355話 氾濫鎮圧 6
今週も宜しくお願いします。
ジュるり
蟲龍の比較的表殻の柔らかそうな部分から無理やり這い出てきたのはまるで蚯蚓を白くし、肥大化させ、大きな口を与えたような表皮のツルリとして見るものは嫌悪感を抱かせる為に産まれたようなおぞましい生き物だった。
「何なんだ、アレは?」
「まるで寄生虫のようですがあれ程巨大なものは見たことがありません」
艦橋に居合わせた面々の知識には該当するものが無かった。
「あんなモノが体内に居てよく蟲龍は絶命しなかったものだ。嫌、普通では居られまい。だからか?世界樹の力に引寄せられてここまで来たのか」
「詮索は後回しで良いだろう。問題はあれをどうするかだ」
人々の視線は最高意思決定者であるマコトへと向けられた。
「アレが何にせよ、我が国と世界樹に害を為す恐れがあるのならば滅するのみ。間も無く補給物資を輸送してきた部隊に空中戦艦《黄泉》が同道して来る筈だ。到着を待って黄泉の主砲で片付ける」
マコトの戦闘方針の表明から2時間で補給艦隊が古き森へと到着をした。各戦闘艦へと兵器、弾薬を補給していく。その間にも蟲の群れが地上や空中を我が物顔で這いずり回っていたが空中からの攻撃により数ヶ所の攻撃範囲に誘導されていった。
その合間を縫って地上に残地された物資や行方不明者の捜索、救助も合わせて行われたが生存者は装甲のある車輌に逃げ込めた僅かな者のみであとは絶望的だった。
補給作業開始から6時間後。
「陛下。各艦から攻撃準備が整ったとの報告が来ております」
「地上捜索班から地上に残地されていた物資、魔石兵器、行方不明者の回収が終了したとの報告です」
「空中輸送艦、安全圏への退避完了です」
各オペレーターからの報告が続く。
「陛下。攻撃の準備は整ったものかと」
地上から退避した際から一緒だった参謀がまとめる。
「宜しい。では黄泉の主砲であの寄生虫を滅した後、MOABによる地上の滅却を行う。地上での蟲の活動が減少したことが確認されたならば魔導動甲冑部隊を中心とした地上部隊により蟲の地下トンネル及び巣を把握し、
地下貫通爆弾により地下の蟲どもも滅却する。蟲竜や蟲龍の死骸は事後の調査対象であるから意図的な攻撃は禁止とするがもし、また寄生虫のような異常の兆候を認めたならば司令部判断で破壊する。
主な作戦方針はこれでいこうと思う。参謀、詳細を詰めた後に総攻撃を開始せよ」
「了解しました。既に立案した作戦に若干の修正を行うだけですので、修正の後に裁可が頂けましたならば1時間ほどで作戦開始となる予定です」
68分後
「・・・・全軍、攻撃開始せよ」
マコトの命令と同時に、黄泉の主砲が寄生虫の胴体を消滅させる。寄生虫は蟲龍から這い出てきたあとはほとんど動いておらず攻撃は主砲が蟲龍の死骸に当たらないように調整するぐらいで済んだ。
寄生虫は生物として順当に死んだ。後にマコトが『柔らかすぎる、(出てくるのが)早すぎたんだ』と言ったとか、言わなかったとか。
作戦の第一段階である不確定要素の寄生虫があっさり死んだことを受けて、事前に蟲を攻撃により誘導した場所に合わせて各戦闘艦が配置に着いておりその専用の発射装置からMOABを射出していく。
かって、ゲシュタルト王国などで使用した際は格納庫から手動で投下していたことから比べるとコレもまた技術の進歩である。
ズ~ン
時刻を合わせて投下した為か爆発音はほぼ同時に響いた。様々な技術で防護されている筈の空中巡洋艦の艦橋まで振動していたようにマコトは感じた。
「MOAB全弾起動を確認しました。地上の蟲の撃破率18%と予想。第二次攻撃を開始されます」
ズ~ン
再び炸裂音と、外部カメラで撮影された映像が艦橋のモニターに幾つも映し出される。
この攻撃は第八まで行うことを想定していた。
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