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312話 大事の前の小事 5

本日は三連休の中日です。仕事柄、連休と関係がないので忘れていました。なので今日、明日と連続的投稿がんばります!

 チコ王国での作戦から3日後 ヤマト公国公都ノースガルド


 公城内 公王執務室


 「陛下、チコ王国の偽王から『公国の軍が王国の砦を攻撃した』と抗議の使者を送ってきております」


 秘書官からマコトは報告を受けている。


 「『公国の使用する武器の残骸も確保している。損害を補償して賠償しろ』といった内容ですな」


 秘書官も(あき)れ顔だ。巡航ミサイルの残骸を見つけたとしても他国の技術力ではそれが何処の国の物か分かろう筈も無い。理解出来ない物は公国の物だろう、という当てずっぽうだ。今回は正解だが。


 「勝手に言わせておけ。戦争で白黒付けたければ受けて立つ、と言ってやればいい」


 マコトは興味も無さそうに言う。


 「それよりも、チコ王国の前王との関係の有った国々に今回の件を暴露(リーク)しろ。砦の地下で撮影した映像を使用しても構わん」


 この異世界では、王候貴族というものは戦場で討ち取られたのでもなければ、人為的な死は服毒によるものが(いさぎよ)いとされていた。


 実際、この世界には地球の中世フランスで生まれたギロチンのような物は存在していない。そこで王候貴族が死のうとする時、又は殺そうとする時にはサムライのように腹を切り、介錯を頼んだりはしない。


 仲間や家来に首を切るように頼むこともない。純粋に苦しまずに首を落とす剣も、技術も持つ者は数少なかった。


 縄で首を吊る者も居なかった。首吊りは息が出来ずに窒息するだけではなく、吊るされた衝撃で首の骨が折れて死ぬ者も居るのだ。その際の無惨な遺体の様子はプライドの高い王候貴族を刺激した。


 その点で毒物は種類にもよるがパッと見は生前の容姿が保たれていることからどうしても死が避けられぬ時は『尊厳有る死』、と思われるようになった。(毒物によっては苦悶の表情を浮かべたままだったり、見た目にも現れるが)


 そんな風潮の中、チコ王国の反乱勢力は旧王派を無惨に殺害することにより国内の反対勢力を恐怖により押さえ付けようとした。これは周囲の王候貴族達からすれば、


 『何、あの野蛮人達?』


となる訳だ。


 そこをマコトは利用することにした。反乱勢力も旧王との血縁関係に有る者達が居るだろうが周辺国にも婚姻関係により無数に存在するのだ。そんな彼ら、彼女らは自分達のルールも守れない者達が隣国に存在するのは不快だろう。


 そこでマコトは彼らにチコ王国の反乱勢力を討伐する大義名分を与えようというのだ。


 「そのように情報工作を行うよう、外交部と情報部に伝達します」


 秘書官の1人がそう答える。


 「問題はこれだ」


 マコトは報告書の山に目をやる。


 「3ヶ年計画で、『地球』への進出計画を策定したがやはり性急過ぎたようだ。各所からの練度についての意見書が上がって来ている。実戦は数度の訓練に勝ると言うが現在はその実戦を極力避けている。これでは差が出るのも無理は無いか」


 マコトはため息を吐く。国力拡大の内政が戦闘力を頭打ちにしているのだ。


 「しかし、国内で魔物に対する軍事行動などは継続しているのです。その懸念はすぐに解消されるのでは?」


 他の秘書官が意見する。


 「生死のやり取りという点ではそうだが、魔物は複雑な作戦は立てない、飛び道具をあまり使用しない、降伏しない、交渉しない。その他にもあるが魔物と人間相手の戦いでは得られるものも違ってくる」


 再びため息を吐く。


 「計画を延長し、ある程度の軍事力を得た時期で戦争をして練度を高めるか。公国は軍事国家だ。兵が張り子では意味がない。しかし、大義名分が無いと難しい問題だな」


 「その点ですが、陛下。お耳に入れたいことが」


 主に外交に関する秘書官が発言する。


 「友好国ゲシュタルト王国に対する周辺国の態度が悪化の一途を辿っています。我が国のかっての宗主国ということもあり経済、軍事などの面で交流を深めておりますが差が広がる周辺国からの嫉妬が原因のようです」


 「具体的には?」


 「国境での関税の不当な増額、領界を巡る小競り合い、先般我が国でも発生しました軍事機密の流出被害の増大などが有ります」


 「・・・そうか」


 「現在のところ、致命的な流出は無い模様ですが緊張感が高まっています。直ぐにではありませんが遠からずに軍事衝突に発展する恐れが有ります」


 「分かった、ありがとう。取り敢えず3ヶ年計画は延長し、国力の増強を進めつつ友好国で軍事衝突が発生すれば積極的に介入する方針を取る。次回の会議の議題にも取り上げるつもりだ。本日は解散する」


 マコトの執務机の回りに集まっていた秘書官達は隣接する秘書官室に戻ったり、他の部署に連絡のために解散する。


 「還る手段が整いつつあるというのにままならなならんな。しかし、急いては事を仕損じる。万全な状態で還ってやる!」


 そう言いつつマコトは1枚の写真を手にする。暫しの間を写真を見て電話をかける。


 「ああ、自分だ。関係国に情報提供する情報だが妹姫と御付きの画像はなるべく秘してあげてくれ。頼む」


 受話器を置くとマコトは椅子に深く座り黙祷する。











 


良いな?と感じてもらえましたら、いいね!ブックマーク、評価、感想をお願いします。特に乾燥剤を一言でも良いのでお願いします。でも酷評は控えて下さいまして心が折れますのでww

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