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327話 地球(テラ)へ 8

いつもありがとうございます。

 地球 日本国 東京都 某所


 「4日後に先日現れた不審艦が艦隊で現れるだと!?」


 「はい、防衛省の市ヶ谷にあります防衛省本庁舎の受付に寺門本人が一般訪問者(ビジター)として現れ、重要な案件があるとして対応した職員にそう話したそうです」


 「あの狸爺(たぬきじじい)は自分の人脈もあるだろうに態々(わざわざ)そんな回りくどいことしやがって!」


 部下、福岡の報告を聞いて上司は椅子にドカリと座り直す。


 「回りくどい、ですか?」


 「裏で手を回せば良いだろうにそんな方法を取ったってことはだ、正式にそういう話が事前に有ったと公式な来省者記録に残すためにやってんだ。非公式に話を通せば早いかもしれんが後で功績を有耶無耶にされかねんからな」


 「公式な記録を残したがるということは本当に不審艦が艦隊で現れる確信があるのではないでしょうか?」


 「何処から得た情報か知らんが俺は早急に政府に報告をせねばならん。何せ4日後だ、『確認の為に報告が遅れました』では俺は今までの無能どもと同じにされてしまう。今回の案件は『正確性よりも迅速』が求められるものだ。福岡、寺門が現れた時間や対応した職員の情報などを時系列にして用意してくれ、流石に書類の一枚も無い報告というのはな」


 「既に用意しています」


 「あんがとな。防衛省に寺門本人が現れたことぐらい他のルートでも耳の早い奴らは気付いているだろうがやはり公式な情報は公式に報告せんとな。福岡、もしかしたら当分は家に帰れんかもしれんぞ。俺が出てるうちに許可するから泊まり込みが出来る用意しとけ」


 「分かりました」


 「『会議は踊るされど進まず』にならんと良いがな」




 地球 日本国 東京都 某所 政府内事前調整会議


 「本当なのか、他国の軍艦が日本の領土に現れるというのは?」


 「領土ではなく領海ですな。報告を聞く限り先日の不審艦が今度は艦隊で出現するらしい」


 会議の参加者が隣の議員の肩をつつく。


 「なあ、艦隊って何だ?」


 「軍用艦が数を揃えて複数で組織されることだ。そんなことも知らんのか」


 「選挙にそんなことは知らんでも大丈夫だからな」


 『コイツ何でこの場所に居るんだ?』


 「そこ、無駄話をするな。どこまで進んだかな?」


 「はい。寺門なる人物ですが元は陸上自衛隊の陸将を勤めた人物でその毒舌から敵も多かったですが共感者も少なからずに存在しています。退官後は『寺門勉強会』なる非公式な会を作り賛同者達と時折に勉強会と称する会合を開いており、現役時代の人脈から他国の軍関係者とも接触があるようです」


 「『寺門勉強会』か・・・・。『○○会』と聞くと昭和の『盾の会』を思い出してしまうな。あのようなことにはならんな?」


 「・・・・可能性は無い、とは申しませんが寺門という人物は今がその時では無い、と自覚していると予想されます」


 「問題は当該の『不審艦』の所属が何処の国かということだ!米国の新造艦では無いことは確認がとれたのか?」


 「米国は一切の関与を否定しています。今回の情報を提供すれば日米同盟に基づき軍を派遣してくれると思いますが?」


 「その相手が何処のどいつかも分からんうちに要請しても良いものか?寧ろ不審艦が張子の虎だったり、偽情報だと米国の信用も落とすぞ?」


 「儂の独自のルートじゃと米国は不審艦に興味が深々のようだ。実際に現場にいた艦船の上級幹部に秘密裏に接触しようとした痕跡がある。出現した海域に潜水艦が今も待機しているという情報もあるしな」


 「寺門という人物からの情報だと不審艦が艦隊で日本の領海に入って来るということだが何の為なのかが分からんとどうしようも無いな」


 「事前に警戒するにしても海域も分からんという話だ。大平洋方面全体を警戒するなら海保にしろ海自にしろ相当数が必要だ」


 「寧ろこれは国際的な陰謀なのでは?不審艦などそもそも存在せずに日本と米国の目を大平洋方面に向けて大陸の軍事国家が・・・・」


 「前回の接触では不審艦に武装が認められたのだろう?海保の装備は大丈夫なのか?」


 「ここで陰謀論を述べてもしょうがないだろう!」


 『はあ、せっかく迅速に情報を上げたのにやはり方針が決まらん。部隊を動かすにしても命令を出して直ぐに現場に行けるんじゃ無いんだ。こうして会議室で椅子を暖めているうちに手遅れになるぞ』


 報告に来た福岡の上司はなかなか先に進まない会議に辟易としていた。


 「大平洋方面に自衛艦隊を派遣し、空自、海自の偵察機、哨戒機をありったけ投入し、生じてしまう隙間は海保に任せて万全の態勢で臨むべきです。出来れば米海軍にも参加の要請をするべきです」


 今まで発言をしなかった中堅議員が発言する。


 「そういえば君は陸自経験者だったな。陸の人間に海のことが分かるのかね?」


 「陸自ということは例の寺門という人物とも関係があるのではないのか?やはり外国の手引きをしておるのでは?」


 すうううう


 中堅議員が深く息を吸う。


 「分からんのか!戦力も数も目的も国籍も分からない軍が日本に現れようとしているんだ。全く根拠の無い話しならばいざ知らず既に事前偵察らしき艦影を確認しているんだ。確かに大陸方面を無防備にするわけにはいかないが全力で態勢を整えるべきだ。陸も海も空も関係無い、ただ手をこまねいてもし不審艦に敵意があれば国民に被害が出るんだ。そこのところを踏まえて、実際に部隊の移動時間も考えて会議するべきだ!!!」


 大きな声で一気に述べる。


 「以上です」


 会議室が静まり返る。


 「そ、そうだな。実際に現場に行く移動時間も考えんとな」


 「国民に被害が出ないように配慮して総理への意見書を作成せんと」


 中堅議員の一喝で会議に方向性が出てきた。


 『こりゃなんとかなりそうだな』


 福岡の上司は内心安堵の息を吐いた。






異世界よりも日本の描写ばかりだな。反省。注 当作品はフィクションです。実在の人物、組織、団体とは関係ありません。

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