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314話 大事の前の大事 2

今回も宜しくお願いします。

 「国境線で既に戦闘が始まっているのか」


 軍事省の職員の言葉をマコトは反芻する。


 「ゲシュタルト王国側からは連絡は来ているのか?」


 以前から周辺国との小競り合いが絶えないということで連絡を密にすることは事前に取り決めてあったのだが。


 「王国には我が国とのホットラインは存在しますが、王国内には通信手段が有りません。その為に前線からの報告も以前通りの伝令頼りです。王城に伝令到着の知らせを聞き王城待機の職員が情報をまとめて報告しましたが、現在はあちらは諸侯の召集をしているのでは?」


 軍事省の職員がそう予見する。ヤマト公国からゲシュタルト王国に対して様々な技術協力の申し出があったのだがゲシュタルト王国内の一部の貴族がそれに反対しており、戦時の共闘体制も儘ならなかったのである。


 「国境の防衛には義父であるアレグレア公爵の肝いりでライフル銃が優先的に配備されている筈だから早々に抜けられる事はない筈だが・・・」


 「陛下、(いくさ)で、たら、れば、は禁物ですぞ」


 他の軍事省の職員が苦言を述べる。


 「そうだな。我が国の情報機関はどこまで状況を把握している?」


 「は。3か国は各々の国境から侵攻し国境近くの王国の規模の大きな都市を目指している模様です。恐らく、都市を占領して交渉材料にする狙いが有るかと」


 「つまり、敵国は本気で戦争をする気はなく、あくまでも王国からの富の確保が目的なのか」


 「陛下のご想像の通りかと」


 「では、侵攻をしている軍を叩けば後詰めは無いな。空中艦とそれに搭乗する陸上部隊を3個編成せよ。王国から援軍の要請があればそれぞれのセンジョウに1個部隊を派遣する」


 「陛下、部隊規模、作戦に要する日数はいかが想定しましょう?」


 「1個部隊、空中艦3隻、地上部隊1500。期間はそうだな、2週間を想定してくれ。艦の種別は任せる」


 「了解しました」


 「ああ、そうだ。1部隊は自分が直々に指揮する。現場指揮官に基本は任せるが、旧宗主国の援軍に公王が居なければ格好がつかん」


 「それは、そうですが・・・・」


 コンコンコン


 執務室の扉が再び叩かれた。


 「入れ」


 マコトが入室許可を出す。今度は外交省の職員だ。


 「ゲシュタルト王国の件だろう?直接報告せよ」


 「はい。ゲシュタルト王国より援軍の要請がありました。現在、アレクサンドラ王国、マカ王国、テンダー王国の3か国から侵攻を受けており公国にはマカ王国、テンダー王国の侵略軍を叩いて貰いたいとのことです」


 「アレクサンドラ王国、マカ王国、テンダー王国?聞き慣れん国々だな?」


 「あの辺りは、以前にゲシュタルト王国への侵略をした国々やその支援国があったのだが撃退されて国々の国力バランスが崩れて戦国乱世になり、いくつもの国が滅んでは新興国が出来たのだ。おそらく、その国々だろう」

 

 「新興国が歴史有る大国に(いくさ)を仕掛けるとは命知らずな」


 「しかし、何故アレクサンドラ王国へは対処しないのだ?」


 執務室にいた各省の職員達が困惑する。


 「アレクサンドラ王国は我が国からは遠いので王国で単独で戦う、とのことですが恐らく我が国に功績を立てられ過ぎることを嫌った貴族達の思惑でしょう」


 「ハイマン国王や義父の苦悩が目に浮かぶようだ」


 マコトもため息を吐く。


 「命令に変更は無い。3個軍を編成する。1個軍は待機だ」


 「既に事前に準備は出来ております。部隊の編成・召集、物資の積み込みも1日有れば明日にでも出撃可能です」


 「では、外交は明日にでも援軍を派遣すると王国に通達するように。あと文書でも軍監でも良いので公国が援軍だと証明出来るものを用意して貰うように。下手すると王国から国境の兵への連絡より早くに公国軍が到着して誤解されかねん。証拠はヘリで受け取りに行けば直ぐだ」


 各省の職員達は納得したように頷く。


 「他に何か意見の有る者は?では作業に取りかかれ。関係ないような部署にも思わぬ問題我起こるものだ」




 公都ノースガルド 公城 公王生活スペース


 「マコト様、ゲシュタルト王国で戦争と聞きましたが本当でしょうか」


 マコトが居住区域に戻ると、普段はそれぞれの公務を行っている2人の公妃、元アレグレア公爵令嬢ミナサリア、元王女アナスタシアが戻っていた。マコトも秘書官から妃達が帰っていることを知らされたのだ。


 「アリシアさんも軍団(レギオン)の視察案件を終えられたら戻って来られるそうです」


 他国の公妃となったとはいえ家族の居る国での戦争だ彼女達が困惑するのも無理は無い。


 「戦争は事実だ。現在3か国と戦争をしている。国境での戦いで王都ゲイボルグまで戦火が及ぶ事は今のところ無い。しかし、アレグレア公爵は武勇に(ひい)でた方だ。もしかすると前線に居るかもしれない」


 アナスタシアは喜んで良いの分からずかぎこちない笑顔を浮かべ、ミナサリアは部下の制止を振り切って前線に出ようとする父を思い浮かべたのか苦笑いをしている。


 「自分も明日には軍を率いて援軍に向かうアリシアを含めて3人で公国を守って貰いたい」


 ミナサリア、アナスタシアはマコトの言葉を聞き無言で頷き、3人で抱き合う。


 「ああ!!ちょっと!私を除け者にして何仲良くしてるの!」


 ちょうどアリシアも帰って来たようだ。


 「アリシア、聞いてると思うが自分は明日出征する」


 「ええ、分かっているわ。ちゃんと帰って来なさいよ。何かおかしな雰囲気だし」


 「おかしい?」


 「ここ最近、魔物の公国内での被害発生が減少傾向だったのにここ一週間で右肩上がりなのよ。現地の報告も見たけど繁殖力の強いゴブリン種だけでなく強力なオーガなども確認されてる。勘だけど人為的ね」


 「例えば?」


 「軍の巡回が比較的少ない、小中の村落や荷馬車が主に狙われているわ。しかも、発生場所は公国と王国の国境の反対側ばかりよ」


 「確かにきな臭いな、今回の敵国か若しくは協力国による破壊工作の可能性も有るな。軍の巡回を強化させよう。ありがとうアリシア」


 「国のことは残された人間でなんとかするから、早く帰って来なさいよ」


 そう言うとアリシアはマコトに抱き付いてキスをする。


 「あああ、アリシアさん抜け駆けですよ!」


 「ちゃんと順番は守って下さい!」


 「へへ~ん!これは情報の対価だから嫁協定に違反しませんよ~」


    





 


 


 

毎回ですが読んでもらいありがとうございました。感想、評価、いいね!ブックマークなど頂けると励みになります。感想は豆腐メンタルなのでお手柔らかにお願いしますm(_ _)m

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