342話 日本(ニッポン) 7
何時も読んでいただきありがとうございます。先週は執筆機能の不具合によりご迷惑を掛けました。他の投稿者の方々のアドバイスにより復旧できました。この場でお世話になった、ご迷惑を掛けました方々に改めまして謝罪とお礼を申し上げます。
ヤマト公国軍地球派遣艦隊 旗艦 戦艦《黄泉》
「何なのですか!あの国の者達は!陛下を試すようなやり方を!」
「陛下の祖国の者達でなければあの場で切り捨てたものを」
「陛下、あのような振る舞い、看過できません!」
マコトのもとには日中の行進に参加した者、艦隊で様子を見ていた者達が集まっていたが殆どの者が怒りに震えていた。
「・・・・この国は数十年前の大戦以降、大国の傘下に有ったようなものだからな。自分が過ごしていた時代も『平和ボケ』という言葉が有ったぐらいだがまさか上層部があんな芝居じみた愚かな事をするとはな」
「では、我が国を下に見た愚か者どもに鉄槌を!」
「私がこの国で衛兵のような仕事をしていた時のことだ、何時も心掛けていたことがある。何だと思う?」
マコトに問われた幹部達が思考顔になる。
「正解は『愚かな行いをする者達と同じ土俵に立つな』だ。ああ、『土俵』というのは舞台のようなものだ。どのような事をされても自分のペースを崩さずに寧ろ自分のペースに持ち込むのだ」
マコトの言葉に何人かが雷で打たれたかのようなショックで膝を付く。
「お前達、我が国を担う幹部達には常に冷静で居て欲しい。笑顔で憎い相手と握手をして油断させて、後ろから確実に仕留めるような冷静さおな?」
その言葉に、先程の言葉に合点がいかなかった幹部達がショックを受けた顔になる。
「陛下、我ら一同勘違いをしておりました。どうか愚かな我らを罰し下さい」
マコトは、普段はぶっきちょ顔に僅かに笑みを浮かべる。どうでも良いが悪役面だ。
「取り返しのつかなくなる前に気付けた事を良し、としよう。幸いな事に日本国は策をこうじることは出来ても、法的に、国民性的に武力に訴えて来ることはまず出来ない。良い教師となってもらおうではないか?我々の糧としてな」
「「「「了解しました!」」」」
そして、そのまま今後どのようにして日本国側と再度対応するか、幹部達がその場で立ったまま会議を始めてしまった。そこはマコトの艦内の執務室であったがマコトは黙ったまま見守っていた。
「失礼します!本国からの至急連絡便です!」
地球とマコトの転位した世界を繋ぐ門は常時開放していては動力源たる魔石がいくら有っても足りない。そこで空間座標軸?とも言うべきものを設定して何度でも門を繋げるようにして通常は閉鎖してあった。
日に2度の定期連絡便でヤマト公国本国とは連絡を取り合っていたが急遽その門を繋げてでも連絡すべき事態が発生したようだ。
「報告せよ」
マコトはその場で報告を聞くこととした。幸いな事にそれなりの数の幹部が既にこの場には居た。
「は!古き森(オールドフォレスト)にて魔物氾濫が発生。数は概算で30万、恐らくこの数は増加するものと思われる。残余部隊、軍団・葬送曲、冒険者ギルド等が応戦中なるも陛下に早急な指揮を願いたい、とのアリシア公妃様からの要請です」
「30万とは!」
「あそこは『世界樹』保護のために最低限の守備戦力しか居りませんで一般人などはまず入り込めません。それにより発覚が遅れたのでしょう」
「充分な戦力は残してきた計画ですが、国境の警戒、国内の治安維持、『世界樹』の重要性を考えますと早急な対応が求められますな。現有の残留部隊でも鎮圧は可能でしょうが時間がかかります。不測の事態を考えますと・・・・」
マコトは幹部達の意見を聞いていたが、
「今回の派遣はここまでとする」
地球派遣事業の中止を宣言する。
「しかし、陛下それでは・・・・」
マコトの郷愁の想いを知る古参の幹部がマコトを止めようとする。
「ちょうど良かったのでは無いか?我々のは相手の誠意無い対応に遺憾の意を表明して去るのだ。非はこちらに無い。しかしそうだな、置き土産は必要だな?」
マコトは暫し、考え込む。
「現地協力者である寺門氏に事情を説明し、魔物氾濫の件は隠して政府の非を糾弾するように世論に呼び掛けるように依頼しよう。また対価と撒き餌としてこちらの世界の品を幾つか世に広げてもらおうか。より政府に非難が集まるようにな」
「しかし、それでは魔物氾濫を鎮圧して戻ったとしても日本政府が我々に良い感情を持っているでしょうか?」
「我々は『政府』と交渉するのだ。『個人』では無い。我々と対話できなかった政府を国民がどう判断するかが大切だ。我々の贈り物を見た上で国民が我々を必要としないならそれで自分は満足しよう。やりようは正攻法だけでは無いのだ。しかし恐らくは」
その先は幹部達にも想像はついた。現代医学では再現不能な『世界樹の雫』をはじめとした水薬や、その他の品をもたらしたヤマト公国との交渉ができなかった事を国民が許さなければ早晩、現政権は国内の支持を失うことになるだろう。
「では、意見は出尽くしたな。現地の日本国の関係職員に通達せよ。『我々は帰る』とな」
マコトの一声で、幹部達が動き出す。日本国へと通達する文面を作成する者、艦隊の行動計画を考える者、本国へと連絡する者などマコトの意思を実現させる為に動き出す。
日本国 H県H市宮島 島内
「え?会談の一切の中止ですか???」
「そうだ。我々はそちらの政府の行った数々の行為に対して『遺憾』を表明して、ここより去る。次に地球に来る際には別の国家を訪問することになるかもしれんな」
「・・・・・!!そんな、一方的な!」
「本交渉は行われて無いが、一応こちらからの贈答品を置いて行く。もう貴国は2度と手に入らない品物かもしれませんがね」
「待って下さい。今すぐ政府に確認を・・・・」
「何を、確認するのですかね。我々はもう『帰る』と決定しています。『遺憾』はそちらのお得意なことでしょう?しかし、我々は『遺憾』の言葉だけではなく実行に移しますがね」
現場に居た副大臣、議員団、各省庁職員に伝える言葉を伝えてそのヤマト公国軍の将校は立ち去った。将校の乗艦を待っていたかのようにしてヤマト公国軍地球派遣艦隊は次々と虚空に姿を消した。
その様子は、全く情報を得ることが出来ずに遠距離から撮影することしか出来なかったマスコミ各社にも撮れていた。
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