332話 地球(テラ)へ 3
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日本国 海上自衛隊 護衛艦くらま
「艦長、通信筒とおぼしき物体の回収が終わりました。現在、危険物等が無いかを確認作業中です」
「そうか」
「艦長、X線検査、特別に乗船させた爆発物探知犬(K9)異常有りませんでした。中身は紙のようです」
危険物等の処理に関する知識と技術を持った担当官が検査を終えた通信筒を運んでくる。既に開封もされているようだ。
「読める文字ならば良いが。副長、君はどのくらい理解出来る?」
「大学でドイツ語、フランス語はある程度学びましたが、どれだけ覚えているか」
「私はロシア語と韓国語だったよ。必要になるかと思ってな。では中身を・・・・これは!?」
「どうしましたか、艦長。やはり宇宙人かなにかで意味不明な文字ですか?」
「日本語だ。しかも、漢字、平仮名、カタカナまで全部使って書いてある。警告が日本語だったのでもしかしたら、と思ってはいたが」
「何と書いてあるんですか?」
「日本国と単独で会談を行いたい、とある。東京では無く出来ればF岡県かH島県で会談の場を持ちたいそうだ。東京では他国の目が有り過ぎると」
「・・・・なるほど。一見、両県は大陸に近すぎるように見えますがその分の警戒態勢も構築されている。東京には各国の大使館やらが多くスパイもウヨウヨ居るでしょうからな。領事館等も有るかもしれないが東京よりマシ、っと」
「この文章といい、内容といい彼らはこちらを分析している。厄介だな」
「『敵を知り、己を知れば』というヤツですが相手が一方的に有利ですな。で、どうしますか?」
「我々には判断が出来ない。上に報告して指示を仰がなければ・・・・」
「H島の宮島に向かって下さい」
「貴方は!!」
護衛艦艦隊が出港間際に強権を使って乗艦してきた男だった。
「彼らが行き先を問うて来たならば宮島に向かって下さい」
男は同じ事を繰り返す。
「貴方は誰なんですか?そして何故そのような事を言うのですか。予め彼らの意図を予想していたのですか?」
「私にそれを答える義務も権限もありませんが、宮島では然るべき態勢が取られて居るでしょう」
艦長は男を見つめるが、男からは何の表情も読み取れない。
「了解したが、向こうへはどのように伝えるんだ?わざわざ通信筒という手段を取ったということは米国に通信を傍受されたく無かったのだろうからな」
「艦長、投光器によるモールス信号はどうでしょうか?米国空母機動艦隊はまだ遠距離です。こちらから不明艦艦隊に警告ギリギリまで接近して行えば伝わるのでは?モールス信号もおそらく理解しているでしょう」
ヤマト公国軍地球派遣艦隊 艦隊旗艦《黄泉》
「ヒイラギ陛下、陣外周部を警戒中の空中駆逐艦よりモールス信号で日本国護衛艦から『宮島』へ向かうように伝えて来た、との報告です」
「来たか。了解した、との返事をさせるように。全艦隊移動準備。作戦参謀、事前に入手した日本地図からおおよその航路を予想して全艦隊に伝達せよ」
「了解しました」
日本国 海上自衛隊 護衛艦くらま
「不明艦艦隊から『了解した』のモールス信号が返って来たとの報告です!」
「艦長、本当にモールス信号を理解していましたな」
「ああ、やはり油断ならないな」
「艦長、日本船舶協会、日本船主協会、国際船主協会、漁協等の関係組織には護衛艦艦隊の行動をどんな形でも妨害しないように警告を出したそうです。そして妨害工作は強硬手段を使ってでも排除せよ、との命令です」
「了解した」
「この不明艦艦隊は一体何なのだ?米国も気にしているということはかの国の新造艦でも無い。本当に宇宙人なのか?」
「副長、今それを気にしても答えはでないだろう。今は目の前の目的地までの無事な航海を祈ろう」
「そうですな」
ピー!ピー!ピー!
くらまの艦橋にけたたましいアラームが流れる。
「どうした!」
「先行哨戒中のPー3Cが日本領海内にて潜航中の潜水艦を発見、現在ソノブイを投下して詳細を調査中で・・・・、来ました!潜水艦はロシア製のキロ級潜水艦と音紋で判明、何処の国の所属かを現在も調査中」
「副長、何処だと思う?」
「中国か、ロシアか。多分ここまで見付からずに来れた技量から伝統のロシア海軍でしょう」
「どこまでやるつもりだろうか」
「許可は出ています。どうしても退かないようであれば対潜爆弾で対処しましょう。それ以上は国に任せましょう」
「そうだな。全艦隊に通達。対潜水艦戦闘よ~うい」
「艦長、不明艦艦隊、いえ、もう最初の通信に有った『ヤマト公国』でよいでしょうな。トラブルが有ったと伝えますか?」
「伝えておこう。ヤマト公国に対する攻撃準備と思われても面白くない」
組織図、兵器の名前は実在の物、退役した物、架空の物がありますので雰囲気を楽しんでもらえたらと思います。感想、評価、いいね!を宜しくお願いします。