43話 殺人鬼4 ドリンドルにて21
マコトは、男を押し倒すと、すぐに顔を覆っていた覆面を剥いだ。
すると、現れたのは死人の顔だった。
『不死鬼!?』
周囲を取り囲んだ、エルフやドワーフ達から叫び声があがる。
マコトは咬まれまいと、飛び起きると距離を取った。
「頭だ!頭を撃て!!」
タンタタタタン、パン
取り囲んだ状態から、流れ弾を避ける為に半円状に陣形を変えた葬送曲の団員達は不死鬼の頭部に対して集中射撃を実施した。
不死鬼はしばらくのぞけるように立っていたが、そのまま仰向けに倒れた。
「射撃中止!射撃中止!!」
マコトが叫ぶと射撃が止んだ。
周囲の民家から何事かと住民達が顔を出したり、外に出て来ようとしたが、
「不死鬼だ!!出て来るな!!」
とマコトが叫ぶと、一斉に家に閉じ籠った。
ジリジリと距離を詰めて行くが、不死鬼はピクリともしない。
一番早く近付いた団員のドワーフが胴体を蹴り飛ばしたが、やはり動かなかった。しかし、それと同時にそのドワーフは2つの事に気付いた。
「司令、この不死鬼エルフじゃ。後、わき腹に短剣が突き刺さっとる。」
不死鬼が取り落としたショートソードを調べていたエルフが、マコトのところに来てショートソードを差し出した。
「司令、柄の刻印を・・・。」
それは、アレフガルド王国を示すユニコーンの刻印だった。
「確か、殺人鬼の最後の犠牲者はCランク冒険者だったな。」
マコトは、仮説を立てた。恐らくこの殺人鬼騒動は鉱山都市ドリンドルの戦力を他所に向けさせない為のアレフガルド王国によるもの。
実行犯のエルフは冒険者を襲った際に反撃を喰らい致命傷を負い、死亡したが、任務を達成せんと、未練が強く残った為、不死鬼として、復活して街をさ迷い歩いていたのだろう。と。
笛の音が響き渡り、衛兵隊が近付いて来るのが、分かった。マコト達は現場周辺を固めて、現場保存に務めた。
駆け付けた衛兵隊の中には衛兵司令のゴードンも居た。
「マコト殿これは一体?」
現場周辺を固める葬送曲の団員達を見渡して、問うて来た。
「恐らく、殺人鬼と思われます者を仕留めました。不死鬼でしたが。」
「不死鬼?」
マコトは先ほどの仮説を語り、証拠のショートソードを差し出した。
「ううむ、まさかアレフガルド王国の密偵が入り込み殺人を犯していたとは、なんたる不覚。マコト殿申し訳ない。不死鬼の浄化等の後処理は衛兵隊で請け負おう。」
「分かりました。自分は冒険者ギルドのギルドマスターに報告がありますので、失礼します。」
面倒な後始末は衛兵隊がしてくれるということで、マコトは部隊を拠点に戻して冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは24時間開いている為に明かりが煌々と点いていた。
受付嬢に、
「ギルドマスターに緊急の用件だ。」
と告げると、受付嬢は慌てて席を立った。しばらくしてギルドマスターのモーラスが自ら姿を現した。
「こんな時間にやって来るってことは殺人鬼がらみかい?」
マコトは、衛兵司令にも先ほど語った内容をもう一度ギルマスに話した。
すると、ギルマスは両手と膝を床につき、嘆き出した。
「城塞都市ミルドの件がアレフガルド王国の仕業の可能性が高い上にウチの殺人鬼もアレフガルド王国がらみ、兄上に何て報告すればいいんだ。」
しばらくうつ向いていたかと思うと、突然立ち上がった。
「葬送曲の司令官マコト殿申し訳ないが、緊急依頼だ。ゲシュタルト王国王都ゲイボルグまでの護衛を依頼したい。その後、場合によってはアレフガルド王国との戦争にも加わって貰う可能性がある。」
「護衛までは可能ですが、アレフガルド王国との交戦となると団員の意思統一が必要です。何せ団員のほとんどが元アレフガルド王国民ですから。」
「分かった。しかし、朝までに返事が欲しい。ゲイボルグへの出発は昼頃にしたい。」
「分かりました。」
「報酬の額のその時に決めよう。」
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次回更新は3月10日午前7時を予定しています。




