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〜異世界転生して100年後の世界を生きてみる〜  作者: 伊政
ダンジョン攻略編
13/29

勇者エルネストの物語

13話目です!

 昔、エルネストというのちに勇者となる男がいた。彼は今から300年前の飢饉の時代に、パルティスに転生を果たした。

 転生による大雨の影響で作物がよく育つようになり、飢饉は終わる。そう、転生時のこの世界への反動は時として良い影響を与えることもあるのだ。


 彼は平民からは神のように崇められ、あっという間に有名になる。

 彼はもちろんパルティスの騎士になった。その類いまれなるスキルの力も相まって、短い年月で一気に最強の騎士と称される程まで登りつめた。小国だったパルティスが対外戦争で勝ち始めたのも彼の功績が大きいのだった。そのこともあり、彼はさらに有名になる。それこそ大陸で知らぬものなどいないくらいに。

 

 彼は“前の世界”で孤児だったこともあり、強烈に愛を求めた。そしてそれが勇者の堕落へとつながっていくのだ。

 その頃、精霊・リルは普通の精霊だった。際立って強いスキルを持つこともない、ただのおとなしい精霊だった。しかし時代の寵児であるエルネストと会ったことで彼女の運命は大きく変わることとなる。

 彼女はエルネストとともに旅をするようになった。エルネストは修行の旅という名目で一旦騎士団から抜け、その途中でリルと会ったのだ。

 彼女にとってエルネストとの旅の全てが新鮮だった。エルネストも彼女を心から信頼するようになる。


 エルネストは容姿も悪くなかったため、行く町々で歓迎され、大勢の女性から告白される。その中から彼が選んだのは、彼の母親によく似た女性だった。幼い頃に殺された母親の面影を心の奥でずっと求めていたのだろう。

 彼女の名前はクレア。賢く、優しく、美しいの三拍子揃った完璧な女性だった。もちろんリルは彼女に嫉妬する。

 それからは3人の旅になった。いろいろな場所をを旅し、彼の力で人助けをして回った。そしていつからか彼はさすらいの勇者と呼ばれるようになる。


 彼を慕う者がいれば、彼のその才を憎み嫉妬する者もいる。

 長旅も終盤に差し掛かり、私たちはパルティスに帰るために南の小国に立ち寄った。

 南の小国はパルティスとの戦争に負け領土を失ったこともあり、彼を嫌う者が特に多い国だった。ちょうどその国に来ていた時、彼が1人で出かける用事が出来、私とクレアは2人で宿で留守番をしていた。

 タイミング悪く、エルネストを嫌う者に彼がこの宿に泊まっていることがバレてしまう。それも本気で殺しに来るような過激な者たちにだ。

 その頃クレアは妊娠して動けなかったこともあり、真っ先に異変に気付いたリルがエルネストに助けを求めに行った。だがそこでリルはある考えにたどり着いてしまう。クレアがいなくなれば彼の愛は自分へと向けられるのではないかと。そしてわざと遠回りして彼を呼びにいく。そうすればクレアが死んだ後に駆けつけ、仕方がなかったことにできると思ったからだ。

 2人は急いで宿に戻る。そしてクレアが死んだことを確認し、全てはリルの手筈通りに行くはずだった。

 だが愚かな精霊は知らなかった。彼の愛の重さと、どこまでも一途な性格に。そもそもリルのことなど愛するわけがないのだ。


 愛情深い者が一度愛を失うと人格が変わる。彼はこの世の全てを憎み、彼女を生き返らせることだけを考え続けた。彼はパルティスに戻り、南の小国と戦争をするよう王に進言した。ちょうど小競り合いにうんざりしていた王はすぐに戦争を始めることを決意する。

 そして彼による“蹂躙”が始まったのだ。ひたすらに殺し尽くした。1週間でその国の国民の2割が死んだという恐ろしい報告が上がる。

 南の小国が降伏してパルティスの属国になった1週間後、彼はまた戦争を始めると言い出す。そこで他の者たちも薄々異変に気付き始める。エルネストは元々血気盛んなところはあったが、好んで人を殺すような男ではなかったからだ。

 当然理由もなく戦争を始めるわけにもいかない。しかしエルネストは彼を熱狂的に慕う騎士たちを連れて東の小さな山国を三日で滅ぼしてしまう。彼の暴走は止まらない。北に位置するパルティスと同じ規模を誇る大国の砦を次々と落としていき、南半分の領土をうばったのだ。

 そうしてパルティス領はどんどん膨れ上がり、のちの内乱にも繋がっていくことになる。


 当然パルティスとしても友好国まで滅ぼされてはたまらないと思い、彼の討伐を試みた。その時すでに大陸一の大国となったパルティスの最強騎士団を以ってしても、エルネストただ1人の討伐に多大な被害を出した。3日に渡りパルティスの北の平原で戦いは行われた。

 結果は相打ち。瀕死の重傷を負ったエルネストが東に去っていくのを追う事のできる者はいなかった。ここで深く追わなかった事が後に仇をなすことになる。


 大陸の東には広大な砂漠を挟んで魔人たちの国が広がっている。かつて魔王と呼ばれた魔人が治めるというその国に入り込みいきて帰ったものはいない。そもそも砂漠を抜ける前に飢え死にするか魔物に食われて死ぬので、誰も砂漠の果ての魔人の国を見た事がなかったのだ。

 

 結論から言うとエルネストは砂漠を越え、魔人の国にたどり着いた。精霊リルによる導きによって。だがリルは邪魔に思われ途中で捨てられる。ここで愚かな精霊リルは完全に彼が変わってしまったことを知り、彼を導いたことを後悔する。

 彼はパルティスを滅ぼす力と死者蘇生の力を望んだ。仮に魔王と呼ばれる存在であっても、古代の秘術と言われる死者蘇生の魔法は知らなかった。そして魔王は彼に力を与える。たとえ勇者と呼ばれる存在であっても制御できないほどの強大な力を。


 彼に与えられた力は彼から理性と憎しみ以外の感情を消し去った。愛するものを生き返らせると言う彼に残された唯一の望みも彼から消えた。その代わりに誰にも止められないほどの強い力を手に入れたのだ。

 一方パルティスに帰ったリルはエルネストが生きて帰ってくることを王に伝える。リルは旅で得た幾多のスキルを所持していて尚且つエルネストを知る重要な戦力として討伐隊の第一人者に任命される。

 そして彼女は偶然にも大精霊へと覚醒する。彼との平和を望む彼女に与えられた祝福スキルは「調停者」。全ての知恵ある者とのコミュニケーションを可能にし、相手の戦意を喪失させるというもの。

 

 いくら最強の勇者であっても彼女のスキルには敵わないと誰もが思っていた。

 そして5年ほどたったある日、彼は帰ってきたのだ。異形の化け物へと姿を変えて。





リルさん実は嫉妬深い一面もあったんですね〜

過去の物語はもう少し続きますよ〜

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