30話 凱旋
マコト達は、オークジェネラル達の死骸をアイテムボックスに収めると、3・5tトラックをアイテムボックスから取り出して、乗車した。
冒険者ギルドの斥候とは別れを告げて葬送曲のみの帰還である。
ドリンドルの街に近付くとマコトは、ドワーフの2人に白金貨10枚1000万円を預けると街の馬車ギルドに向かわせ、荷台が良く見えるオープントップの荷車を
10台借りて来させた。
そして残りの金で、中央広場で花売りの少女達を雇い準備を整えた。
3・5tトラックにはオークジェネラルを、その他の荷車にも討伐したオーク達を山盛りにして、ドリンドルの街へと出発したのだ。
ドリンドルの街は騒然となった。
人を襲い、男性は食料として、女性には暴行をする悪夢の代名詞とも言われるオークの群れが討たれ、上位種までもが、屍を晒しているのである。
花売りの少女達が、花びらを撒き散らし、吟遊詩人がそれを成し遂げたのが、新興の軍団、葬送曲であることを喉をはらして歌い踊る。
マコト達団員はそれぞれの武器を手にトラックや、荷車の脇を行進する。
まさしく凱旋であった。
熱狂は、車列が冒険者ギルドに到着するまで続いた。
冒険者ギルドでは、ギルドマスターのモーラスが苦笑いで、待ち受けており、車列の到着と同時に待機していた解体部門のマーカスらが査定を始め、オーク53体
、白金貨106枚1億600万円!!等と叫ぶと、羨望の叫び声が上がって、オークナイト2体で白金貨8枚800万円、オークウィザード白金貨4枚400万円、
オークジェネラル白金貨10枚1000万円と叫ぶと、そのような怪物が討伐されたことに歓喜の声が上がった。総額白金貨128枚1億2800万円が告げられると、レクイエムの名を民衆が繰り返し叫び出した。
盛り上がりが最高に達した頃、マコトはトラックの荷台に登り、数件の酒場の名を告げると今夜一晩店に有るだけの酒を飲み放題だと告げた。1000人近くに達していた群衆の半分近くが、酒場に突進し、残った女性や、子供達にも一生口にすることの無いであろう。チョコレートや、クッキー、飴が振る舞われた。
外はそんな風に賑やかになっていたが、冒険者ギルド1階の酒場も盛り上がっていた。冒険者達がレクイエムの祝福をしていたからだ。中には女性エルフにセクハラをしようとして袋叩きに遭っている馬鹿者も居たが。
そんな中、ギルドマスター室内に集まった、モーラス、マコト、アリアの3人は静かに酒を飲んでいた。
「しかし、マコト君も思い切ったことをするね。まさか一般の人まで巻き込んでお祭り騒ぎにしちゃうなんて、お金かかったでしょう。」
「白金貨50枚5000万円程ですよ。酒場にはあらかじめ連絡をしておいて安くて量のある酒を大量にストックしてもらっていましたし、肉類は腐る程ある。」
「しかし、これでこの街の人間はレクイエムの名を忘れない。それを考えれば、安いモノだと?」
「安くはありませんが売名には有効な手かと。」
「しかし、これでレクイエムの名は広まり、住民の腹は充たされ、ギルドも食肉の転売で儲かると、皆が幸せになれて結構なことだね。」
「まさにWinWinの関係ですね。」
「ああ、それと、マコト君とアリシア君は2人ともBランクにランクアップ決定だよ。おめでとう。」
「ありがとうございます。このような関係が続くことを願っております。」
「ギルドマスター、指名依頼の方の進捗状況はどうなっています?」
「レクイエムの前回と今回の大量の食肉の確保のおかげで大分楽になっているようだよ。他の冒険者達も頑張ってくれているしね。商業ギルドも資金を出してくれて、トリアージ草の採集依頼を一時的に報酬増額にして確保を急いでいるから、2ケ月も掛からずに食肉の安定供給が出来るようになる筈だよ。」
「そういえば、今、この国ゲシュタルト王国はエルフの国、アレフガルド王国と戦争中の筈ですが、凱旋パレードでは、団員のエルフ達に悪感情が向けられることがありませんでしたけど、何故です?」
「エルフ達の故郷はアレフガルド王国だけじゃあないからね。それに、戦況はゲシュタルト王国が優勢だ。何処の出身かも分からないエルフにあたる程、国民は追い詰められていないのさ。」
「食肉の確保の依頼がそろそろ終わるということは、我々も自由に動けるようになるということですね。」
「何か予定でもあるのかい?」
「ええ、団員の増員と育成の強化を考えています。」
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次回更新は2月17日午前7時を予定しています。




