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306話 富国強兵 6

 ヤマト公国 公都ノースガルド 某研究所


 「ここか。例の者達が居るのは」


 マコトが案内係の将校に尋ねる。建物内は地球の一般に思い付くような白い壁塗りの明るい室内だが明かりは全て電灯によるものだ。窓も無く、開放的な雰囲気では無い。


 至るところに監視カメラが設置され、大きな扉ごとには拳銃若しくは散弾銃と警棒で武装した兵士が立哨している。マコト達の後ろを歩く兵も散弾銃で武装している。


 「はい。彼等の重要性を考えれば軍の施設内で秘密裏に保護するしかありませんし、彼等もそれを望んでいます」


 案内係の中佐が答えた。


 「この部屋が主な研究室になります」


 中佐が立ち止まり、ある部屋を示す。


 「陛下、我々も居りますがくれぐれも油断なきようにお願い致します。おまえ達も準備は良いな?」


 中佐は武装した部下達にも確認する。兵士達もその問いに頷き返し、了解の意を示す。


 「それでは解錠(・・)します」


 そう言うと中尉が壁の指紋認証機に指を当てて扉を開く。





 室内ではこの世界では見ることの無い白衣姿の人間達が十数人居て、互いに議論したり、図面を引いたりしていた。


 「陛下、陛下はご承知の事と思いますが陛下のもたらされた技術を我々は『そういう物だ』と漠然的に考え、『利用』はしても『理解』はしていなかったのです。しかし、そのような状況に私を初めとした一部の者達が疑問を抱きました。『それで良いのか?』と」


 中佐は部屋を見渡す。


 「我々は陛下に技術の研究、開発を行う部門の設立を上申しました。しかし、予算がついても肝心の技術者足り得る人材が居なかった!我々の社会レベルはお聞きしている陛下の世界と比較してあまりにも低すぎたのです」


 中佐は首をいかにも無念そうに横に振る。


 (演技下手だなぁ)


 マコトはそう思った。


 「しかし、我が国が時おり入手する魔物の魔石の見学に来ていた魔導工学技士達が我が国のパソコンや無線機などの電気製品に興味を持ったことにより人材を多く確保することが出来ました!」


 ここで中佐を補足すると、強力な魔物から時おり回収される魔石は強大な魔力を含んでいる。魔力というものは種族ごとに多少の差があるがどの種族も魔力を魔法として発現することが出来る段階の者はほとんど居なかった。


 これは、ほとんどの人間が一生、自分の国の国王に出会うことが無いレベルで魔法使いの人数が少なかった。しかし、魔石はその魔力を魔方陣や魔法装置といった物を通して誰でも使用することが出来た。


 そこで、魔石をいかに効率的に使用していくかを研究する魔導工学という学問が生まれたのだった。魔方陣作成時の回路図、魔力を発現する為の装置の図面、そういった科学工学に近い知識を持った者達がこの世界にも居たのだった。  


 そういった者達が、ヤマト公国の魔石の研究をすると同様に科学工学の研究を進め始めたのだ。


 「それで、今は何の研究を行っているのだ?」


 「はい。魔石を2個使用した大型空中艦の設計と飛龍(ワイバーン)等の比較的体温が低く、動きが素早い対象にも適したミサイルの開発です」


 「おお、それは凄いな!こう、研究している!って感じだ!」


 「喜んでいただき、嬉しく思います。しかし、特殊な思想を持った者も居り、管理には慎重を要します」


 「そうだな。情報を他国に持ち出されたりするのも問題だな。しかし、あまり管理、管理としめつけ過ぎて研究者達の反感を買わないように留意するべきだな」


 「了解しました」


 「あと、他国に出て行かれるのは困るが、他国で魔石が無いことから魔導工学に行き詰まっておる者達を招致して研究者を増やすのも手だな」


 「!!!そうですな。一から育成するよりも時間がかかりません。そのように情報部とも協議してみます」


 「頼むぞ。あちらに行った時に我が軍の装備があちらのコピー品のようばかりでは困るからな。まあ、品質が著しく劣るという訳でも無いがこちらの世界ならではの装備も大いに持ち込みたいものだ」


 「公王陛下!私の考えました自爆装置で敵に体当たりして敵にコウゲキする魔導動甲冑の開発予算を・・へぶシ!!」


 マコトの存在に気付いた研究者の1人が自分の研究予算の上申に走り寄って来たが、護衛の兵の散弾銃のゴム弾を喰らって仲間の研究者達に引き摺り戻されていた。


 「君達も大変だな」


 マコトは中佐を(ねぎら)う。


 「ありがとうございます。しかし、あれは大人しい方です」


 そう言うと中佐は遠い目をしていた。







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