9/103
まったく別の、呪詛
護摩壇を組む。いつもの壇とは違うので、勝手が違う。
火を燃やし、薬草を投げ入れた。
形代を並べる。
呪言を唱える。これも初めて見る呪文だが、いただいた写本を読み込み、暗記した。
これから、呪詛を行うのだ。
尊敬する座主様から、直接お言葉を賜った。
命じられたことは、恐ろしく畏れ多いことではあったけれど、それが座主様、引いては我が一族の繁栄となって、報われる。
我とて、この年になるまで、自分の道も決められなかった。これで我の行く末も、見えてくるだろう。
呪詛に必要な、髪の毛や息がかかった人形は、座主様が用意してくださった。本来なら、とても手に入れられないはずなのに。
きっと、この企てには、我などが考えるより、ずっと多くの協力者がいるのだろう。
我が用意したものといえば、せいぜい護摩壇と薬草だ。大抵は、寺の中にある。少し特殊な薬草も必要だったけれど、奥の山に入れば、簡単に見つけられた。
幾晩でも。何日でも。
必ずや、成功させてみせる。
――今上が、身罷られるまで。