286話 進撃 2
最近はどうにも体調が悪いです。この回の最終手直しをした日は久しぶりに気温が落ち着いて扇風機で過ごせました。早く涼しくなって欲しいです。
『こちら、第3偵察部隊。魔物の群れを確認、大型の魔物については変更無しだが、ゴブリンは上位種も含めて2000はいるものと思料。王城とは14kmといったところだが急造の野戦地図なので10~15と思料する。移動速度は毎時3kmほど、我々はこのまま魔物を追跡する』
マコトは車内で偵察部隊からの報告を耳にする。この無線は参加している全部隊の共通周波数が使われている為に全ての部隊が情報を共有する。
『王城より第1大隊』
マコトと同乗しているオペレーターが先行している主力部隊を呼び出す。
『こちら、第1大隊本部管理中隊通信小隊。王城、送れ』
『総司令官からの命令を伝達する。第1大隊第3中隊前方約2kmにかなりの広さの平らな地形を偵察部隊が確認している。第1大隊は速やかに展開し迎撃態勢を取りつつ司令部の到着を待て、以上』
『通信小隊、了解』
「陛下、我々が現地に到着するまで約15分です」
別のオペレーターが報告する。
「陛下、我々の到着から戦闘開始まで1時間強、といった所ですな」
年配の幕僚が補足した。若い幕僚はどうやらまだ考えがまとまっていなかったらしく慌てていた。
「今回の派遣軍に迫撃砲は同道していたかな?」
「はい、各ナンバー中(第1~3中隊)にはそれぞれ81mm迫撃砲小隊が、本部管理中隊には120mm重迫撃砲小隊が配備されています」
「今回は敵も我々も木の影の多い地域に展開している。迫撃砲の本領発揮といかないだろうが・・・・」
「陛下、そのようなことは前線の各指揮官に任せれば良い、と愚考いたします」
「そうだな。前線で指揮していた癖が抜けないらしい。第1大隊には補給は気にせずに全兵器使用自由を伝達、敵を可能な限り殲滅するように指示せよ」
・・・・16分後
マコトの乗った特別指揮車が到着した。この短時間ではまだ形にはなっていないが一部部隊が警戒にあたり、残りの兵士は円匙でタコツボを掘り出た土を土嚢に詰めていたり、射線の邪魔になる樹木を切り倒したりして野戦陣地を構築していた。
火力のある車両を横陣に配置してその車間を歩兵で埋めている。稚拙だが火力を陣地前面に全力投射すべく考えた方法だ。若い、新兵科、新兵器のある軍隊だけにいろんな試みがある。
野戦陣地の少し後方には大隊の本部が置かれ、バラキュー(擬装網・森林柄)で隠蔽されている。魔物の中にワイバーンがいるのを考慮したのだろうか。重迫撃砲小隊も離れた場所に展開しているようで姿が見えなかった。
「総司令官、入所!」
警戒にあたっていた兵士がマコトの訪問を伝える。
「大佐、報告を」
マコトが第1大隊長に促す。
「魔物の群れはおよそ8kmの距離にまで接近しています。こちらの匂いを嗅ぎ付けたのか逃げること無く移動速度を倍にし、おそらく1時間ほどで接敵します。戦闘は森の切れ目から魔物が姿を現すと同時に砲撃、陣地に接近したならば歩兵を主に対応します。一部取り逃がす恐れがありますがそちらは艦隊が相手してもらえるとのことです」
「大尉、艦隊の規模はどうだったか?」
マコトは同行した若い幕僚である大尉に訊ねた。
「はい、本国からの増援を含め空中空母1、空中巡洋艦1、空中駆逐艦1が同道しております!」
先ほどの車内での出来事を払拭したいのか大きな声で応える。
「そうか。大佐、他に艦隊からの連絡はあるか?」
「はい、つい先ほどですが偵察機を追尾していたワイバーンのうち3匹を撃墜、1匹には逃げられたそうです。艦隊は群れの退路を絶つべく後方に回り込む模様です」
「1匹逃げたのが気になるな。上空警戒の為に航空戦力を派遣させるかな?」
「陛下、でしたら魔導動甲冑部隊を希望します。彼らならば上空にホバリングできますし地上に降下して歩兵とも連携できます!」
「魔導動甲冑が気になるようだな大佐?」
「はい、あれは陸軍にも有益な兵器です。陛下、量産の暁には是非に陸軍に配備して頂きたく希望します!」
「考えておこう」
ドドドドドン!!
陣地に銃声が響く。
「あれは12・7mmか?」
「何処が撃った!敵なのか?」
一部の経験の浅い兵が狼狽える。
「報告!魔物の先遣らしきゴブリン数匹を確認し発砲、一部倒しましたが残りは逃げた模様です」
「来ますな」
「大佐、作業を中断し兵を戦闘配置しよう」
「了解しました」
大隊の将校、兵士達があわただしく動きだす。
そんな中、マコトは少しずつ壁の無い指揮天幕の中の死角方向へと動いて行く。
「何処へ行こうとしているんですか?」
参謀幕僚の大尉と武装侍女に回り込まれた、マコトに逃げられない!
「い~や~、陣地を回って戦闘前に指揮を上げようかと」
「陛下?また兵士に混ざって戦おうとしてませんでした?」
「陛下のこのような場合の対応要領は申し送りで把握しております」
「指揮所にて大人しくしていて下さい」
2人に両脇を挟まれ、長椅子に一緒に座る。
「あの~、離してもらえると嬉しいんだが?」
「「駄目です!!」」
「はい(´ω`)」
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