残念、私閉じ込められました
二話目です。
異世界転生を果たした翌日。目が覚めると、例の家族の姿が見えず、周りもほとんど真っ暗で何も見えなかった。
「これからどうすればいいんだろ…」
寂しさと不安が襲ってくる。けれど、ほんの少しこの世界に興味が湧いてきたのも確かだった。
おぼろげだが、寝ている間も何度か揺れが襲った気がする。というかあの揺れからしてこの地震大災害レベルでやばいよね。一番激しい時は元の世界で震度7くらいになりそうな揺れだったし…。
火が燃え広がらないように消したのは間違いじゃなかったけど、いざ消すと暗すぎて何も見えない。そう、繰り返すようだけど何も見えない。朝なのに入口から差す光もない……?待てよ、昨日は入口からわずかな光が差していたはずだよね。何で何も見えないの?
手探りで入口があっただろう場所へと向かう。ほとんど何も見えないから見当をつけているだけだけど。
そういえば寝ているうちに近くで何か轟音が聞こえたような気もする。これってもしかして…。
「あっ…完全に塞がってるじゃん…」
ほんの少しだけ明かりが漏れている場所まで向かうと、何やら岩のようなものが崩れていてとても外に出れそうではなかった。あの家族はどうしたんだろう。逃げるとしたら私のことは置いていく感じじゃなかったと思うんだけど。嗚呼入口よ、我を見捨てたか。なんて運が悪いんでしょう私。
気づいていなかったが崩れた岩のような物には何やら記号のようなものが刻まれていた。興味はそそるけど読めないしね…。ここは何かの遺跡だったのかな?それとも施設?
と言うかこの状況完全に詰んでない?昨日は一瞬で死ぬやつだったからいいけど今回のは生き地獄じゃん。ほんとに神様はどこまでも私を見放していらっしゃる。ここで私は飢え死にするのかな。何日も何日も飲まず食わずで…ゾンビになっていく…。ああ、考えただけでオソロシイ!
でもあんな大きな岩私にはどかせないしね。
「私がこの程度の仕打ちで屈すると思っているのか!」
粋がって叫んでみるが木霊さえ返ってこない。正直不安しかない。そもそも木霊返ってこないってことはまだ奥に空間があるってことかな?ここでのたれ死ぬよりはマシだし行ってみようかしら。怖いけど。
と言うかさ、夜目に慣れてるとはいえやっぱ視界が真っ暗なのは厳しいよね。今だって目の前のものが黒い影でうっすら分かるだけでほとんど何も見えないもん。どうにかして見る方法はないのかな。
突然頭の中に鮮明な文字が浮かぶ
スキル:梟眼ヲ獲得
え、待って。今スキルって言ったよね?さすが異世界。スキルなんてすっごい面白そうじゃん。梟眼なんてマニアックそうなスキルだと思うしきっと他にもスキルがあるのだろう。この先どんなスキルを身につけられるか楽しみだな。
視界はさっきよりは全然よくなった。でも梟の目と言えどわずかに光が無きゃ見えないもんじゃないのかな。どんな動物でも光がないとものは見えないはずだし……?少し色彩が淀んでる気がするのは鳥の目の特性なのかな。
さてさて気を取り直して奥に進みましょう。何だか階段?のようなものが見える。下に下に続いてるみたい。ってことはここはダンジョン的なアレですか?攻略したら出れるんだろうね?と、早くも、ろくに知りもしない世界に興奮気味の私。さっきの憂鬱はどこへ行ったのか…。
まずは階段を降りてみる。階段の長さから察するに1階層だけで相当な広さがありそうだ。
そう言えば私武器持ってないけど大丈夫なのかな。なんとかなるよじゃ済まされなさそうだけど…?
階段が終わり、延々と続きそうな石畳の廊下に出る。いかにもと言った怪しい雰囲気を出していて、とてもじゃないけど危険そう。
そろそろと歩みを進めていく。あんまり異世界もののラノベとか読んだことない私でも魔物が出てきそうだということくらい分かる。
「私は美味しくありません私は美味しくありません私は…」
普段なら見られて結構私には魅力があるなどとほざく私だが、今度ばかりはそうもいかない。折角来た異世界だしもっと楽しんでから死にたいと思ったのだ。
そうして歩いているうちにガサガサと音が聞こえてきた。きもいやつだけはやめてください。
現れたのは1mくらいあろうかという巨大アリだった。
「きゃあああああっっ!!!」
ヤダヤダ虫はやめてください!本当に無理なんです!Gじゃないだけまだマシだけど……。
私は全速力で走り出す。アリは私を獲物だと認識したのか、触覚をヒクヒクさせて追ってくる。
夢中で走ってるうちに後ろから気配が消えた。100m走14秒台の脚をなめんなよ!!ここぞとばかりに近くの崩落した岩陰に身を潜める。おそらくアリは私を諦めていないだろうし、今のうちに武器を探そう。あの大きさなら何とか倒せそうだし。まあ途中で気絶しなければの話なんだけど。
ふと岩の下に目をやると崩れた岩の下敷きになった魔物の骨があった。地震より前に死んだらしく綺麗に白骨化している。まあこれは使うしかないよね。慎重にその魔物の骨の一本を手に取ってみる。どこの骨だろうか、平たく、まるで剣のようだ。そして親切なことに軽い。これはいける。武器を持ったことにより謎の自信がどんどん湧いてくる。
アリのいた方を慎重に覗くと、仲間を連れてきたのか3匹に増えている。雑魚が何匹増えようが同じだわ!さっきまでのビビリようは何処へやら、闘争心と自信に満ち溢れる私。
「コトン」
あっ、しまった。不安定な岩の上で脚を滑らせそうになり、足元の岩が音を立ててしまう。3匹が一斉にこっちを向く。アリ特有の牙のようなものが黒く光っている。
こっちに来るっていうのなら迎え撃つだけ。いつでも来なさいよ。剣道もフェンシングもやったことないからカッコ悪い戦い方しそうだけど……。
アリ達がゆっくりと近づいてくる。物音に気付いただけで私がいることには気付いていないのだろう。
さあ3匹の虫達との決戦の時!私の力思い知らせてやる!
主人公はあっさりした性格なので、みんなみたいにいつまでも落ち込んでません!
切り替えは大事ですよね。