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349 話 氾濫鎮圧 1

久しぶりに二週連続投稿です。

 「・・・、真面(マジ)どうしよう?」


 ヤマト公国の公都ノースガルドの公城に日本から帰国したマコトは執務室で頭を抱えていた。幼馴染みから婚約者へと格上げ(クラスアップ)となった彼女は諸々の身の回りの整理があるだろうと一旦、彼女の実家へと帰している。


 そのうちに、犯罪者(ストーカー)も排除したことから仕事にも復帰するであろうがその状況も含めてマコトの悩みの種となっている。因みにマコトが日本を離れる交換条件として、日本行きに同行した兵士が連絡役として人質になった。


 彼女(人質になったのは同性が良いだろうと女性だった)は非正規活動によって得た資金で市内にホテルを借りてほぼ毎日、出雲(いずも)優香(ゆうか)からの異世界でのマコトの話しを聞こうとする訪問を受けており、マコトの信奉者の多い


公国軍軍人である彼女も最初は嬉々として話していたが連日のマコトの女性関係に関する質問に悲鳴をあげていた。


 そんな彼女からのSOSを受けたこともありマコトの側も今後の対応を検討する必要があった。


 「陛下が元日本国の国民ということは一部の協力者しか知らないのであれば、日本国国民と国交の無い国との国際結婚ということになるでしょうが何しろ互いにとって前例がありません。調整は難航しそうですな」


 「しかし、かの女性の政治的調整が済むまでの安全を保障することも考慮せねば。創作物や余程の独裁国家でもなければ我が国に対する人質という手段は取らないでしょうが保険は必要です」


 「だが、しかし。我が国は公式には日本国に現在は誰も滞在して居ないことになっている。協力者でさえも極々少数の連絡員が居るぐらいにしか思っていないだろうな」


 「イヤ、寧ろ何もしない方が良いのではないか?例の女性が我が国の、ひいては陛下の想い人であることは最重要機密だ。下手に日本国に対して要求すれば余計な関心を買う結果になってしまえば元も子も無い」


 「では、現状のまま維持し御本人だけに連絡を取り、(きた)る日までは自重してもらうしかありませんな」


 「連絡員はどうする?かなり切羽詰まった交代要員の派遣希望が来ているが」


 マコトの執務室に集まった参謀や情報機関の(ちょう)達が意見を出し合うのを見計らいマコトが発言する。


 「それに関しては自分が書簡を出そう。『世間に知られるリスクが有り、連絡員は引き揚げる。待っていて欲しい』と。彼女もそこまで無理を押し通そうとはしないだろう。元々頭は良かったからな分かってくれる筈だ」


 一部の者はマコトの恋愛クジの引きの悪さを思い、疑わしげな顔をした。


 「それよりも古き森(オールドフォレスト)の件はどうなっている?魔石を使用した魔道具『凍結地獄(コキュートス)』を実戦で使用した、とのことは聞いているが」


 マコトの質問で会議の議題が切り替わる。


 「魔道具開発技術局からの報告では魔物の群れの前衛群の中央に爆撃機により投下。これにより効果範囲10Km全体に魔物を捉えることが出来る計算でしたが・・・・」


 「どうした、何があった?」


 言い淀んだ同僚を他の幹部が()かす。


 「・・・・、魔石の属性を考慮して氷属性魔法を発現する術式を刻んだ筈なのですが想定よりも冷気を発する効果が弱かった模様です。魔物を殺傷するに至った効果は半径5Km弱、しかも、不完全な魔法の発現によるものか魔石に魔力が残存しており魔物が誘引されています」


 「つまり、どういうことなんだ?」


 「最新の研究結果により、魔石とは長い時を生きた魔物からのみ取り出されて膨大な魔力を含有しており、何らかの形で魔力を消費しても周囲の魔力を取り込み魔石の含有魔力を維持しようとすることが確認されました」


 報告者は一旦、息を整えた。


 「この事により、魔法の発現には膨大な魔力が必要で、それを自力で賄える存在だけが魔法を使ていましたが魔石を使用した魔道具の所持者はそれをほぼ無視する形で魔法を使えることが技術的に立証されました。


 しかし、魔石その物に手を加えて魔法使いを必要とせずに誰にでも魔法が使用出来るようにした技術の完成は近代まで成功しませんでしたが陛下による名前付き(ネームド)の連続討伐によりサンプルが集まり~」


 「待て待て待て、理論はこの際置いておいて結局のところ成功なのか失敗なのか?」


 「実戦で実践して効果が発現したという意味では成功です。しかし、効果範囲の想定よりも大きくなかった点、魔物が集まったことにより魔道具が回収出来ていない点に関しては失敗、と言えるでしょう」


 「「「「回収出来ていない??」」」」


 部屋に居た者達の声が重複する。


 「残存した魔力に引き寄せられる形で魔物が集まっています。幸い『凍結地獄(コキュートス)』の効果も残っており、近くまでは近寄れません。可能性としては魔物が取り込みこともあり得ましたがお陰で最悪には至っていません」


 「国の重要な軍用重要物資を制御不能な状態で放置してそれを報告していないとはどういうことなんだ!報告、連絡、相談のホウレンソウが出来ていない!」


 マコトの怒りに合わせたかのように執務室の扉を開けて憲兵隊員が現れて事態の重要性を理解していない幹部を連行した。


 「彼は、公国拡大時に新規に傘下に入った国の人間だったな。公国の基本的ルールが徹底出来ていなかったか」


 マコトはため息を吐いた。


 「新兵器が不調に終わったなら後は正攻法だ。現在、前線に配置されている以外の部隊を参集させよ。小出しにし過ぎた。一気に動員可能な最大戦力で氾濫を鎮圧する!」








 


 


 

 

読んでもらってありがとうございました。感想、評価等してもらえると励みになりますので宜しくお願いします。

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