307話 富国強兵 7
ズルズルと前振りが続いていますが、そろそろ次の章へと至ります。
ヤマト公国 公都ノースガルド 郊外の大型工廠
「今、ここには何艦有る?」
「駆逐艦が4隻、巡洋艦が1隻、輸送艦が3隻です。大型戦闘艦は主に他の工廠にて建造中です」
「ふむ、そこを含めると何艦だ?」
「空母2隻、戦艦5隻、巡洋艦8隻、駆逐艦20隻、輸送艦20隻、その他の小型艦30隻、特務艦が6隻と私は把握していますが、私の知らない工廠もあるのでは、陛下?」
「否定も肯定もしない」
「・・・・まあ、そうですよね。先程説明が有ったと思いますが、艦隊旗艦となりうる大型艦の建造場所も私は知りませんし」
マコトと会話している工廠の責任者は何度目かのため息を吐く。
「・・・・。情報管理も必要だ。貴官を信頼しない訳では無いが他国が我が国の軍事力を推し量らんと貴官に危害を加えて情報を得ようとも限らんからな。まあ、他国の技術力でこの知識を理解出来るとも思えんが」
マコトは責任者を気遣うように言う。
「例の目的の為にも今現在建造中の艦は確実に完成させるようにしてくれ」
「了解しました」
ヤマト公国 領海内の某群島 非公開基地
「・・・・忙しいな。視察ばかりだ。仕方ないけど」
マコトが思わず愚痴を漏らす。
「陛下、どうかされましたか?」
「イヤ、何でもない」
基地司令官とその兵、マコトの護衛兵の集団がコンクリート舗装された基地内を歩く。
沖には小型の哨戒艦、上空には早期警戒機、地上には緊急発進に待機している戦闘機まで居る。この島以外の小島には偽装された砲台も有るという。
そこまでして隠しているもの、それは・・・製造、蓄積されている兵器、軍事物資の山だ。
戦車、軍用車両、小銃、砲、戦闘機、軍用ヘリコプター、軍艦から衣料、弾薬、砲弾、燃料、食糧、医薬品、嗜好品の数々まで。
この群島の島々の地上、空港、地下にはありとあらゆる物資が詰め込まれている。
工場、工廠で製造された物資は各地の訓練施設に送られ教育、訓練に使用される。しかし、全ての物資が送られる訳では無い。残された物資はその全てがこの群島へと送られている。
地下には車両・航空機群、空港には空中艦隊、地上には物資の詰まったコンテナが積み重なっていた。マコトはそれらの状態を視察しながら歩いて行く。
この島の兵力は物資の管理の人員、警戒の為のローテーションを回せるだけの必要最低限の人員しか配置されておらず、この群島に輸送を担当している部隊も信用のおける者しか使わずこの群島は味方にも隠匿している。
地下エレベーターで地下の施設へと向かう。
チン?
どこか抜けた音がしてエレベーターの到着を告げる。
地下エレベーターの扉が開くとそこには軍事車両群が見渡す限り並んでいる。他の階層には他の車両や航空機が同じように並んでいた。
空港には様々な艦種の空中艦が少し浮遊して並んでいる。この重量の艦体が地上降りると自重で破損しかねない。そこで待機している艦は動力を最低限稼働させた状態で待機している。
この島には前線に出ていない艦が全て集まっている。その数137隻。
その為にも地上には警戒の為のレーダー施設を除き建築物は存在しない。島の周囲は他の群島に囲まれており、物理的、視覚的にも外界から隔絶している。
「この島が他国に勘づかれた可能性はあるか?」
マコトは基地司令官に尋ねる。
「不審な中~大型の帆船を3隻撃沈しました。浮遊物等を調査した結果他国の商船だと判明しましたが船主を調査したところ、この海域に来るような者達では有りませんでした。しかし・・・」
基地司令官は言い淀む。
「他の海域にも不審な船舶が出没しているとの連絡が他の部署からも受けております。この海域だけが疑われているわけでは無いでしょうが、この海域でばかり行方不明船が増加すると疑念を抱く者が出てくるでしょう」
「ふむ、では他のいくつかの海域で偽の立ち入り禁止海域を定めよう。演習、魔物の出没、理由は何でもよい。侵入者は撃沈する。偽の海賊を用意して我が海域、公海、隣接する国の領海を荒らさせてもよいな。なんとしてもこの基地の存在が露見することはならない」
「ハッ!!」
「こららの物資は他国との戦争には使用しない。全ては『地球』へと至る為に」
「「「『地球へと至る為に』!!!」」」
この基地の主要構成員は秘密を知る者達ばかりだ。
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