300話 宣言
遂に動き出します。
ヤマト公国公都 ノースガルド 公城内某所
「今回の緊急召集は一体何なのだ?」
「都の郊外でこそこそとしていた奴らが最近、動きが慌ただしくなっているのと関係があるのか?」
「何だ、ソイツらは。軍関係者なのか?」
「数年前からマコト司令の密命を受けた連中らしいが、流石に何をしていたかまでは知らん」
「我ら最古参の軍団の団員にすら知らされていない任務か」
「戦争前ですら幹部クラスの全員に召集がかかることなぞ有ったか?」
「お前が知らんのだ。そんな事なぞ今まで無かった」
「聞いた話しだが艤装中の艦まで動員がかかるようだ」
「間もなく時間だ。急ごう」
密談をしていたエルフの高官達は歩き出した。
公城内 閲兵場
ざわざわ
数百のヤマト公国の高官達が集まっていた。
「静かにせよ!!」
閲兵場に設けられた高台のスピーカーから音声が出る。
「ヒイラギ陛下が来られる、傾注せよ!」
静
場が静まり返る。高台の階段を1人の男が昇ってくる。黒い軍服に制帽を被り、顔を覆う黒い仮面を着用している。
『諸君、こうして面するのが初めての者も、久方ぶりの者も居るだろうな。自分が君達の指導者たるヒイラギ・フォン・マコト・ドリンドルだ。そろそろヒイラギ・マコト・ヤマトに改名するべきかな?すまない、少し気分が高揚しているようだ』
マコトの声は、マイクも使わずに場に響き渡っている。仮面に仕込まれているのだろうか。
マコトは仮面に触れる。
『この仮面も自分の高揚している顔を隠す為だ。男のニヤケ面など誰も見たくないだろう?』
マコトはおどけたように話す。しかし、高官達の中には何処か残念そうな表情を見せる者達が居た。
『先日、とても重要な知らせが入った。そう、とても大事な情報だろうな。これから話す話しは公国以前、自分が冒険者として軍団を率いていた頃にも一部の者しか知らなかった事だ』
マコトは勿体ぶる。
『自分はここでは無い世界を知っている。国が、大陸が違うという話では無い。我らの知っている常識の通じない全くの別の世界だ』
マコトの発言にざわめきが広まる。
その事を知っていた者達が公表に戸惑う声、全く知らずに突然の情報に理解が追い付かずに戸惑う声、様々だ。
『そして、今回・・・・その世界に通ずる道が開かれた』
「「「「!!!!!」」」」
声にならない驚きが広まった。
『我が公国はこの大陸でも有数の国土、経済力、軍事力を有する強国へと成長を遂げた。皆のお陰だ。その力をもって異世界と通ずる事も可能と自分は判断した』
マコトは高官達に情報が浸透するのを待った。
『その世界の民と我々は、友好的に対面するのか、矛を交えるのか?それは自分にも分からない。しかし、自分は我々ならば、君達ならばどのような事態にも対応出来ると信じている。3年間だ、3年間かけて我々は異世界へと旅立つ為の軍事的、経済的な準備を開始する。この事は他国、友好国たるゲシュタルト王国さえにも秘密裏に行う。その為に君達には協力してもらう。これは何事にも優先する。予算を確保し、兵器を生産し弾薬を備蓄し、兵を鍛える。同時に交易を行えるように物資の生産、備蓄も行うのだ』
もともとマコトの、ヤマト公国を信奉している者達だ。目的を示されて自分達の役目を果たそうと、未知への期待に目を輝かせている。
『他国への援助、支援は継続する。しかし領土拡大などを目的とした軍事侵攻は行わない。3年で今の国力、軍事力を倍増する事を期待している。以上だ』
マコトは高官達を見渡す。
『特別にこの場で1つだけ質問を受けよう。何か聞きたいことはないか?今回のことに関係無いことでも良いぞ?自分は今、機嫌が良い』
高官達は互いを牽制するかのように顔を見合わす。
そんな中、1人の若い女性文官が挙手する。周囲の視線が集中する。
「城勤めのマリと申します。陛下、その世界には『名前』があるのでしょうか?」
その場で息を飲む音がする。
『ふむ、そうか。名称が有った方が事情を知る者達で情報交換が容易になるな。その世界の名は【地球】だ』
大幅な方針転換となります。賛否両論有ると思います。是非とも感想をお願いします。




