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〜異世界転生して100年後の世界を生きてみる〜  作者: 伊政
ダンジョン攻略編
15/29

雨に打たれて

15話目です〜


 ジーノウと乗り移ったリルさんと冒険を続けること1週間近く。強い魔物を何体も倒したし、宝箱も散々漁った。まあ魔法石しか今だに出てこないんだけど。

 途中で魔人になりかけているようなやつとも戦った。今まで戦った魔物達に比べたら全然強かったね。

 知能のある魔物達は皆、リルさんの調停者を使ってその湧き上がる殺戮衝動を鎮めることができるようになり、戦いも幾分か楽になった気がする。


 戦いは苦手だったけど何度も経験するうちにゲーム感覚で楽しめるようにもなってきた。それでも相手との命と命のやり取りだから敬意は忘れない。そこら辺日本人らしい考え方な気がするよね。ジーノウに至っては魔物なんて殺されて当然なんて考えてるし。魔物じゃなくて本当に良かった。


 話題が途切れていたけど、リルさんには私の中に眠ってるらしいスキル「旅人」を解析してもらっている。不老不死はもちろんのこと、スキルの入手率が他の人よりも高いのもおそらくこいつの仕業だと私とリルさんは睨んでいた。そして入手のタイミングで頭に文字が浮かばなかったことからおそらく祝福スキルだろうという目星もついた。

 ただ、精霊達が知る今までの転生者で不老不死という効果を持った者はなく、戦闘向きや、環境を変える祝福スキルなどを持った者がほとんどらしい。それに転生者自体がこの世界でまだ私を含めて4人しか確認されていないというから色々研究のしがいがあるみたい。


 私たちは今、探知で確認できる最後の階の一つ上の階に来ている。つまり決戦まで時間はほとんど残されていないということだ。

 この階は雨が降っていた。それも台風レベルの豪雨だ。風もそこそこあってキツイ。


「最後の階って感じがするよな」


「抜けるのに時間がかかりそうだね」


 これまでも雨の降っている階層は幾つかあり、そのたびに痛い目を見てきた私とジーノウは、熱帯雨林のような階層で植物の葉でカッパのような物を作った。それを仕方なく着る。

 リルさんが話しかけてきた。


(この階には死霊が出ます。迂闊に立ち止まると襲われるので注意してください)


(今までそんなの出てこなかったよね。どうしてこの階だけ?)


(エルネストが殺した10人の騎士の魂が抜け出して漂っているみたいですね)


(てことは強いんだね?)


(ええ、3人以上で来られたらまず勝ち目はないと思ってください。ここにミノタウロスが封印された後に入り込んだ冒険者達は必ずここで命を落としています)


 それってガチでやばいやつじゃん。そのことを急いでジーノウに伝える。


「そうか、俺の先代達が今もここで…」


 そう言ってジーノウはなぜかしかめ面になって黙ってしまった。

 自分の命の心配を先にしなさいよ。うかうかしてると殺されるって言ってるんだよ私は。本当にわからん男だ…。


(リルさん、そいつら実体がないんでしょ?どうやって倒すの?)


(魔法と封印術だと思います。私は相手したことがないので詳しくはわかりませんが…)


 とにかく魔法が効くらしいということだけでも知れてよかった。もちろん私は魔法の修行も怠っていない。おかげで雷術の威力アップはもちろん、炎術も少しだけど使えるようになったし…って言ってもこの雨じゃ役に立たなそうだけど。


 リルさんと死霊対策の案を練りながら豪雨の中を進んでいく。探知では弱い魔物が少し群れているくらいで目立った魔物はいない場所のようだった。この雨の中を生き抜ける魔物がすごいのかもしれないけど。

 そしてもう一つ、探知に死霊が引っかかったのだがすぐに気配を消してしまったのだ。おそらく逆探知なるものをされているのだろう。そういうわけで危険と背中合わせの状況下で私たちは進んでいく。

 気候変動と寒熱耐性のある私と違ってジーノウはそう言った耐性のスキルに乏しい。そのためかどこの階へ行ってもすぐに疲れてしまうのだ。


「あっちに岩陰みたいなのがあるから、そこに行って少し休ませてくれないか?」


「そうだね、少し休もうか」


 私もなぜか疲れを感じ始めたので喜んで頷いた。

 探知で大きな岩のようなものが引っかかった場所には魔物でも死霊でもなくちゃんと岩があった。ただ気になるのは、その岩が直方体をしていたことだ。

 もちろん疲れている私たちはそんなことを気にもせず、その岩にもたれて休む。雨宿りできる場所がないから濡れるがままだ。

 流石に有り合わせの葉で作ったカッパにこの豪雨が耐えられるわけもなく、服はビショビショになっていた。

 ちなみに私はまだYシャツにスカートという転生してきた時そのままの服装だ。ちゃんと洗ってるから心配しないでね。


 少しだが休憩して立とうと思った時、体がいつもより重く感じた。雨で濡れているからとかそういうわけじゃない。とにかく体が重くてだるいのだ。


「ジーノウ、もう少し休まない?」


「俺もちょうどそう言おうと思っていたところだ。とにかくだるくてかなわねえ…」


 そうして雨に打たれるがまま私たちはその場に座り込んだ。頭に響くリルさんの声など全く無視して。


 どれだけ経っただろうか。相変わらず雨は強いままだし、体の疲れは抜けない。


「なあアキ、この疲れ変だと思わないか…?」


 ジーノウが喋るのもだるいと言わんばかりの気だるげな口調で言う。


「言われてみればそうかも…」


 疲れで頭がうまく回っていなかったから気づかなかったけど、スキル「旅人」の体力無限の効果があって疲れること自体おかしいのだ。なぜそのことに最初から気づかなかったのか…今更悔やんでもしょうがない。


「この疲れは雨のせいだよね…?」


 ジーノウの代わりにリルさんが返事をする。


(そうだと言ってるじゃないですか、さっきから何度も話しかけていたんですよ!)


(ごめん、ちょっと頭痛がするくらいにしか感じなかったんだよ…)


(いつ襲われるかもわからないのに余裕綽々ですね…)


 その時だった。久しぶりに聞く金属と金属のぶつかり合う音がする。

 見るとジーノウが剣で打ち合っている。相手は雨のせいでよく見えないけど黒い服をまとっているのがわかる。


「助けてくれアキ、腕が動かねえ!」


 ジーノウが叫ぶ。その間にも黒い服をまとった者の攻撃は続く。探知に映らないのでほぼほぼ死霊と見て間違いないだろう。この雨に弱ってるところを叩きにきたってわけね。

 立ち上がるのも剣を抜くのもだるい。ここは魔法でいくしかない。ああだるい。


「喰らえ天の怒り、雷術・神立!!」


 私が放った電撃は黒服の奴に直撃し、わずかに隙が生まれた。そしてジーノウがすかさず反撃に出る。このだるい体でよくあんなに動けるよね。

 頭の中に文字が浮かぶ。


 スキル、氷の盾ガ魔力操作ニ統合。弱魔法攻撃耐性ヲ獲得



 えっ、私そんなことした覚えないんだけど!なんでよ!


(すみません…検証の結果このスキルがあればこの雨の効果を消せることがわかったんです)


(そう言うことならいいけどまず言ってよね)


 なるほど、確かに体は元の状態に戻ったようだった。

 そして私がジーノウの援護に向かおうとした時、背後に気配を感じた。振り向くとそこには、剣を持ち黒いローブを身にまとった骸骨が立っていた。





 

雨って憂鬱になりますよね…僕はあの静かな雰囲気が好きですが…

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