298話 ドワーフの大洞窟 5
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「不死者は順調に討伐されています。懸念された竜の損傷は大したことはありません。大量の不死者の影響で不死竜化が心配されていましたがその前兆もありません。素材の回収にも影響は無いようです」
「ドンナー王国の残存勢力も大洞窟内に入る許可を求めています。都市の損傷を確認したい模様です。しかし、現在は不死者の掃討を継続中で許可は出していません。許可を出す際は財貨の持ち出し防止の為の監視を付けます」
「護衛を同伴した素材回収の工兵隊が出発しました」
マコトの司令部天幕には矢継ぎ早に報告が入る。
「グ王国、カナン諸王国の捕虜が脱走を試みた模様ですが鎮圧されました」
「本国からの決裁を求める書類が送られて来ました。派遣も長期に及び本国からも一時帰国を求める声が上がっています」
「旧ドンナー王国内に散った軍団の冒険者達からは魔物、盗賊の類の討伐の報告が多数きていますが、今のところは各都市、集落では深刻な問題は発生していません。しかし、物流の停滞による食糧をはじめとした消耗品、都市機能の運営に必要な予算が不足している組織も出ています」
マコトは頭を抱える。
「討伐は終了したが帰国は政情が安定するまでは少し難しい。妻達の誰かを一時的に全権委任して帰国してもらおう。不足品は多少費用がかかるかもしれないが、本国から空輸しよう、予算もだ。我が国とゲシュタルト王国共通通貨の『円』はこの国では使用が難しいので国庫から外貨を出すように」
マコトは一息付く。
「食糧など周辺国から購入出来る物は周辺国から購入して輸送費を削減する。ああ、グ王国とカナン諸王国からは購入するな。別途使節団を送って捕虜の身代金と賠償金の交渉を終えるまでは利益供与はするな。あと大洞窟内の兵に居ないとは思うが火事場泥棒に注意するように警告を。本国に旧ドンナー王国の統治の為の官僚の派遣を要請する書類を用意するので次の定時連絡便で送付するようにしてくれ」
オペレーターの1人が報告する。
「陛下、現地の冒険者ギルドからの緊急連絡です。魔物氾濫の兆候が見られる模様です。王国の混乱で冒険者の依頼の為の予算が不足して討伐が行えずに魔物の増加に対応出来なかったようです」
「ああ、もう!!派遣軍から兵力が回せるかを各軍司令部で検討を!あと、王国の残存勢力に至急に各地の兵力の情報を昔のもので良いから提出させろ!大洞窟内への入る許可も出す。早く文官を派遣してもらわないといかんな」
大洞窟内 竜の死骸近辺
「周辺の不死者はあらかた片付きました。無人機からの情報ではこの先の区画にまだ数体がいるとのことです」
「数班向かわせるように。我々はこの場を確保する。ん?アレは・・・」
班長格が接近する人影に気付く。
「お~い!攻撃しないで下さい。生きてる人間です!」
「誰だ、あなた達は」
「ドンナー王国の者ですが司令部からの許可はいただいています。都市部の確認と残された物資の確認に来ました。一応武装はしています」
班長は頷く。
「書類は確認した。しかし、この先にはまだ不死者が彷徨いている。何人か同行させよう」
ドンナー王国人、ドワルは首を横に振る。
「司令部の方から何人か同行してもらっています。こちらには私達が居ることを知っておいて欲しくて参りましたのです」
「分かりました。くれぐれも気を付けてください」
「御武運を」
「班長、我が軍の兵が同行しているならば何故その者達は顔を見せないのでしょうか?」
「一等兵、恐らく彼等に同行している兵は特殊な任務を帯びていると思われる。あまり首を突っ込まない方が良いぞ?」
「ハア?分かりました」
「もうすぐ、工兵隊が到着する。それまでこの場所を確保し続ける。気を抜くなよ」
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