285話 進撃 1
夏の暑さのせいか、後遺症のせいか身体がまだだるいです。自分の地域は台風5、7の影響は少なかったですが各地に被害が出ているようですが自分は出来ることといえば募金箱があれば多少入れるぐらいです。
『第3偵察小隊、20分前に進発』
『ドンナー王国派遣軍、第1大隊第2中隊、進発します。続いて第1、本部管理中隊、第3中隊続きます』
『空中艦隊発進、先行しています偵察機からの定時連絡異常なしとのことです』
マコトは今回は地上部隊の車両に乗車して移動する。指揮の観点から空中艦隊の大型艦に司令部をおくべき、との意見も有ったが空軍にばかり最高指揮官が身を預けるのは面白くない、との意見も一部で挙がった為にこのようになった。もともとマコトは陸畑の人間である。
特別に改装の施された大型トラックの荷台部分の指揮室内でオペレーター達の報告を聞く。室内(車内?)にはオペレーター4名、幕僚2名、護衛2名、武装侍女1名と通信機器などでかなり手狭だ。
『移動特別指揮車、護衛特別中隊、戦闘工兵大隊、憲兵中隊が進発します』
「陛下、我々も出発致します」
幕僚の1人がそんなことまで伝えて来る。同乗している2人の幕僚は古株と新人の組み合わせで報告したのは新人の方である。人材育成の為にどんどんと若手に経験を積ませているが緊張しているのだろうか。
マコトが無言で頷くとほぼ同時にトラックが動き出す。マコトの座っている座席の前には小さなディスプレイがあり、トラックの前後左右の映像が映し出されていた。この部屋には装甲の関係で窓ガラスが無い為だ。
ディスプレイにはトラックを取り囲むように展開している護衛特別中隊の車両が映っている。通常の中隊よりも増員した増強中隊で陸軍の兵士だけでなく親衛隊の兵士も混じっている。増員された人員で区別化を図っているのか陸軍のオリーブグリーン塗装に比べて黒っぽい車体塗装なので判別出来た。
臨時野戦司令部を発って約1時間、時折に小規模な魔物の群れと遭遇の報告が入り、無線通信が増えるがマコトのトラックが止まることも無く進み間もなく撃破の連絡があがる。平穏な道中だった。
『空中艦隊司令部より、王城、空中艦隊司令部より王城!』
王城とはマコトの乗っている移動特別指揮車の識別名である。
『こちら王城、どうぞ』
『先行偵察機よりの至急の無線を傍受した。どうやら地形の影響で無線が届き難く、高高度を翔んでいる空中艦隊のみが傍受できた模様。無線を中継するが、こちらからの呼び掛けには応答がない』
そう言って空中艦のオペレーターの通話が切れると音声が流れ始める。この内容は周波数の関係で一般部隊には聞こえないようだ。
『こちら風目、王城を起点に進行方向約60kmの地点に魔物の大規模な群れを確認した!構成は下級地竜2、オーガ上位種1、オーガ6、ワイバーン4、ゴブリン300~500。他にもいるが森で全容の把握が出来ない。現在ワイバーンに取り付かれている。偵察の為に武装は無いために撃墜できない、偵察続行の為にコイツらを堕とせる戦力を送ってくれ!鬱陶しい!誰か応答してくれ!』
「・・・・空中艦隊司令部へと通達、空中戦闘仕様の戦闘機を2機を緊急発艦せよ。爆装した攻撃機、魔導動甲冑部隊出撃準備。また全地上部隊に伝達、偵察部隊以外は至急合流して戦闘態勢に移行する。戦力を集中して迎撃する。地上偵察部隊は可能な限り魔物の群れの構成、数、進行方向、王城からの距離を把握せよ」
マコトが矢継ぎ早に指示を出す。無線通信が増大して室内は騒がしくなる。トラックも先行している第1大隊と合流すべく加速を始めた。
「しかし、下級とは言え地竜、偶然なのか?」
そんなマコトの独り言は誰にも聞かれることは無・・・い筈も無く。
「「何かご懸念が?」」
新人幕僚と武装侍女が同音同句で発言して互いに睨み合う。
「我々の討伐目標は洞窟竜、地竜の上位亜種だ。それがどうにも気になった」
「「なるほど!」」
2人はまたしても睨み合う。ちなみ両者とも女性だった。マコトは部下からの過剰なまでの忠誠心にタメ息を吐きつつ手元のディスプレイで情報を検索した。
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