311話 大事の前の小事 4
今回は少し長めです。あと少し残酷気味の描写が有ります。
チコ王国 反乱勢力の砦 地下牢
地上部で数人の兵士を処理した後は他の兵士と遭遇することなくマコトと親衛隊員達は階下へと向かう階段を程なく見つけ出し地下へと降りていた。
砦の地下牢ということもあるのか、一国の姫ぎみを捕らえておけるような貴人用の豪奢な牢ではなく石造りの埃っぽい冷え冷えとした牢であった。
「流石に見張りは居るか」
曲がり角でマコトは首だけを出して先を確認する。因みにこの暗視装置、アニメに登場するようにレンズ部分が緑色や赤色に光ったりなどしない。
マコトがスキル、異世界マーケットで仕入れたアニメを知っているオタクの古参の元軍団の兵などは敵をビビらせる、と改造を求めたが、
『敵に見付かったら元も子もない。やるなら自分独りの時にやれ!!』
とマコトの雷が落ちると声を潜めた。因みに地球の物と同様かは不明だが、手鏡に映したものを見ても暗視装置の効果は落ちなかった。しかし、視界はとれないので敢えて今回は首を出して偵察をした。
『見張りは2人。机に座って酒を飲んでる。自分とお前で殺る、残りは階段の警戒を』
マコトは声を潜めて親衛隊員の1人を指名して減音器使用の拳銃を構えて歩き出す。残った3人は階段を降りてくる敵が居ないか警戒をする。
コツ、コツ
と石造りの床に消えない長靴の足音がする。しかし見張りは酒を飲んでるせいか気付かない。
《自分は奥を殺る、手前を殺れ》
ハンドサインで目標を指示する。見張り達は机に向かい合って座っており片方はこちらに顔を向けて、もう片方は背中を向けている。相方が頷く。マコトは見張りまで10歩程の位置で立ち止まり狙いを定める。
「う、うん?」
こちらに顔を向けている見張りが怪訝な声を出す。
「どうした?」
「いや、酔いすぎたか?階段の蝋燭の灯が少し見え無えなか・・・」
パスン パスン
マコトは最後まで言わせなかった。同時にもう1人の見張りも頭を撃ち抜かれて机に突っ伏している。発破と同時に前進して2人で死角に敵や扉が無いかを確認する。
地下牢は階段を降りる細い通路があり、その先に大きな部屋があるが凹型に牢が並んでおり、窪んだ場所に見張りが居た。机以外には酒瓶の入った小箱、剣、そして便所用の小部屋の扉・・・。
壁には鞘に収まった剣が3本立て掛けてあり、空席の椅子が1つ!!
パスンパスンパスンパスンパスンパスン
2人がかりで粗末な木製の扉に弾丸を撃ち込む。
ドサリ
小部屋の中で何かが倒れる音がする。
ギイ
相方が扉を開くと見張りの兵士が全身蜂の巣になって死んでいた。
「クリア」
「クリア」
他に敵の気配が無いかを確認して異常無しの声を出す。そして見張りの死体の腰から牢の鍵を回収する。どうやら使用されている牢は2つのようだ。
1つ目の牢の鍵を開ける。しかし、
「駄目です」
そこに目標が居た。しかし、相方が首筋に指を当てて脈を見るが首を横に振る。牢の鍵を開ける前から室内が見えていたが見張りが死んでも騒がずに床にうつ伏せになっていたのだ。
顔写真などは入手していなかったがライア姫から聞き取りした特徴と一致。衣装や装飾品から見ても間違いないと思われた。乱暴をされた形跡が見てとれてその暴行により死亡した、と推測された。
「司令」
階段で警戒していた3人のうち2人が来て隣の牢を確認していたが、そちらも同様のようだった。マコトに呼び掛けて首を横に振る。入って居たのは持ち物などから姫ぎみの侍女2人と思われた。
「悪いが、遺体は持ち帰れない。遺体の顔写真、特徴等の撮影と遺品の回収をして撤収する」
マコトは辛い判断をする。
「司令、目標達は死亡していたのになぜ見張りが居たのでしょうか?」
作業をしながら1人が疑問を口にする。
「頻死の状態を放置していたのか、これが罠だと言う可能性も有る。死体にも交渉の価値が有ると考えたのか、それとも・・・・死体愛好家という唾棄すべき可能性も有る」
親衛隊員達、今回は全員女性だったが嫌悪の気配をマコトは感じた。
「罠の可能性はないだろう。それならばもう階段の通路には敵兵が押し寄せている筈だ。回収は出来ないがせめて身なりは整えてあげてくれ。彼女達は何も言えないが今は男に触れられたくはあるまい」
そう言うと、マコトは遺体に黙祷して目線を反らす。身なりを整えるのにも肌を晒すことも有るだろう。
『こちらにキング1から待機中のスネーク109(輸送ヘリコプター、アナコンダのコールサイン)』
『こちらスネーク109、キング1どうぞ』
『地下の為こちらの携行無線機では無理なので今回の作戦司令部に要請を頼む。作戦失敗。作戦計画第3案を発令する。と』
『作戦計画第3案の発令を要請。了解』
『頼んだ。以上キング1』
瞳に暗い灯を宿し、マコトは通話を終える。
「作業の進捗具合は?」
「終了しました」
「では脱出する。30分にこの砦を滅却するために大型巡航ミサイルが発射される」
「・・・・!それは!」
声を挙げかけたが遺体の処理をしていた親衛隊員達は口を噤む。1人の隊員は見張りの死体に更に弾を撃ち込む。
「速やかに行動する!」
マコトはそれを黙認し最後に3人一緒になるように移動された姫達に最敬礼をすると階段に走り出す。他の親衛隊員達も最敬礼して走り出す。階段で警戒していた5人目と合流する。
侵入した経路を辿り速やかに砦から脱出する。途中で運の悪い見回りの兵士が2人居たが全員の一斉射撃で蜂の巣にされた。
砦を無事に出ると外で退路を確保していた最後の1人と合流すると砦が見えるギリギリの距離まで退避する為に移動する。
『スネーク109からキング1』
『キング1だ、どうぞ』
『巡航ミサイル8発が3つの基地から発射された。ほぼ同時に着弾するようにされているそうだ。到達まで後5分』
『了解した。そちらとの合流地点に間もなく到着する。着弾を見届けてから離脱するので来てくれ』
『・・・・そうか。了解した』
『以上、キング1』
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