305話 富国強兵 5
内政編もそろそろ頃合いです。
ヤマト公国内 某都市郊外
とある地方都市の郊外に整地された土地が広がっていた。
「右、右、左右、左!」
「左、右、左、右、左!」
中年の下士官の号令に合わせて50人程の兵士が行進している。掛け声に合わせて左右の足を前に出して行く。
見渡せば他にも同じような集団がいくつも行進の訓練をしている。
???
「ここでは約500人の新兵が初期訓練をしているのだな」
「はい、10程の小隊に別れて訓練を行っています。現在は、基礎体力、集団行動の段階です、陛下」
地方までマコトが視察に訪れていた。
「訓練場も限られていますから、10の小隊でローテーションで使用しています。この都市で受け入れ出来る兵は500人程ですのでこの状況です。初期訓練が終了すれば戦闘訓練に移行予定です」
「訓練用の武器弾薬は既に都市内に搬入されているのか?」
「私は現場担当なので詳細は知りかねますが、そのように聞いております」
「ふむ、訓練部隊の指揮官に管理の徹底を指示せねばならんな。公都での報告のこともあるしな」
「では、そのように取り図っておきます」
マコトに付き従っていた視察団の随行員が反応する。
訓練場の視察を終え、都市内の部隊施設を視察して行く。
「このような都市に隣接した訓練施設は他に今は幾つ設けられている?」
マコトは、視察団の者に問い掛ける。
「はい、ここと同じ大規模のものが20箇所、200~300人の中規模のものが50箇所で約2万の兵が新規に訓練を行っています。5ヵ年計画で兵力を10万増員する予定です。陛下の計画までに全ての兵力を揃えることは出来ませんが、軍の増強は必要ですので」
「・・・・そうか」
剣や弓を扱える兵を揃えるだけならばもっと早期に数を揃えることが出来るが、この世界で未知の武器である銃火器を扱える兵を揃えるには時間がかかる。
過ぎたる力は、傲慢な心も呼び起こす。そうならない為にも技術、体力だけでなく精神面でも教育を行っている。
「陛下、この街での視察は終了しました。次の都市へと向かいましょう」
「分かった」
訓練場と都市を挟んで反対側にも平地が広がっておりヘリ部隊が暖気をして待っていた。バイパー多目的ヘリが4機、地球のCH47チヌークに似た新型大型輸送ヘリ、アナコンダが2機待機していた。
別の中規模都市郊外
「右方よ~し、左方よ~し。撃ち方よ~し!」
射撃統制官が射場を確認する。射撃班長達が合図を返す。
「撃ち方始め!」
パン、パン、パン、パン、パン!
それぞれが射場に伏せた兵が5発ずつ発砲する。50m程離れた的に10人ずつの兵が自分の前の的に発砲しては弾痕を確認して行く。
兵が使っている銃はマコトが導入を考えていた6・8mm弾を使用した試作24式自動小銃だ。
5・56mm弾では魔物には少々威力不足、7・62mm弾は魔物には十分だが人間相手には過剰、弾の運搬には少々手間だ。
なので中間を取って6・8mm弾の導入を進めていたが、今回の改革を進める中でその検証も進めていた。ベテランの兵の評判は良かったがやはり弾の規格の統一には慎重な意見が多かった。
そこで、弾丸の改良も進められていた。言うなれば対人間用の通常弾、魔物用の徹甲榴弾だ。大袈裟かも知れないが魔物の外皮を貫き、体内で炸裂するように改良されているのでその名がついた。
現在の訓練で使用されているのは実戦でも使用されるのと同じ通常弾だ。
「よ~し今日の訓練の締めだ。弾倉に10発込めろ。連射の体験をしてもらう!」
「・・・・!」
兵達は無言で弾倉に弾丸を込める。
「右方よ~し、左方よ~し!撃ち方よ~し!」
射撃統制官が確認する。
「撃ち方始め!」
パパパパパパパパパパン!!
小銃には、単射、三連射、連射の3パターンの発射機構が付いている。その中の連射機構を始めて兵達は使用した。
「的、確認!」
的を確認した兵達が不満の声をあげる。ほとんどの弾が的に当たっていなかったのだ。
「良く分かっただろう!連射は牽制、威嚇には良いが命中率はあまりにも良くない。弾を節約するにも普段の戦闘は単射か三連射を使用するように」
射撃統制官はそう訓練を終えた。
「陛下、新兵の訓練はいかがでしたか」
「実技は悪くない、だが、武器の力に負けないように精神面も鍛えるように訓練官達に伝えるようにしてくれ」
こうして、ヤマト公国は国内の力をどんどんと増して行った。
正月早々に大きな災害、事故が発生しました。現地にて被災された方、様々な形で救援に行かれた方達の無事を祈願いたします。




