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はじまり
長らくおまたせしました。
ようやく2人のお話です。
「俺を、助けてくれたのか?」
勇平は声を震わせながら言った。
「うん。あなたを、助けた」
彼女は勇平の目を真っ直ぐに見ていた。
「ありがとう、、咲森」
勇平は彼女の名を初めて声に出した。
彼女は悲しげな瞳で、ゆっくりと言った。
「本当は、あなただけじゃなく、みんなを
助けたかった。でも、…間に合わなかった」
「わかってる」
勇平は言った。心から。
ぱらららっ
工事現場など作業音?
違う! これは、
銃声! 狙われているっ
「頭を下げて、煉瓦道のかげに飛んで」
彼女は勇平の目の前に駆けていた。
静かに素早く、彼女の声が耳に響く。
勇平と彼女は、地下鉄階段まで、
頭を下げて移動した。
2人の物語が、今始まる。
卑屈はだめばい