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304話 富国強兵 4

正月特番です。

 ヤマト公国内 荒野  


 キャタ キャタ キャタ キャタ


 荒れ地に無限軌道の音が響く。そこには、1輌の凹凸の少ないしかし重厚な戦車が存在した。


 『24式重戦車、《防人(サキモリ)》評価試験を開始します』


 ゴオン!ガゴン!


 荒野のそこかしこでゴーレムが起き上がる。


 『石人形(ストーンゴーレム)三体、これらの攻撃を回避し撃破して下さい』


 荒野に何処からともなく先程からアナウンスが流れる。


 ドン!ドン!ドン!ドン!


 ゴーレムが戦車を敵と認識したようだ。その足を使いどんどんと接近していく。


 ブオオオオオオン!!


 戦車のエンジン音が大きくなる。戦車の主砲が三体の内、先頭を行くゴーレムに向けられる。


 フォーン!


 何かの音がしたようだ。次の瞬間、


 ガゴォォン!


 先頭のゴーレムが形を維持出来ずに崩壊する。それを見て意思を持たない筈の二体のゴーレムは足を止めて落ちていた岩を手にする。接近戦から遠距離戦闘に切り替えたようだ。


 戦車の上部は次の目標を求めて旋回する。砲塔を目標のゴーレムへと指向する。


 フォーン!


 また、音がする。それと同時に岩の投擲体勢に入っていたゴーレムが崩壊する。しかし、


 ヒュン!


 残る一体のゴーレムが岩を投擲する。岩は100m程の距離をかなりの速度で飛翔していく。


 砲塔が旋回し、岩を捉える。次の瞬間に、


 ガガガガ!ガガガガガン!


 戦車の主砲とは違う何かが連続して発射されて岩を破壊する。続けて主砲が残った最後のゴーレムに狙いを定める。


 フォーン!


 三度(みたび)目の音が響き、逃走しようとしたゴーレムが撃破される。


 ビー!!


 サイレンが荒野に響き渡る。


 『評価試験終了しました。目標を完全撃破、関係者は会議場へと15分後出頭して下さい』




ヤマト公国内 第13射爆訓練場 通称キヤマ演習場会議場


 「皆さん、お疲れ様です。これで『防人(サキモリ)』の実地試験を終了します。まず評価官、今日の結果についての報告をお願いします」


 「はい、では皆さんこちらの時系列をご覧下さい」


  10:03 評価試験開始


  10:04 標的ゴーレム起動


  10:06 ゴーレム1体目 120mm電磁投射砲(レールガン)

        にて撃破


  10:07 ゴーレム2体目 120mm電磁投射砲(レールガン)

        にて撃破


  10:08 飛来した岩石を12・7mm機銃にて撃破


  10:08 ゴーレム3体目 120mm電磁投射砲(レールガン)

        にて撃破


 「・・・となります」


 会議場がざわめく。


 「早いとは感じていたが、開始5分でゴーレム3体を撃破、損傷無しだと?」


 「他国の正規軍ならば騎士団でも苦戦するレベルの敵性戦力だぞ」


 「前世代の20式『鉄亀』よりも動きが良いのでは無いか?」


 『お静かにお願いします』


 マイクで先程から進行をしている女性が静止する。


 「技術班、『防人(サキモリ)』について簡単に説明をお願いします」


 1人の若い男性技官が立ち上がる。


 「はい、武装は基本的に120mm砲、12・7mm重機関銃になります。砲ですが敢えて電磁投射砲(レールガン)と申しませんでしたのは陛下から『装甲目標なら十分だけど軟目標だとどうするんだ?』と意見をいただきまして電磁投射砲(レールガン)も通常の炸裂式砲弾も使用可能な仕様となっております」


 技官は水を口に含む。


 「新式の兵器ですが私共はこれを『共用砲』と名付けましたが普段は普通に『新式砲』と言っています。装甲につきましてはドリンドルにて採掘されました希少金属を使用しまして従来型よりも強固となっております。動力もディーゼル式ですが設計を見直し、燃費と馬力の向上に成功しております。絶対とは言えませんが、鉄亀2個小隊と防人1個小隊が戦闘になったとしても勝利する、と思われます」


 またしても場がざわめき出すが先程の女性が止める。


 「今までの実験、訓練のデータ、今日の結果は既に陛下にも報告が上がっている。陛下より『鉄亀を約1000、防人を約500、増産、生産せよ』とのお言葉をいただいている。各自はおのおのの職責で生産、運用についての準備を進めてもらいたい。以上だ」






 「カノ親衛隊中佐!」


 先程の技官が司会進行役女性を廊下で呼び止める。


 「なんでしょうか」


 「各地でこの訓練場のような場所で装甲車両や輸送車両の開発、改良、増産。他にも技術者のネットワークで不穏な情報があります。何か国際情況で懸念事項があるのでしょうか?兵士を守る兵器を設計する者としても気になるのです」


 「それは貴方が気に為さる必要はありません。その権限も与えられていない筈です。好奇心は猫をも殺しますよ?」


 「・・・・く!」


「それにあなた方はその内にそれどころでは無くなります」


 「それはどういう事ですか?」


 「先程の陛下の生産命令はほんの一部です。あなた方はその内に休む暇もなく対応に追われることになるでしょうね。では」


 そう言うと、女性将校は迎えに来たヘリに乗り込み去っていった。






 

 

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