308話 大事の前の小事 1
少し気色が変わります。
国力を増強するための様々な施策をマコトは行った。軍事力、経済力、工業力、医療、教育を地球基準で素人考えながらも進めて行く。
そんな中、周辺国との政治的関係も構築していく。援助は行うが軍事的な援助は行わない方針であった。
ヤマト公国 公都ノースガルド
「近隣の小国、チコ王国で動乱?」
「はい。以前に我が国を訪問し、急遽緊急手術を受け一命を取り留めた同国の王弟が高い医療技術に感動していました。現国王の兄と改革を進めていましたが同国の医療を担っていた地方宗教の教会が信者を煽り反乱を起こしました」
「一部の貴族も参加し、王党派を次々と捕縛し次第に処刑しているということです。今チコ王国は粛清の嵐です」
情報部のダークエルフの連絡員が2人で情報を報告する。
「あの国は希少金属の鉱脈の可能性が指摘されていて関係の構築を進めていたところだな」
「はい。我が国との関係が良いということで交流が順調で経済的にも向上していたところです。反乱を起こした貴族はその利権に目をつけたのかもしれないです」
「その貴族どもは我が国の心象を損ねると考えないのか?」
「そこまでは・・・・」
ドンドン!
マコトの執務室の扉が叩かれる。
「情報部の者が入室許可を求めています」
「許可しろ」
1人のダークエルフが早足で入室する。
「チコ王国の王党派の粛清が加速しています。そして現国王の子供の1人、第一王女のライアが国外脱出を求めて我が国の連絡員と接触して来ました!」
「現在何処に居るんだ?」
「王都の商家に偽装した我が国の隠れ家に潜伏しています。現場の判断です」
「・・・・そうか。軍事的な介入は避けたかったが仕方ないな。どうするか」
「現地の地方宗教の教会に圧力をかけるというのは?」
「こういう過激な集団は反って強硬に出るかもしれん。王都の郊外に脱出させて夜間にヘリコプターで救出することは可能か?」
「・・・・・軍事的なことは断言できませんが、脱出は可能ですが他の要人は如何します?」
「一度に全員を救出は無理だ。まず第一王女を確保して情勢を見極める。沈静化するなら穏便に済ませ、泥沼化するなら介入するしかないな」
「すみません。部下が勝手をしまして」
「イヤ、自分でも同じことをしただろう。連絡員に何時でも脱出出来るように伝えておくように」
「了解しました」
2日後 深夜1時 チコ王国王都から180km ヘリ乗員室
「今回の任務は要人の救出作戦だ。王都の郊外で目標を拾い脱出する簡単な任務だ」
「敵は?」
「現在のところは確定情報はない。しかし、王都の治安組織が反乱に加担したとの情報がある。更に反乱軍の部隊も王都に入っているという情報もある。重要人物である第一王女が逃げるとなると使える兵力を全力で投入するだろう」
「救出する人数は?」
「3人だ。現地の連絡員、王女本人、王女の付き人。他に質問は?」
「「「・・・・・」」」
「よし、常に死角を潰せ」
「「「了」」」
1時間後 チコ王国王都郊外
「迎えはまだなのですか?」
「現在向かっています。しかし、先程の門番の視線、何か・・・・気付かれたかもしれない?」
「ねえ?」
「どうしましたか姫様?」
「馬の鳴き声がしたような気がします」
「ここは王都に入る商隊が門が開くまで夜営する場所も近いですからそこの馬では?」
王女の付き人が答える。
「いえ、陽があるうちに確認したところこの辺りは水場が無くて商隊ならもう少し先に夜営するはず・・・」
連絡員は暗視装置を取り出す。
「・・・!!武装した集団、約10。声を出さないで!」
100mほどの場所に騎乗した兵士と歩兵が居た。
連絡員は無言でリュックサックから短機関銃と減音器、弾倉を取り出す。
『影103からスネーク09』
『スネーク09だ、どうぞ』
『敵勢力約10が付近を通過中。至急来て下さい!』
『・・・・了解。あと10分で到着する』
『急いで!』
連絡員、彼女は情報部所属だが普通の人間だった。短機関銃の先端に減音器を静かに装着する。
「良い?ここから動かないで!」
そう言うと連絡員は少しでも遮蔽物の陰になるように匍匐して射撃位置へと移動した。
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