87話 一人旅 2
王都周辺の盗賊団討伐依頼が終わってマコト達はホームベースのある鉱山都市ドリンドルの街に戻って来ていた。
葬送曲から多額の税金を取ろうとしていた役人は、ドリンドルに戻って来たモーラスの調べで、多額の不透明な税金を徴収して横領していた事が発覚して御用となった。
葬送曲の開拓した土地も完全に無税とはならなかったが、自分達で切り開いた分だけ、安い税金で済むことになった。
大きな騒乱も無くなり、普通に魔物討伐や採集依頼をこなす日々が続いた。
マコトも、護衛を付けることも無く1人で依頼を受けたりする機会が多くなっていた。
ある日、オークの討伐依頼を受けてマコトは1人、コダの森に入っていた。
武装は7・62mm19式自動小銃に9mm18式自動拳銃、御守りに18式手榴弾を2個装備していた。
コダの森の中層域ならば、群れにでも出会わなければ十分な装備であるし、マコトには、スキルマップ作成と鑑定の合わせ技のチートもある。
決して危険な依頼では、無かった。
しかし、今日は中々魔物と遭遇することが無かった。
いつもなら、掃いて捨てるほど居るゴブリンもマップの端にチラリと映るばかりだ。
マコトは、嫌な予感がしつつ、森の深域に足を進めて行った。
中層から深層に至る境界線辺りで、マコトはいきなり、スキルマップ作成に巨大な反応が出たのを確認した。
恐らく、気配遮断系統のスキルで姿を隠して居たのだろうか?
その巨大な敵性を示す赤いマーカーは、マコトが未だに遭遇したことの無い種族らしく、詳細は分からなかった。
いくら深層に近いとはいっても、まだ冒険者が頻繁に出入りする場所にこんな反応を示す化け物が居るということを冒険者ギルドに報告しなければ、ならない。
マコトは、赤いマーカーの示す化け物の居る方角に慎重に進んで行った。
一緒に別の依頼で、コダの森に入った団員から無線が入って音で気付かれるのを防止する為に無線機の電源を切った。
マコトは、赤いマーカーまで200m位の位置で木に登り、片眼の望遠鏡でその方角を目視した。
すると、そこには、オークの群れを捕食する、災害級とも言われるSSクラスの魔物、火龍が居た。
マコトは、思わず望遠鏡を落としそうになったが、なんとか踏ん張り、無線機の電源を入れて、ホームベースで無線当直をしている無線周波数を何度も失敗しながら、合わせて無線当直を呼び出した。
「HQより無線当直・・・・」
声は自然と小声になった。
「こちら無線当直です。聞き取りにくいので大きな声でお願いします。どうぞ」
「こちらHQだ!!1度しか、言えないから良く聞け!コード赤!コダの森の中層に火龍出現。全部隊に戦闘態勢を取らせて、冒険者ギルドにも伝令を飛ばせ!」
「・・・・・!!コード赤了解!戦闘態勢を取り、冒険者ギルドに伝令を走らせます!・・・・司令は?」
「火龍から200mの位置。生きて帰れるかは分からん、事後の指示はアリシア副司令の指示に従うこと」
「司令~!?」
「泣くな!こっちが泣きたいぐらいだ、以上」
火龍はどうした?かと見るとオークの群れは喰らい尽くしたらしく、新たな獲物を求めてキョロキョロとしている状態だった。
「頼むから、こっちに気付いてくれるなよ・・・・」
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次回更新は5月26日午前7時を予定しています。




