34話 侵入者 ドリンドルにて 17
宴が始まった。エルフ達が歌い、踊り、ドワーフ達が酒杯を掲げ合う。
エルフの呼び掛けに応じた光の妖精達が、宴の会場を照らし出す。
まさにファンタジーの世界だ。
「司令、この料理私が作ったんですよ!食べてみて下さい。」
「ズル~い、司令!私も私も!パスタっていうの作ってみたんですよ!」
「ガハハハッ、エルフの娘っ子達よ。司令が困っておるがな、まずは一杯よ!」
「ドワーフはお酒さえ有れば良いんでしょう!」
「そうよ!邪魔しないでよ!!」
「はいはい、皆さん頂きますよ。順番に順番に。」
「し~れい、わたしはねぇ、わたしはねぇ、ここに来れてほんと~に良かったって思っているですよ!!聞いてます?」
「もう酔っているのか?水を飲んで休むと良い。」
次から次へと団員がマコトの元へとやって来る。
知らない人が見たら、イヤ、知っている人が見ても彼らが、奴隷とその主人の関係に有ることを疑ったことだろう。
夜になり、闇夜が辺りを包んでも庭先の賑わいは衰えることは無かった。招かざる客が来るまでは・・・。
ジリリリリリリリリリッ!!
「何?何の音?!」
「侵入者だ!!」
スキルマップ作成を行うと、屋敷の裏手から5人が侵入して来るのが分かった。
「屋敷の裏手から5人侵入して来るぞ!!」
マコトの声を聞いて、A小隊とB小隊はそれぞれ左右に別れて挟み撃ちにする形で、移動を開始し、C小隊とドワーフ達は新手の侵入に備えた。
「見えた!!」
屋敷の向かって左手側から回り込んだA小隊が先に賊の姿を捉えた。
そこには、急に明かりに照らし出されて、慌てて外壁を越えようとする、覆面姿の男達がいた。
「全員風の礫で合わせて!!せ~の!!」
『エアバレット!!』
エルフ族の得意とする妖精術その中でも得意な風属性の礫が24発、侵入者達に襲いかかった。
男達は既に2人が外壁を越えていたが、残りの3人に命中し、3人はその場に倒れた。
その頃には、屋敷の右手側から回り込んだB小隊も視界に入り始めていた。
「A小隊は外壁を越えて残る賊の追跡、B小隊は倒れた賊を捕縛せよ。」
A小隊の第1分隊長は、指示を出すと力有る言葉を紡ぐ。
『エアウィンド!!』
分隊長以下数名が外壁を飛び越えた。
残りの者もエルフならではの身軽さで外壁を乗り越えて行く。
残されたB小隊の面々は、3人の男達をロープで縛り上げていく。
十数分後、2人の男達を追っていたA小隊の面々は、2人を4人がかりで、担いで帰って来た。
10人程の衛兵付きで。
追跡劇の途中に巡回中の衛兵隊と出くわし、事情を説明してのことだった。
男達を衛兵隊に突き出し、事情聴取を聞いていると、男達は皆、同じパーティーの冒険者仲間で、活躍を続ける葬送曲の武器を盗み出せば、自分達こそ上手く使えると思っての犯行とのことであった。
男達は、住居侵入と窃盗未遂の現行犯で衛兵詰所に連れて行かれた。
衛兵隊の隊長によれば、慰謝料と罰金の刑か、慰謝料と重労働5年の刑のどちらかになるのが、通例だが、街の英雄に対して行った罪として重労働の刑になるだろうとの事であった。
男達が、衛兵に連行されて行くと、皆、何事も無かったかのように宴を再開して
連れて行かれた男達を酒の肴に酔いしれるのであった。
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