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303話 富国強兵 3

もう少し前置きが続きます。

 ヤマト公国内 某山野 深夜


 「畜生!何人残ってる?」


 「分からねえよ!バラバラに逃げてるからよ」


 「何なんだよ、あの黒い奴ら!アジトにいきなり現れやがって仲間を殺りやがって!」


 「それよりも、早くここから逃げんぞ!じゃなきゃ俺達まd・・・」


 「何だよ?はっきり言えよ!」


 生き残った男、野盗の生き残りは先程まで会話していた仲間を振り返る。


 「・・・・!!」


 そこには喉を刃物で切り裂かれた野盗の男が木を背に座り込んでいた。


 「クソ!もう追い付きやがったのか!?何処だ、何処に居やがる!」


 生き残った男は暗闇に向かって手にした剣を振り回す。


 「俺は殺られやしないぞ!来るなら来やがれ!返り討ちにしてやる。俺だって元は正規の兵士だったん・・・!!」


 野盗の男は背後から口を塞がれ素早く喉をナイフで掻き切られた。




 「終わったか?」


 「ああ、俺達の担当区域に逃げて来た賊は全員始末した。賊のアジトの方は終わったのか?」


 「此方(こちら)にも少し来たが、数人が逃げたが全員仕留めたようだな。後はアジトの奥に首領他数人が立て籠っているようだ」


 「じゃあまだ警戒態勢は解除されないな」


 「この地方で最後に残った大きめの盗賊団だったからな。少しは警戒していたんだろうな。見せしめに幾らか生け捕りにして処刑するらしい。まあ手間取るようならアジトごと爆破するだろう。ん?」


 「こちらでも聞こえた。アジトを制圧したようだな。撤収だ」


 「死体は不死者(アンデット)にならないように別の班が始末するらしいから俺達は次の盗賊団潰しだな。何処だった?」


 「知らん。この地方の主だった賊は全滅したから次はかなり離れた地域になるだろう。もしかしたら次は賊では無く魔物かもしれんな」


 そう言うと、闇の中の黒尽くめ男達は姿を消した。


 マコトは来るべき日に向けて国力の拡充だけでなく、国内の不穏分子、賊、魔物の掃討を進めていた。



 ヤマト公国 公都ノースガルド


 「動くな!公国軍だ。動くと死ぬぞ!」


 公国の公都ノースガルドの商店に兵士が突入する。


 「何だ、てめえ等!ここがダメ商会だって分かってn・・・」


 パパン!!


 店の用心棒らしき男が撃たれる。


 「抵抗するな!全員床にうつ伏せになれ。他の動きをすればお前らもこうなるぞ!」


 身体から血を流し、床に倒れる用心棒を示して兵士が叫ぶ。


 「これは何事ですかね?ウチはゲシュタルト王国の大貴族様と関係も有るのd・・・」


 パン!


 「がああああ!!」


 「警告が聞こえないのか!次は急所を撃つ!」


 商会長らしき偉そうな男が出てきたが兵士に右足を撃たれて倒れる。


 「隊長!地下倉庫がありましたが鍵がかかっています!」


 「破壊しろ」


 ガッツ!!


 銃床で原始的な錠前が破壊される。


 「突入!」


 盾を構えた兵士を先頭に兵士が地下室へと降りる。


 ガッキン!


「射たれた!(クロスボウ)が2!」


 「制圧射撃」


 タタタタタタタタタタン!


 銃声が鳴り響く。


 「制圧(クリア)!他に敵影なし」


 「捜索を継続!」


 兵士達が商会内を隈無く調べる。


 「隊長!此方(こちら)に来て下さい!」


 地下室を調べていた兵士が声をあげる。隊長が向かうとそこには開けられた中型の木箱があった。


 「・・これか。さっきの責任者らしき男を連れて来い」


 小隊の隊長の命令で足に応急措置を受けた偉そうな男が引き摺って来られる。階段の段差も引き摺られてかなり痛がっている。


 「おい、お前。この木箱は何だ?」


 偉そうな男は顔を(そむ)けて喋らない。


 ボクッ!!


 小隊長が男の頬を殴る。


 「何だと聞いているんだ!」


 「わ、儂は知らない!預かっていただけだ、何も知らん!」


 「(クロスボウ)で武装した男達が守っていた部屋に有った物について店の者が知らんと言うのか!見ろ!」


 小隊長は木箱の中身を男に突き付ける。


 「我が軍とゲシュタルト王国軍にしか無い『短機関銃(サブマシンガン)』だ。何故これがここに有る?軍の関係機関以外が所持していれば即死罪ということはこの国の者ならば当然知っているな!」


 「知らないものは知らん!」


 「ち、親衛隊に引き渡せ。彼女達ならば喋りたくなるようにするだろう」


 「し、親衛隊!?止めろ、止めてくれ!本当に知らんのだ」


 「知らんとしか言わんな。もういい、連れて行け。他に禁制品が無いか詳しく調べろ!」


 小隊長は捜索継続の指示を出すと外に行き、建物の隙間の物陰で煙草に火を着ける。


 「出たようですね」


 小隊長の隣にいつの間にか顔を隠した。ダークエルフの女性が居た。


 「・・・・ふん、情報部か。依りにも寄って『銃』が持ち出されるとはどういう事だ?状態を見るに過去の戦役でやむなく残置した物、といった物では無さそうだが」


 「最初期に近い貴方には少しお話ししましょう。どうやら内部で不届き者が居たようです。2度は無いでしょう」


 「最初期を含め俺達には『公国』に背けないように『誓約』が為されている筈だ。どうなっている。本当の意味の『最初のメンバーの奴隷団員』で有るあんたならよく分かっている筈だ」


 「そこは、『貴方が知らなくてもよい事だ』と言っておきましょう」


 「くそったれが」


 「まあまあ、腐らずに。お手柄なのは間違いありません。『陛下』からもお言葉があるでしょうし」


 「『陛下』か。司令も偉くなったな」


 「大丈夫ですよ。あの人はあの人のままです」


 「ククク、そうかよ」


 「ではこれで」


 「ああ、達者でな」


 ダークエルフの女性は再びいつの間にか姿を消した。


 「隊長、禁制品の薬物が出てきました!」


 「ああ、畜生、仕事が増えやがる!」


 小隊長、元、軍団(レギオン)葬送曲(レクイエム)の団員だった男は仕事へと戻って行く。






 


 


 




 

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