344話 回帰 2
先週は欠稿申し訳ありませんでした。疲れすぎて忘れていました。
ヤマト公国 公都ノースガルド 公城内マコト執務室
「それで?古き森の魔物氾濫の状況はどうなっている」
マコトの促しに情報将校が写真も使用した報告書で執務室に集まった人員に説明を始める。
「はい。現状では森には約60万の蟲型の魔物を中心とした魔物が世界樹を目指して侵攻しています。魔物の主が居るタイプの魔物氾濫のようで千年怪樹魔物が中心部に確認されています」
報告書の頁を捲る音が静まった執務室に響く。
「公国軍を主力として、防衛兵力3万が森林地帯で遅滞戦闘を行っておりますが焼け石に水の状態です。樹木が障害となり重砲が使えないので工兵隊が爆薬を仕掛けて魔物の動きを止めて攻撃して辛うじて侵攻を遅らせています」
「魔物の主力は先程述べた蟲型の暴食飛蝗、軍隊大蟻、殺人蟷螂、暗殺蜘蛛といった魔物が地面を埋め付くし、侵攻先で樹木や魔物、獣といった動植物を食い尽くしつつあります。打つ手は無いのが本当です」
報告をした情報将校は憔悴した表情で報告を終える。
「陛下。これは早急に対策を講じなければ領土の荒廃だけでなく、時間が経過すればする程に卵から新たな魔物が孵り更に増殖することになります」
「通常の魔物氾濫であれば共食いや仲間割れ等、様々な理由で減少することがあるが主が居ることといい、餌となる物も多い。自然消滅は期待出来ませんな」
執務室に居た幹部達が意見を述べる。
「う~む。報告に有ったとおり古き森周辺は特に木々の密度が高い。爆撃や砲撃が効果が無いとは言えないが効果が出るまで攻撃をすれば費用対効果が凄い金額になりそうだな。森も焼き野原になって生態系に大きな影響が出る事になるだろうな。どうしようか?」
マコトが頭を悩ます。
「森を焼くか、凍らすかするしか無いかな?誰か良い意見がある者は居るかな?」
マコトの問いに居合わせた面々は頭を悩ます。
「毒物はどうでしょう?過去にも使用例はあります」
「あれはある程度の密閉空間だったからだ。しかも今回はあまり呼吸をしない蟲型魔物であるし、数も多い、広範囲に散布したにしても後始末が手間だ」
「森の一部を切り拓いて殺し間を設定して魔物を誘引して火力を集中して殲滅するのはどうだろう?これも過去に実績がある」
「殺し間か。火攻め、冷却も無理ならそれしかないかもしれないね」
「私もそれが良いと思います」
「あの、凍らすのでしたら良い物があります」
「誰だ、あれは?」
「あまり見ない顔だな」
「魔導具開発技術局のマギ中尉です。実は軍が回収した名前付き魔物の魔石から強力な冷気を発生させる魔導具開発に成功いたしました。魔導具名『凍結地獄』周囲10km圏内を零度から-30度に設定して凍らせることが出来ます。-30度という数値も現在の機材で測定出来る限界なのでまだ数値が下がる可能性もあります」
「ああ、あの魔導具完成したのか!」
幹部達の会話を聞いていたマコトがそこで声をあげた。
「火を放つのは簡単だが後始末のことが面倒だと思っていたが、そうかアレが使えるなら凍り攻めも有りだな。よし、それで行こうか。諸兄は魔導具で取りこぼした魔物を逃がさないように殲滅出来る態勢を整えてくれ」
「「「「了解しました」」」」
「今回は規模が規模なので自分が直率する。地球遠征部隊を中心に2万の兵力を編成するように。後方支援部隊の数や編成は任せる」
部隊編成、その他の用意の為に幹部達が執務室を後にする。
「それで地球はどうなっている?」
執務室の誰も居なかった筈の場所からダークエルフの情報部員が現れる。
「地球の日本国の政府は我々に対する方針、対策がまともに取れていないようです。民間に広報されているもの、協力者からの裏情報からも同様の結果が得られています。海外諸国は我が国のもたらした秘薬の効果を知り表に裏に日本国に圧力をかけています」
「また、協力者からの報告では日本国に限らず、我が国に易になりそうな国家、人物に秘薬を提供して密約を取り付けているそうです。そこで追加の物資の援助を求めています。また、我が国をいいように利用しようとした存在を既にかなりの数を始末したそうです」
マコトが顔をしかめる。
「寺門さん達に手を汚させてしまったか。これは日本政府に寺門さん達に手を出す口実にさせないように手を打たなければならないか?しかし、次の訪日までは日本政府に接触はしたく無いがどうするかな」
「それで、陛下の懸念事項ですが・・・・」
「・・・・・、どうした」
「はい『要監視対象』ですが、どうも不審人物に付きまとわれて精神を病みつつ有るようです」
「何だと!!!」
マコトの顔に久しく無かった焦りの色が浮かぶ。魔物氾濫の報告を受けたときよりも焦燥している。
「『要監視対象』は万難を排して護衛するように命じてあったな!!」
「はい。しかし、不審人物は付きまとうだけで実力行使には至っていなかったので監視にとどめていたのですが、『要監視対象』が体調を崩す事態に至ったことから報告することになりました」
「『なりました』では無いだろう!何の為に一部専属の要員を用意してまで護衛させていたと思っておるんだ!」
「申し訳ありません。直ちに不審人物を危険人物と認定して『処理』致します」
「それでは手遅れだろうが!どうする、どうする?寺門氏に支援を求めるか?いや、既に理解者の確保という厄介な依頼をしている。となれば・・・・・」
「陛下?」
「自分が直接に赴く」
「陛下!それはあまりにも!」
「もう決めた事だ。情報部のこの事情に精通した者、裏工作に長けた者を5人程用意しろ。直ぐにだ!」
「・・・・・ッ、了解しました」
ダークエルフの情報部員は現れた時と同様に姿を消した。
「この身体、この心は既に日本人『柊 真』ではないかもしれない。でも彼女は、彼女のことだけは自分が自分であると思えるうちは守りたい。それが自分を自分たらしめている気がする。エゴかもしれないがそれが自分のやりたいことなんだろうな?」
マコトの独白は、秘書官も出払っていた広い執務室に小さく消えた。
「」
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