戦わずして得るもの
勉強の片手間に書きました。気持ち誤字多めだと思います。
いよいよ最後の騎士だと思うとなんだかゾクゾクしてくる。恐らく今まで出会った中で最強だということは言われなくてもわかる。纏っている覇気が違うのだ。
「どうするオルハン?」
「…」
「どうしたの?」
少しの沈黙を挟み死霊騎士が驚愕のことを口にする。
「私は君たちには敵わない。ここを通り真の敵とまみえるがいい」
あれ?
てことは…
「「え!!??」」
ジーノウと私が素っ頓狂な声を上げる。
戦う気満々だったのに相手は戦う前から負けを認めたのだ。どういうことなんだろうか。
「てことだ。2人とも先に行こう」
オルハンは元から戦う気がなかったのだろうか。剣を収めている。
「いやでもな、嘘をついた可能性だって…」
「そうだよすぐに信用するのは…」
2人で口を揃えて言う。
「君たちは早く出たいのではなかったか?なのに近道を作ってくれる敵に対して自分たちが満足出来ないから倒させてくれとでも?」
「で、でも…」
「そもそも君たちは俺がいなければこいつを倒せない。ならば俺の指示のとおりに動けばいいだけだろう!」
オルハンが半ば強引ながらも正論を言う。確かにできる限り戦いは避けなければ体力も持たないし…。
だからといって拍子抜けすぎて罠かなにかがあるように感じてしまう。
そういえば一人称俺だっけこの人。
「だがな…」
「ジーノウ、命の恩人とやるのか?君では僕には到底及ばないさ」
「オルハン、お前何か隠してないか?」
ジーノウが疑問を口にする。私もずっと思っていたことだった。でもなんで口に出さなかったんだろう。
オルハンの方を見ると少し驚いたような表情をしていた。
「言っただろ?僕はただの冒険者さ。この前話したこと以上のことは何もないさ」
あ、一人称戻った。
「さあ御一行、いつ奴の力で私が暴れ出すかもわからない。早く進んだ方がよろしいのでは?」
敵に催促される。不思議な気分だ。
死霊騎士は昔こそは討伐に赴いた者達だったが今は奴の手下ということなのだろうか。
「この人の言う通りだ、早く行こう。こうしている間にも封印が解けてしまうかもしれない」
ジーノウも納得したようで抜いていた剣を収める。
そうして偶然にも正気を保っていた死霊騎士のおかげで私たちは戦いを避け階層の最奥部へ向かうのだった。
なんで封印のこと知ってるんだろう。
◇◇◇
どんなに押したり引いたりしてもその豪勢だが、装飾の剥げかかった扉は開かなかった。大きさは2メートルの観音開き。魔法でもかけられているのかな。
「うーん、開かないなあ」
「3人でタイミングを合わせてやろう」
「よしっ、せーの!」
扉はビクともしない。
「ダメかぁ…」
────遡ること30分。騎士の元を後にした私たちは最奥部へ辿り着いた。
最奥部のそこは雨が止んでいて不気味な静けさが広がっている。そういえばあの雨体力を消耗させる魔法がかかってたんだっけ。ちょっとの間に忘れていたな。もう誰も雨なんて気にしなくなった。
無機質な灰色の壁と床の階層の最奥部。ポッカリと壁に穴が空いていて暗闇の小道が続いていた。
「魔力の流れが強くなってる。この先だね…」
「休憩はしなくていいのかな?」
「アキが大丈夫なら問題ないだろう」
「私は大丈夫だよ。オルハンこそ1人でずっと中心で戦ってたけど?」
オルハンは騎士と戦う時は私たちの弱さをおぎなうようにいつも前線で戦ってくれていたのだ。消耗していてもおかしくは無い。
「僕の心配をしてくれるなんて…全然大丈夫さ」
その言葉に嘘がないことは彼の姿を見ればわかる。
汚れてはいるけど、傷一つ無く快活に笑っているその姿を。
オルハンは無限に体力があるのでは無いかと思うくらいにタフだった。
そうしていかにも怪しい小道に入り歩いていると怪しい小部屋にたどり着き、その先に例の扉があったのだ。
しかしこの扉、中々開かず、私たちは途方に暮れていた。
何度もトライして力で開けることが不可能と悟り私が切り出す。
「こうなったら魔法で吹き飛ばす?」
ジーノウは少し考えてからこう言った。
「待て、無理やり開けようとしてトラップでも作動したら厄介だ。ここは俺が何とかしよう」
あらジーノウさんったら頼もしい。熟年のおっさんじゃなければ惚れてたかもね。まあ嘘だけど。
まあ今までも十分無理やり押し引きしてたんだけど。
「ちょっとどいてろ」
私は扉の前から離れ、ジーノウが聞いたことの無い術を唱える。
「土術・解錠」
いやそれも魔法じゃんおっちゃんよ。
ジーノウが扉に手をかざすと……
ガシャ
音がして扉が光り始めた。ただ開いただけなのか、それともこの術を鍵になにかの魔法式が発動したのだろうか。
「開いた…のか?」
オルハンは見たことでもあるのか落ち着いて答える。
「たぶん開いたのでしょう。昔別のダンジョンで見た封印された門もこの術で開いたことがあったので」
経験豊富な彼の言うことだ、本当なのだろう。ちなみに彼は部屋のことを色々調べてもらっていた。
「みんな、入る準備はいい?」
「もちろん、俺たちでここから出るって約束しただろ」
「僕もやっと出られそうで嬉しいですよ」
覚悟を決め扉の方へと再び近づく。
扉は軽く押すと自然と開いた。
中はドーム状の空間が広がっている。
40mほど先に半透明の結界に守られ、手足を金属で止められ、磔の状態で壁に固定されている魔物がいた。
部屋の中には濃い魔力が漂い、邪悪な空気で満たされていた。今にも吐きそうなくらいに濃い。
磔にされた魔物がおもむろに口を開く。
「待っていたぞ、リル」
心の奥底から嫌悪と本能的な危険を知らせる何かが込み上げる。
やつがいた。
転生したらス〇イムだった件のアニメ2期が毎週の楽しみです。ついにヒナタとの直接対決が放送されましたね。結末を知っていながらもドキドキしながら見ていました。




