96話 火龍討伐 4
「HQより偵察班、了解した。
スネーク5~8航空騎兵をヘリボーンせよ」
「スネーク5、了解」
「スネーク6、了解」
「スネーク7、了解」
「スネーク8、了解」
「行け行け行け!!降下降下!!」
24人のエルフの航空騎兵が、風魔法を使いロープも無しにバイパーから飛び降りる。
地面に着地すると即時に戦闘態勢を取り、火龍アラドームを探す。
「10時の方角、200mに目標発見!」
1人のエルフの航空騎兵が、いまだに土煙が立ち込める中で目標を発見する。
「息吹き(ブレス)に注意、散開して接近せよ」
この場を預かる指揮官のエルフがハンドレスの無線機で指示を出して、火龍アラドームに接近する。
遠目には死んだように見えるが、相手は500年近い時を生きた若年龍、知恵は人並みだとも考えられている。
今の状態が擬態で無い保証は無いのだ。
アラドームまで50mまで近付く、周囲の地面は砲撃により凸凹が激しく歩くのも容易ではない。
砲撃の跡の窪地にそれぞれ身を潜めると、1人の航空騎兵が火龍アラドームに匍匐前進で接近する。
航空騎兵はアラドームに到達すると、胸に手を当てて心音を確認する。
そして腰の銃剣を引き抜くと火龍アラドームに突き立てる。
何の反応も無い。
航空騎兵が後続に対して合図を送る。
多くの人々に恐れられた火龍アラドームの最後であった。
後続のヘリが多くの人員と物資を運び込んだ。
多くは冒険者ギルドの関係者で、どうやってアラドームを鉱山都市ドリンドルに移送するかを話し合う為に来ていた。
一部はゲシュタルト王国の騎士団の関係者も来ていて、自分が居れば活躍出来たのになど無責任な事を言っていた。
酷いのになると、剣を抜きポーズを決めていた。
アシュラ王国の関係者も来ていたが、自分達で敵討ちができなかった為か複雑な表情をしていた。
取り敢えず討伐の証である魔石を抜き出して、残りを魔法で氷漬けにしてバイパー数機がかりで空輸することになった。
龍の素材は血の1滴さえも貴重なのである。
火龍アラドームの魔石は1m以上有る真っ赤な見事な物だった。
かろうじて、バイパーの人員貨物室に納まったが、過積載で飛行するのにも不安定な状態であった。
先にドリンドルの街に送り出すことになったのだが、ここで問題が起こった。
ゲシュタルト王国の騎士団の関係者を名乗る一団が、魔石の護送役を買って出たのだ。
しかも、他の護衛は要らないということを強調してだ。
彼らの魂胆は見え透いている。
どうせ、魔石と共に鉱山都市ドリンドルに凱旋して、火龍アラドームの討伐の成果を横取りしようというのだろう。
そんな事はさせる訳にはいかなかったので丁重にお断りをしたが、彼らは諦めが悪く粘って来た。
流石に王国の騎士団がここまで見苦しいのはおかしいと思い、ドリンドルに居る団員に調べさせたところ、彼らは王国騎士団ではなくとある貴族の子飼いの軍団であることが判明した。
そんな連中を、関係者以外立ち入りを禁止している解体現場に居させることはできなかったのでそうそうにコダの森に退散願ったが、最後まで諦めが悪く帰りの足まで要求されたので、銃口を突き付けて退散させた。
アシュラ王国の関係者はその様子を見て呆れてしまっていた。
しかし、彼らの要求もまた、マコト達を呆れさせることになる。
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次回更新は6月9日午前7時を予定しています。




