89話 一人旅 4
「治療していただいて感謝しています。が、ここは鉱山都市ドリンドルからどのくらいの距離ですか?」
少女と老婆は顔を見合わせると、少女が、
「ここは、アイノの村。ドリンドルからは徒歩で3日ぐらいです。
貴方はドリンドルの街からやって来たのですか?」
徒歩で3日!そんな距離を流されて来たのか。
火傷といい、この異世界に来てから一番死にかけたな。
「正確にはコダの森の川からです。
コダの森に火龍が現れました。
貴女達も城壁のある街に避難した方が良い。
お金が必要なら、私がなんとかします」
そういうと、マコトはアイテムボックスから金貨の詰まった革袋を取り出した。
それを見て、少女は言った。
「お気持ちは嬉しいのですが、火龍の事は冒険者ギルドの方が各地の村や街を回られて知っています。しかし、ここが私の家なのです。
他所に行き場がある人は皆さん避難されました。
このアイノの村に残っているのは他に行く宛ての無い人達なのです。」
マコトは身体が動かないことに心から後悔した。
自分が葬送曲を指揮さえすることが出来れば、火龍もなんとかなるかもしれないのに!!
「申し遅れました。私は軍団、葬送曲の司令官でマコトと言います。貴女方は?」
「私はアイシャと言います。お婆ちゃんはマラと言います。葬送曲ってあの葬送曲ですか?」
「お嬢さんが、どんな風に聞いているかは知らないけれど、多分その葬送曲ですよ」
マコトは応えた。
「アイシャさん、ドリンドルまで伝言を伝えてくれる人は居ませんかね?」
すると、アイシャは悲しそうに、
「今は無理だと思います。
アイノの村に残った若い人は私ぐらいで、あとは、お年寄りの方ばかりですし、馬等も避難に使われて1頭も残って居ません」
アイシャは話題を変えるように明るく振る舞うと、
「マコトさんが、葬送曲の方なら一緒に拾った品々もマコトさんの物ですね!」
と言い、隣の部屋に行くと、19式自動小銃と18式自動拳銃を持って来た。
身体の火傷の状態から絶望的だと考えていたので、これは嬉しい誤算だ。
というのも、身体が上手く動かせない影響で、スキル武器創造が上手くいかないのだった。
スキル、アイテムボックスやマップ作成は頭で思い浮かべるだけで、なんとかなるが、武器創造は他人には不可視のディスプレイのようなものにタッチして選択する必要がある為だった。
数えて見ると、7・62mm弾の弾倉が5個に、9mm弾の弾倉が3個とほとんど揃っているようだった。
銃本体にも目立った異常は無いようだった。
これで、身体さえ動かせるようになれば、最低限の自衛行動は取れるようになるだろう。
考えている間にアイシャはもう一度隣の部屋に行っていたらしく、無線機と何やら赤い鱗状の物を持って来ていた。
鑑定すると、火龍の鱗と出るではないか!?
どうやら、手榴弾の一撃は想定以上のダメージを火龍に与えていたらしい。
怪我を癒す為にしばらく大人しくしててくれれば良いが。
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次回更新は5月30日午前7時を予定しています。




