322話 地球(テラ)へ 3
仕事が疲れます(@_@)
ヤマト公国 公都ノースガルド近郊 公都防衛基地
公都に隣接するように建設された公国軍の基地にはおびただしい数の兵器が集結していた。
空中戦艦をはじめとした各種空中軍艦、魔導動甲冑群、重戦車、装甲車輌、軍用輸送トラック、その他の車輌群、戦闘機、戦闘ヘリコプター、輸送ヘリコプター、偵察ヘリコプター、軍用多目的コンテナ等が基地内の地面が剥き出しの平地、滑走路、格納庫、駐機場ありとあらゆる場所に集められていた。
これらは各地の秘密の物資集積所から集められたホンの一部だがこの世界ならば、ヤマト公国の存在する大陸の征服に挑めそうな程の規模であった。少し離れた場所には、兵士達が生活する場である兵舎も見渡す限りに建設されていた。
しかし、これらは『第二陣』の部隊である。もし、『地球』側との一次接触が不幸な結果になった時に『第一陣』を救援するための部隊である。
その『第一陣』とは、
初の魔石複数使用艦 総旗艦 空中弩級戦艦『黄泉』
空中戦艦『大和』『長門』
空中空母『赤城』『飛鳥』
他 空中駆逐艦12隻
である。これらが地球へと至り異世界の存在を地球へと知ら示すのである。
日本国 某県 某市 斎藤家
「本日より二週間後、日本の太平洋側の排他的経済水域(EEZ)の200海里(約370km)のすぐ側に所属不明艦が出現します。叔父さんにはこの情報を利用して現場の人間だけでも構いません。全くの未知の事態に落ち着いて対応の出来る態勢を整えてもらいたいのです」
「色々と問題があるが所属不明艦とは何なんだ?」
「我が国の軍艦です。実験の為に30分だけ姿を現します」
「またわからん事が出てきた。『我が国』とは?」
「地球に存在しない国家、『ヤマト公国』です」
「『大和公国』?日本とは何か関係が有るのか」
「自分が建国しました」
「・・・・・・・は???」
「日本人である自分が建国した異世界の『ヤマト公国』の軍艦が二週間後に公海上に現れます。叔父さんの息のかかった勢力でそれをいち早く対応して第一接触をして欲しい、ということです」
「真、何を言っているのか理解しているのか」
斎藤元一等佐は突然現れた甥の話を取り敢えず聞く気でいたがあまりにも突拍子のない内容に甥正気を疑い出した。
「突然、このような話を聞かされて信じられないのは承知の上です。だからこそ叔父さんの所に来ました」
「例えその話が事実で私が信じたとしても他の人間を納得させることは出来ないぞ」
「分かっています。なのでこれを」
マコトはポケットから数個の錠剤を取り出す。
「異世界でも貴重な薬を飲みやすくしたものです。あちらのほとんどの病を癒し、四肢の欠損すらも癒します」
「な、何だと!?」
「地球に戻ってから調べさせてもらいました。叔父さん、退官直前に事故で左腕に麻痺が残り後遺症でまともに動かせないそうですね。これを飲めば恐らく腕は動くようになるはずです」
「そんな馬鹿な事が・・・・、そうか、そんな事が可能ならば多少の否現実的な話しに現実味が出るということか」
マコトは頷く。
「この薬の効果を知れば、先程の件も『もしかすると?』ぐらいには思ってもらえると考えます」
「そうだな。確かに得体がしれないが真君を信じてみよう」
そう言うと、斎藤元一等陸佐は錠剤を1つ手にするとそのまま水も無しに飲み込んだ。
「うぐ!!」
左腕を動く右腕で押さえていきなりうめき声をあげる。
「あなた!」
夫人が苦しむ夫を心配する。
「だ、大丈夫だ。しかし、腕が熱い。ここしばらく感覚の無かった左腕が・・・・ぐああああ!」
一際大きなうめき声をあげた。次の瞬間、斎藤元一等陸佐は左腕を振り上げてテーブルに叩きつける。
「あなた、腕が、動かないはずの腕が持ち上がりましたよ!」
「うぐぐぐぐ、た、確かに動く。ピクリとも動かなくなっていた左手が動く!物も握れそうだ!」
そう言うと、机の上に置いてあった花瓶を掴んで持ち上げた。
「正直、半信半疑だが確かに動かなくなっていた左腕が激的に動くようになった。これは怪我だけでなく病気にも効くんだったね?」
「いえ、正確には異世界の病気はほぼ治せますが、地球の病気にも効果が有るかはまだ検証が済んでいません」
「そうか、薬事法的には違法かもしれないがこの効果は確かだな。怪我に限定しても欲しがる人間は多いだろう」
「この薬を使って所属不明艦の話しを噂レベルでも構いませんので関係各省に広める事は出来ないでしょうか」
「・・・・・。滑稽無形だが心当たりは有る。この交渉手段があれば以前の伝を使って情報を広げることは可能だと思う。だが何故そこまで情報を拡散させることに執着するんだね?」
「二週間後の実験は始まりに過ぎません。その後に更に大規模な部隊が出現する計画です。そうして日本政府に我が国との国交を求めるつもりです」
「その交渉の為に窓口となる勢力が必要な訳か」
「はい。未曾有の事態に的確に対応出来たということは現場の人間にとっては後々に活きるはずです。突発的な戦闘を回避する事にも繋がります」
「排他的経済水域(EEZ)付近に所属不明艦が出現することをあらかじめ情報を入手したことにし、的確に対応することの出来る存在を用意するのか。先程も言ったが心当たりは有るが確約は出来ないと言っておくぞ」
「あくまでも切っ掛けを作るのが理想です。叔父さんの工作の成否に関わらず艦隊は出現させるつもりです」
「死んだはずの甥が訪ねて来た事にも驚いたが、持ち込んできた案件も前代未聞だな。現役を引退した身には堪えるな。それで真君、ゆかりには、母親には生存を伝えないのか?その様子ではしていないだろう」
「・・・・・・・」
マコトは沈黙する。
「いずれ、機会を見て伝えるつもりです」
「そうか。この薬はあとどのくらい有るんだ?」
「どのくらい必要です?」
「取り敢えず10錠は欲しいな」
マコトはポケットから追加で錠剤を取り出して机の上に置く。
「追加で必要な場合は玄関に不審にならない程度に白い紙を貼って下さい。その合図を確認したら手の者が伺います」
マコトはそう言うと、一緒に訪問した女性を紹介する。
「では叔父さん、久し振りに話が出来て良かったです」
「真君。私はまだ今日の事が現実だという実感が薄い。しかし私が出来ることはしてみよう。しかし、そこまでして何故表社会に出ようとするんだね?君の、君達の実力ならば秘密裏に入国など容易いだろうに」
「・・・・・それは、まだ説明できません」
「そうか、いつかは話してくると信じているよ」
斎藤元一等陸佐のその言葉を最後に久し振りの叔父と甥の再会は終了した。
「あなた・・・・」
「ちょっと掛けたい電話があるんだ。独りにしてくれないか?」
そう言って奥さんに部屋を出るように促すと斎藤元一等陸佐はメモも見ずに電話をかける。
「ああ久し振りだね、私だ。少し会って話す事は出来ないか?急を要するんだ」
遂に日本へと帰還する足掛かりを築き始める主人公。




