319話 大事の前の大事 7
季節の変わり目で桜も綺麗です。ここらで大きく転換期を迎えたいと思います。
3か国の侵攻から3ヶ月後
「2か国の侵攻は我が軍が完全に撃退し、ゲシュタルト王国軍も相手を粉砕し逆侵攻を実施。それと呼応して我が軍も予備部隊を投入して2か国を完全に占領しました。ゲシュタルト王国軍は敵の残存勢力の掃討に手間取っている模様です」
「思ったよりも歯応えが無かったな。実戦が初の将兵も多かったが問題点の洗い出しも行っているか?」
ゲシュタルト王国の援軍派遣は大きな問題もなく侵攻して来た勢力からの防衛に成功していた。マコトも大したことをすることもなく派遣軍の戦闘を見守っていた。
寧ろ戦闘よりも事後処理の方が手間取り、3ヶ月が経過して担当官からの報告を受けていた。
「現在各将兵からの聞き取りを実施して調査中です。またマカ王国、テンダー王国占領政策は順調です。両国とも建国間も無く国王への忠誠心も低く、生活が貧しくてその不満を反らすべく行った結果、占領されたのですから人心は完全に王国から離れてしまっています」
「下手な反抗勢力がうまれてもつまらん。忙しい時期だが支援は充分に行って取り込んでしまうように。それから地方の魔物の発生件数の増加の件はどうなった?」
「・・・そちらについては他の者が対処しておりますが、地方への兵力の増強で対応は十分であったようで順調に鎮圧されています。暗躍していた者達も侵攻軍が惨敗したことを受けて姿を消した模様です。情報部が引き続き捜査しています」
「そうか。報告ご苦労だった」
侵攻軍への対処と魔物の増加の問題が大体片付いてマコトは他の事柄へも目を向ける事が出来るようになった。3人の公妃達の妊娠もマコト自身に出来ることは殆ど無かったが、国力の向上政策の中で医療技術の進歩も有り専門の医師団が組まれた。
国内の問題もほぼ片付き、以前のように富国強兵政策への邁進が本格的に再開された。
ヤマト公国 公都ノースガルド 公城内の密室
「それで『回天』の門の調査はどうなっている?」
マコトはフード付きのコートで顔を隠した親衛隊員の1人と密談をしていた。
「現在3人の人間の偵察要員が門を越えて『地球の日本』へと潜入しています。門の維持には多量の魔力が必要ですが魔道具で補えています」
「潜入した者達は日本の治安組織に気取られていないか?」
「はい。陛下の作成されたマニュアルに基づいて行動しています。いざとなれば姿や気配を消す魔道具を持たせていますので。資金につきましては調査中に判明した犯罪組織を襲撃しまして確保しています」
「なるべく人死には出すな。特に治安組織の人員に手は出すな。身内を傷付けられれば本気で追跡されるぞ。それと例の件はどうなっている?」
「陛下からの情報が限られておりましたので難航しておりましたが、それらしき人物の居場所の特定が出来ました」
「そうか、引き続き何時でも接触出来るように監視を頼む」
「了解しました。細心の注意を払わせます」
地球 日本国 某県 某警察署 警備課
「それで、気になる報告とは?」
「はい。最近の管内の情報で要領の得ない物が増えています。具体的には『無人の建物に人が居る感じがする』、『見かけない他所者を見かけるようになった』、『単独交通事故で大怪我をした筈なのに誰かに応急措置をされていた』、『誰も居ない方向に犬が吠えた』等といった物です」
「ほとんど疑心暗鬼によるものだな。平成に某国による拉致事件が公になってからは一時期は同様の通報が頻発した。某国の工作員が入り込んで居るのではないか?とな」
「では、やはり何者かが居るのでは?刑事課からも暴力団や特殊詐欺犯の秘密アジトが何者かに襲撃されたのではないか?と内偵を進めていると同期が内密に教えてくれましたが」
「これだけでは何とも言えんな。平成当時もほぼ通報は思い込みによる誤報だった。被害は発生していないのだろう。とはいえ火のない所に煙は立たない。引き続き気にはしてみなさい」
「分かりました」
地球 日本国 某県 某家庭
「あなた。最近変わった事無かった?」
「うん?どうした?」
「最近気のせいかもしれないけど、家の中で人の視線を感じる気がするの。それに買い物の時に視線を感じて見たらあなたの以前の部下さんたちみたいに姿勢の良い女の人と目があった気がするの。ここ最近の事よ」
「う~ん。心当たりはないけどな。視線も感じたことは無いかもな」
「そうなの。私の思い違いかしら」
「何かまた気になることがあったらすぐに言ってくれ。あまり続くようだったら昔の伝手で調べてもらおう」
いよいよ物語も大詰めです。




