死んでもついていく気は無かったし、もとから戦うつもりだよ」


「そう言うだろうと思ったよ。エルネスト、どう?いけそう?」


「力は全て出し切れていないがこいつらを殺すには十分すぎるくらいだ」


 そういってオルハーンは剣を、ミノタウロスは私の身長はあるかという太い大剣を取り出す。

 私はおもむろに聞く。


「なんでジーノウを解放したの…?」


 最悪ジーノウを解放せずに殺して、私を二人掛かりで倒しに来ることも考えられたからだ。その場合は本当に死ぬ気で助けるつもりだったけど。

 オルハーンは真面目な表情になって答える。


「僕はこれでも騎士さ、他人への約束は基本的に守るのが信条だ」


 散々私たちのこと騙しといてよく言うなこの男。


「それに、ジーノウには個人的な期待をしているんだ、後輩の騎士としても1人の人間としても。ジーノウ、一度君の本気を見てみたいんだよ僕は」


 これも絶対的な強さと言うアドバンテージがあるから出てくる言葉だろう。


「なら倒すだけだな」


「うん」


 オルハーンが剣を鞘に仕舞う。先刻みた抜刀術を繰り出すつもりなんだろう。


「聞きたいことはそれだけかい?」


「倒してから聞くよ」


 ジーノウはオルハーンの方に向き、私はやつ(ミノタウロス)の方へ向いて剣を構える。


「貴様らの愚かな判断が自らを破滅に導くのだ」


 そうして戦いの火蓋は切って落とされた。














やっと書きたいところまで進みました。次回は頭の中で練りに練り上げた戦闘シーンメインでお送りします。


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