284話 新婚 20
台風がいくつも日本に来ていますね。圏内にお住まいの方はお気を付け下さい。
チュンチュン、チュンチュン。雀に似た異世界の小鳥がヤマト公国軍が建てた簡易小屋の屋根で並んで鳴いている。
中からゲッソリとした顔色のマコトが出てきた。長期間に及ぶ作戦行動の為に天幕よりも居住性の高い組み立て式の住居を今回は持ち込んでいた。防音性、保温性等々は比較にならない。数はいまのところそうは無いが今後は長期間任務の際には投入出来るように試行錯誤中だ。
そんな数少ない部屋を総司令官であるマコトは割り当てられていた(他には病棟など医療施設になっていた)のだが、昨夜は勝手に戦闘地域に来た嫁達を注意する為に防音性もある私室に呼んだところ口で男であるマコトが若い女性3人に勝てる筈も無かった。
新婚早々に放置されたことを武器に日頃の不満をぶつけられたマコトはタジタジとなり、そのまま押し倒されて夜の営みとなってしまった。マコトもそういった経験がこちらの世界に来てから皆無という訳ではなかったが、日本では彼女居ない歴=年齢(本人談)だった性格が突然変わることも無く嫁にも何処と無く距離を置いていたのを察せられていたのだった。
マコトがふらふらと外に出ると、少し離れて立哨していた2人の男性兵士が『昨夜はお楽しみでしたね?』と言わんばかりのにやけた表情で挙手の敬礼をしてきた。マコトは何とか答礼したが『アイツらあとでなんかしてやろう』と心の中で八つ当たりを誓った。
1時間後、身嗜みを侍女の用意した制服を纏って整えて臨時司令部へと赴く(武装侍女隊はやはり付いて来ていた)。いつの間にか周囲には複数の将校が付き従っていた。
「本国から来た冒険者達がドンナー王国の各地に広がり治安の回復や生存していた都市との連絡が広がりつつあります。今回彼等は高機動車、3・5tトラック、装甲車を持ち込んでいますが戦車や火砲の類いは持ち込んでいません。在野の冒険者よりも攻撃力、機動性に優れ我が軍とも連携が取れる為に作戦がスムーズに進んでいます・・」
将校を報告を聞きつつマコトは思った。
『軍と民間の連携ってこれって制度的には進んでいるのだろうか?中世だと騎士団と傭兵が一緒に戦っていたし、日本にも雑賀衆とか居た。近代になると国家総動員法とか言って戦争は主に国軍がしていたけど更に近代化するとPMC(民間軍事会社)とか出てきて軍の下請けとかしていたしこの世界だと将来的に冒険者ギルドが軍の下請けに・・・ってもうなっているな。そもそも地球の軍事事情を異世界に当て嵌めるのが無理筋かな』
「・・・よって我々は停滞していたドンナー王国首都圏への進行を再開します。宜しいでしょうか陛下」
「問題はない」
方針が定義されたことで詳細が詰められていく。航空機(速度の関係で魔導動甲冑ではなくてジェット機)が先行偵察を行い地上の偵察部隊が更に偵察した後に地上の本隊、空中艦隊が前進する。一定の距離ごとに物資集積所を兼ねた小拠点を設けていく。空中艦隊も物資の輸送は可能であるが艦隊は戦闘任務もある。地上には広く公国軍、冒険者達もいるがドンナー王国の街、都市は自分たちのことで精一杯のところも少なくなかった。そこで地上で活動する部隊の為に小拠点が設けられていたのだった。
「編成は終了しておりますが物資の配給、車両の作戦前整備など諸々で進発は明後日の予定です」
将校の報告が終わった。
「諸君、今回は敵国ではなく救援を求める国への大規模な軍の派遣という任務の中でいろいろな問題、課題があったと思う。作戦の最初の段階でこれだけもたついたのは総司令官である自分の責任だ。しかし、諸君はいろんな経験を得ることが出来たと思う。その経験をこれからの公国の為に生かして欲しい、以上」
最後にマコトが発言して会議は終了した。
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