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まったく別の、プロローグ
「……それでは5年後にっ……」
蠟燭のほの暗い灯りのなか、男は、異様に瞳をぎらぎらさせて呟いた。
相手に確認しているようで、その実、目にも耳にもなにも入っていない。
額にはじっとりと汗が浮いている。
「さて、そのように焦らずとも。5年の間見極めてから考える、と言ったまで」
対するもう一人の男は、そんな相手を見て、楽しげだった。
「いいえ! そのお言葉だけで、我が主がどれほど救われることか……っ。これまでの我らの衷心も報われる思いでございます」
「うむ、儂もそのように考えたのでな」
徹頭徹尾、実のない上滑りの言葉しか使っていない。
そのことに、男は気づかなかった。
――そんな男を、相手は満足そうに見つめていた。