310話 大事の前の小事 3
今回も宜しくお願いします。
チコ王国作戦部隊~ヤマト公国軍作戦司令部
『更なる作戦の実行要請だと?』
『お姫様からの要請なんです。妹ぎみを救出して欲しいとのことです』
『今回の姫様の救出作戦でさえやむを得なく行ったんだ。姫様を連れて帰って来い!』
『了解しました』
司令部は妹のミリア姫の救出作戦を拒否した。
『待ちなさい』
回線に割り込んだ人物が居た。
『へ、陛下!』
『その妹姫の救出は私の部隊で行こう』
『陛下、私の部隊というのは?』
『現在、国内の巡察を行っているが偶然にチコ王国付近の国境周辺の施設を訪れていた。護衛に親衛隊も居る。私が行こう、だが姫にはこれで最後だと念押しするように。例え母親の安否が判明しても公国は動かない、と』
『・・・・陛下?本当に巡察ですか?』
『・・・・・・』
『確かにあの周辺にはチコ王国から伸びる鉱石の鉱脈が存在しますが陛下が態々(わざわざ)視察に行くほどの優先順位では無い筈ですが?』
『・・・・・・』
マコトは無言になる。
『わざとでしょう?ねえ?(怒)』
『何とか言ったらどうですか?ねえ?(笑み)』
立て続けに問い詰める。
作戦司令部の指揮官は無線機越しにも分かる怒気を発していた。
『以上、通信を終える』
『あ、待ちなさい!(怒)奥様方に言いつけますよ!』
マコトは通信を切って逃げた。
『ええっと、私達はどうすれば?』
チコ王国の作戦部隊の長が漸く発言する。
『ライア姫からの情報は戦術ネットワークにあげたな?なら君達は帰国しろ』
『陛下の援護は必要ありませんか?』
『親衛隊が居るなら必要無いだろう。帰って来い、以上』
チコ王国内 反乱勢力の砦
「彼処にチコ王国の第二王女ミリア姫が囚われて居るという情報だ。敵の数は不明だな」
「司令、久し振りの作戦ですね」
「軍団時代を思い出しますね?」
「当時の皆は偉くなりましたし、忙しいですからね」
「昔話は後にしよう。まずは砦に潜入しミリア姫を確保、その後に砦を脱出する。迎えは新型の輸送ヘリコプターアナコンダが待機している、それで脱出だ」
「「「「了解」」」」
ライア姫救出から丸一日後 深夜
「前進」
月明かりもない暗闇で5人分の闇よりも深い影が蠢く。
「砦の東西南北の壁面上に兵が1名ずつ居ます。司令の正面の壁面上から反時計回りに仕留めていきますので2分後から突入して下さい」
6人目の影、数百m離れて待機している狙撃手が無線で報告する。
「了解」
5人が暗視装置を装着する。
トサッ
壁の上で何かが倒れる音がする。
「ワイヤーガン」
1人が進み出て鉤付きのワイヤーの発射装着を構える。
ボスン!
ワイヤーガンが発射されて砦壁面上の胸壁の凹部に鉤が引っ掛かる。
ワイヤーを引っ張って引っ掛かりを確認する。スルスルと5人が壁面を登る。マコトが壁面上に立つと足下には鎧兜の兵士が頭を撃ち抜かれて死んでいた。
『壁面上の敵兵は始末しました。他に敵影無し』
『了解した。これより砦内部に突入する』
『こちらは退路を確保します。武運を』
5人で縦1列で砦内部に突入すると敵が居ないかのクリアリングをしながら進んで行く。
「やはり敵兵を確保して姫の居場所を吐かせるか」
「では次に遭遇した敵を捕らえましょう」
「「了解」」
ガチャリ
突然、扉が開き灯りが漏れる。
「食糧庫から酒持ってくらあ!」
「上役に見つかるんじゃねえぞ!」
「こんな陰気な場所、酒でも飲んでなけりゃやってられるかって~の!」
どうやら砦の兵士達が酒盛りをしているようだ。
《出てきた奴を俺がやる。残りを殺せ》
マコトがハンドサインで後続に伝える。
パタン
扉が閉まる。
タタタタタッ!
マコトが小走りに走る。
「うん?誰だ?」
酔った兵士が足音に気付き振り返るよりも早くマコトが男の口を塞いで喉にナイフを当てる。
タタタタタタタタタタッ!!
背後から減音器で抑制された銃声が鳴る。
「おい、王族の姫ぎみ、何処、居る!」
男にドスの効いた片言のチコ王国語でミリア姫の居場所を聞く。
「*?#☆%¥、*?∞★§$♩!!」
男の兵士はチコ王国語で早口に喋る。
「姫はこの建物の2階下の地下室に居るそうです」
室内の残りの兵士を排除して追い付いた親衛隊員が通訳する。
「じゃあ、もう用は無いな」
そう言うと、マコトは兵士の喉を掻き切る。
「ゴボ、ゴビャ!」
兵士は呼吸をしようとして、口と傷口から血を大量に吐き喉を抑えて倒れた。
「こんな事にも慣れてしまったな」
血まみれで倒れる男を見下ろしマコトは独白する。
「地球に帰還する目処がたち感傷的になっているのか?」
手の血を見る。
「司令?」
親衛隊員が促す。マコトは血を戦闘服で拭う。
「ああ、お姫様を迎えに行くぞ」
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