317話 大事の前の大事 5
3~4月は忙しくなりますので投稿出来ないことも出てくるかもしれませんが申し訳ありません。
ゲシュタルト王国 都市マクドナルド 早朝
「敵の攻撃が来るぞ~!!」
都市の防壁の上で守備隊がテンダー王国軍の攻撃を警告する。
一千程の歩兵が都市の防壁へと押し寄せる。防壁の上には三百程の守備隊が迎撃態勢を取っている。
「弓隊よ~うい!ライフル隊は温存する。距離200mで弓隊は射撃開始!」
そう指揮官が指示している間にも敵歩兵は駆け足で接近している。
「距離220m、弓隊構え~!!・・・・・距離200m、放て!」
100程の矢が放たれる。
「ぐっ!」
「がはっ!」
20程のテンダー王国兵が矢を受けて倒れ伏す。他にも矢を受けた兵は居るが前進を止めない。
「コイツら薬物でもやってんのか?思ったよりも士気が高い」
「連絡が入った!援軍が間もなく到着する。ヤマト公国軍に情けない所は見せられんぞ!押し返して見せろ!!」
「「「オオオオオオッ!!」」」
生き残ったテンダー王国兵が長梯子をかけて来る。都市の防壁の高さは約5m、約6mの長梯子が幾つもかけられて敵兵が昇ってくる。
(※しかし、ファンタジー映画に出てくる長梯子はよく折れないものだと度々(たびたび)思う)
防壁の上からは矢や石、熱した油がテンダー王国兵の頭上に降り注ぐ。
「$☆§∞¥%#!!」
油を頭から被った兵が梯子から転げ落ちる。
「良し、良いぞ!どんどんや・・・」
ドコンッ!!!
「何の音だ!?」
ドカンッ!!
大きな爆発音がしたかと思うと防壁の一部が守備隊の兵士と一緒に吹き飛ぶ。
「なっ・・・・!あれはまさか!」
守備隊の指揮官が絶句する。彼はゲシュタルト王国の王都ゲイボルグの防衛戦にも参加した経験が有った。
「大砲だと?何故そんなものがここにある?」
部下の守備隊員が走って来る。
「隊長、敵の本隊二千が接近しています!」
「ライフル隊も応戦しろ!」
ドコンッ!ドコンッ!ドコンッ!!
砲撃が連続する。その度に防壁が破損する。
「大砲は何門有るんだ!!」
「ここからは見えません!恐らく敵の本陣の中に隠蔽されているのでは?」
タン!タン!タン!
ライフル隊が発砲を開始した。
カン、カン、カン!
敵の本隊の兵に向かって放たれた銃弾が弾かれる音がする。
「金属製の盾だと?国境での小競り合いでライフルの存在を知ったのか、対策も?くそ!全部の兵が盾を持っているわけでは無い。姿が見える敵を撃て!」
テンダー王国軍 侵攻軍本陣
「捨て駒部隊は囮の役目を果たしたようだな。イスマル皇国の遺した爆裂筒を投入しろ。敵の目は囮に向いてる、本隊を前進させて爆裂筒で援護するのだ」
侵攻軍の将軍が命令を出す。命令を受けて音楽隊が太鼓やラッパを使ってメロディーで部隊に指示を伝える。伝令のような複雑な指示は無理だが事前に打ち合わせておけば伝令が走るよりも早くに伝わる。
ヤマト公国の影響は大なり小なりに周辺国へと変化をもたらした。自分の軍を増強し、他国に侵攻して国力の増強を図るもの。ヤマト公国軍に対抗するための手段を編み出すもの。様々だった。
この3か国の侵攻も実は、ゲシュタルト王国とヤマト公国の蜜月を妬んだ国が実行役だが、裏では更なる他国が対ヤマト公国軍対策の装備が銃器を持つゲシュタルト王国にどのくらい効くのか試す実験のために3か国を唆したのもあった。
その国はその為に、イスマル皇国の遺した爆裂筒のレプリカや鉄板に傾斜を施した盾やそれらを使用した戦術までも供与していた。実際に各地の戦場にもその効果を確認する間者が入り込んでいた。
ゲシュタルト王国 都市マクドナルド
「くそ!先陣の一千も排除出来ていないのに本陣の二千が崩れた防壁へと向かっている。敵は総数は四千だが全てが戦闘員では無い。だからこの三千は敵の総力だろう。・・・・他の方面の守備隊のライフル隊も呼び寄せろ!」
守備隊の隊長は他からも兵力を集めるつもりだが、この方面の防壁の上には一千も集まることは出来ない。だから攻撃力の高いライフル兵だけを集めるようだ。
しかし、この指揮官もまだライフルの運用に長けてはいなかった。ライフルは弓よりも射程距離は長い、弓隊よりも先にライフル隊が射撃を開始すべきだったのだ。
しかし、敵の戦力の殆どは防壁に取り付いてしまっている。銃器の射程を活かす利点は既に失われていたのだ。
「ヤマト公国軍はまだ到着しないのか!!」
思わず指揮官は周囲の兵にあたってしまう。
「この都市に設置されていた無線機は侵攻と同時に侵入した敵により破壊されています。唯一残された王都との有線ですが試験的なもので確実ではありません。1時間前の通話では既にこちらに向かってはいるそうですが」
情報収集の役割を担う士官が報告する。
「このままでは・・・・」
ズズ~ン!!
遠くで爆発音がする。もぬけになった敵の本陣が有り砲撃陣地が有ると目された地点で黒煙が上がっている。
「あれは!」
指揮官の目には遠方に浮かぶ黒点が映っていた。
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