320話 地球(テラ)へ 1
内政内容が多くなって行きます。
ヤマト公国 公都ノースガルド 公国立第一病院
病院の一室で不安そうにウロウロするマコトの姿があった。室内には武装侍女隊員や親衛隊員の姿もありマコトを刺激しないように気配を消していたが、
「陛下、ハーブ茶はいかがでしょうか。多少は落ち着かれます」
武装侍女の1人が勇気を出してマコトにリラックス効果の有る茶を薦める。
「茶か・・・・貰おう」
マコトは少し考えると同意した。武装侍女数人で素早くティーセットでハーブ茶とお茶請けを用意する。マコトは用意された椅子に座るがお茶の香りを楽しむ余裕も無く一気に飲んでしまう。
『ピッピッピッピッ』
部屋に設置された電話が鳴ると素早く親衛隊員が出る。
「うんうん、そうか!陛下、御産まれになりました!」
その言葉にマコトは椅子から立ち上がり部屋、出産待ち合い室を出る。既に三回目だ。病室への道順は覚えてしまっている。
「アナスタシア!」
マコトが入口で親衛隊員が警備をしている部屋に入ると、分娩室から移動してきたばかりであろう公妃の1人であるアナスタシアがベットから上体を起こしておくるみに包まれた産まれたばかりの赤ん坊を抱いていた。
「陛下、今暫く静かにしていただく思います」
室内に居た助産師がマコトに苦言を言う。
「す、すまない」
マコトは素直に謝る。
「マコト、男の子だった」
公妃の中でも年下のアナスタシア妃はマコトに敬称をつけることも無くなっており、名前を呼び児の性別を伝える。
「そうか!大翔、お前の名前はヒロトだ。大きく羽ばたくという意味だ。まあ、姉さんが2人いるが負けずに頑張れよ」
マコトはヒロトに慈愛の眼差しを向ける。
「マコトは抱いてあげないの?」
ヒロトに触れようとしないマコトにアナスタシアが問う。
「いや、自分は不器用でな。産まれたばかりの赤ん坊にどう接して良いのか分からないんだ」
「抱いてあげて下さい。他の子の時もそうだったのですか?」
アナスタシア妃が呆れたように言う。
「いや、頭は撫でたぞ?」
「抱・い・て・く・だ・さ・い!!」
「・・・・・はい」
マコトは助産師さん達からの注意を受けながらヒロトを抱っこした。
「ヒロト、お前の人生は波乱万丈なものになるだろう。しかしどんな時も自分達が見守っているからな?」
「オギャア!オギャア!」
おとなしかったヒロトが大きな声で泣き出した。狼狽えるマコトから助産師さんがヒロトを受け取りアナスタシアに渡す。そうすると泣き止んだ。
「やはり、自分は不器用だな」
「最初は男親なんてそのようなものです」
まだ若い助産師がマコトを励ます。
マコトがもたらした地球の技術は医療の現場にも及びどんどんと改革が行われているが新しい技術を収得するのはやはり若い人間の方が早い。
元からの医師や看護関係者も学んでいるが経験が有る分、新しい技術を学難くなっている傾向があり、現場には若い人材が出ることとなっていた。
ちなみに、アリシアの長女は『桜』、ミナサリアの次女は『菫』と名付けた。
「城へと戻る」
「今日1日ぐらいはこちらにいらっしゃならないのですか」
「そうしたいが、まだまだやらねばならない事がある。明日もまた来る」
マコトはヒロトの頭を優しく撫でると公城へと戻った。
公城 公王執務室
「陛下、今回分の決済書類となります」
秘書官から薄い辞書ほどもある書類の束を渡される。それにマコトは目を通していきながら決済の判を押し、必要なものには署名をして不備があれば訂正する。
「治安関係と薬剤関係の書類が目立つな」
マコトは複数待機している秘書官に問いを発する。
「今回やむを得ず併合した地域にはインフラが整っておらず治安維持の為の人員の確保、教育が急務です。民情は悪く無いのですが国境の網の目を潜って犯罪者や不法入国者が絶えません」
「『世界樹の雫』に依存しない薬剤の確保というご指示の元、既存の薬草類から新たな薬効を持つ植物を調査、研究しております」
「そうか、引き続きそのように頼む。国内の物資の蓄積も順調のようだな」
「はい。国内で使用・販売する物、他国へ輸出する物資以外の物は概ね処理を施して貯蔵庫へと保管に回しています」
「あれらは『例の計画』の実施の際にあちらとの取引に使えると予想される物資だ。量は必要だが国内で緊急の用件等有れば、許可を得て躊躇わずに使用するように」
「「了解しました」」
「陛下、次の決済書類となります」
次の書類の束がドンと執務机に置かれる。
今回は病院の場面がありましたが、ネットで調べたりしながら書いたので間違っている用語等ありましたら教えて下さいm(_ _)m




