309話 大事の前の小事 2
今週も投稿することができました。
チコ王国王都郊外
「門番からの報告が確かならばこの辺りに不審者が隠れて居る筈だ」
「しかし、上も考えましたね。わざと王都を賄賂が使って脱出しようとする輩を敢えて門で捕縛せずに門の外に追いやってから始末するとは。お陰で不穏分子が門の警戒はザルだと入れ食いですな」
「王都を脱出するような奴らだ。逃走用の資金や金目の物を懐に隠し持っているしな」
「お前は金だけじゃないだろうが!好き者が」
ガッハハハ!と下品に男たちは笑う。隠れて居る者達に気付かれるとは考えないのか?連絡員の女は会話に耳を澄ましつつ情報収集を続ける。
「しかし、兵隊の足りない貴族様達に取り入って少しの上納金を出すだけで兵隊の真似事をする事が出来るようになるとは上、お頭も善くやるもんだ」
「そうそう、王都のはみ出し者だった俺達が今じゃ大手を振って表道を歩けるもんな!しかし、お頭の上手い所は上納金もちょろまかしてるらしいぜ」
「バカ、んな事は身内以外が居るかも知れん所では言うな!」
「良いじゃねえか、聞いた奴も皆殺しにしちまえばいい」
「・・・・ゴロツキどもか」
会話の内容から男達は正規の兵士では無く内乱を引き起こした勢力の引き込んだ有象無象の輩の連中のようだ。日本で言うところの半グレや暴力団の準構成員のようなものか。
「しかし、数だけは居る。先制したとしても不利か」
夜間とはいえ少しは星明かりも有る。本来であれば曇り空だった筈だが急に天候が変わってしまった。応援が来るまでは隠れて居るしかない。連絡員が姫達の所へ戻ろうとした時、
「きゃあ!」
姫達が隠れて居る筈の場所から悲鳴が聞こえる。
「声がしたぞ!」
「ゲヘへへ、女の声だぜ!」
「何処だ、何処からした?」
武装した集団が騒ぎ出す。
「チッ!」
連絡員は思わず舌打ちする。まだ正確な場所は露見してないようだが大体の方角がばれてしまった。連絡員は姿勢を低くしたまま姫達の場所へと戻る。
「どうしたんですか!」
思わず問い詰めるような口調になる。お付きの女性が横になっている姫を揺すぶっていた。
「姫様が、恐らく蛇に・・・」
悲鳴をあげたのは蛇に噛まれた姫だったようだ。もう蛇はいないようだが姫の呼吸が荒い。
『影103からスネーク09、敵にこちらの存在が露見した。それと救出対象が負傷、おそらく動物毒。世界樹の雫の準備を頼む』
『スネーク09了解。もう到着した』
シュカカカカ!!
武装した集団の方角から抑制された銃声がし出す。
ドサ。
連絡員達が隠れて居る場所に誰かが降り立つ。
「影109か?世界樹の雫だ」
エルフの公国軍兵士だ。公国でも希少な魔法の使い手で高高度のヘリから落下速度を落とす魔法で降下してきたようだ。ヘリの音がしなかったのは高高度で待機していたようだ。
兵士はライア姫に対して注射器様の器具で万能薬たる世界樹の雫を口から飲ませる。
シュカカカカ!シュカカカカ!
「くそ!敵なのか?誰が殺られた!」
「そこで何か動いたz・・ぐはあ!」
「応援を呼べ!」
周囲では男達が掃討されていた。
5分も経たずに周囲は静かになった。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!
多目的ヘリコプターバイパーが降下してきた。
「これが、脱出手段?」
お付きの女性に付き添われた姫、ライア姫がヘリを見て驚く。彼女の父王や叔父は国の改革を進めていたがこのような異物は見たことが無かったようだ。
「途中で燃料補給・・・休憩をしますが、これでヤマト公国まで向かいます」
連絡員がライア姫とお付きに説明をする。その間も4人の兵士が周囲を警戒していた。
「こ、こんな時に言い出すのもお恥ずかしいのですが、妹、ミリアが近くの砦に囚われているのです。一緒に連れ出していただくことはできないでしょうか?」
ヤマト公国の軍事力を再認識したのか、ライア姫がそんなムチャ振りを言い出した。
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