272話 新婚 8
先週はスミマセンでした。今週は2話投稿する予定です。
2人は黙ってマコトの話しを聞いていた。
「・・・・これで以上だが、君達はどうしたい」
マコトは問い掛けた。
「どうする、とは?」
ドンゴが答える。
「同胞を助けに向かう、知人だけでも助けたい、放置する、いろんな選択肢があるとは思う。ああ、意思は尊重するが今の地位を利用した私的な行動は控えてもらうと助かる」
「「・・・・・」」
ドンゴとデンは顔を見合せる。
「『司令』」
ドンゴはマコトを昔の呼び方で呼んだ。
「儂達は犯罪奴隷にされてもしかすると鉱山等で劣悪な環境で使い潰されていたかもしれん。だが運良く他国に渡り、司令と出逢うことが出来て、今の地位がある。国に残されていた家族も呼び寄せることができた。今以上は望むことなどできやせん」
デンも頷く。
「儂も同意見じゃが、今はドンナー王国じゃったか?ドワーフの技術が他国に渡るのは傲腹じゃな。司令、いや公王様よ、どうか他国よりも先に嘗てのドワンゴ王国を併合してくれんか?」
デンはマコトの様子を窺いつつ、
「勿論儂の個人的な感傷による理由じゃあない。技術開発課長・・・意味は分かるが、この呼び方は慣れんな『親方』とかの方が良いんじゃが。まあ、つまり技術開発課長としては技術力のあるドワーフが多い方が今までの技術と新しい技術の融合、開発、検証が捗るんじゃよ。検討してもらえんか?」
そう言うとデンは頭を下げる。隣でドンゴも頭を下げた。
マコトは困惑したように頭を掻く。
「古参の2人が望むなら難民の受け入れや希望する人物の救出、帰国するならその援護を考えていたが国の併合かぁ。国を発展させていく為に知識と経験を持つ者は確かに必要だがドワーフ達はそれを望むかな?あと周辺国家、洞窟竜も面倒だ」
心底面倒くさそうに言う。いろいろあったがマコトも新婚なのだ。もう少し新婚生活を楽しんでイチャイチャしたい。
「司令、あの国には温泉の名所が幾つも在るぞ?」
ドンゴがそんなマコトの思考を読んだかのように言った。
「温泉?」
「違ったかの?忘れてくれ」
「司令、儂らドワーフは新たな技術に触れることができれば満足する。まぁこの国の様々な酒があれば更に言うことない。そもそも国の運営なんてしたくないがバラバラに居ると他の種族からしたくもない仕事をさせられるのが嫌でドワーフだけで集まったのが建国理由じゃから国王もおらんのでそこは大丈夫じゃよ。他国や竜は司令は本当は気にしとらんじゃろうて」
デンは就任間もないとはいえ、公国の技術開発課長として交渉の技術も身に付けつつあるようだった。
「・・・・・・デンもドンゴもそれでいいのか、関係部門ともちろん協議するが円満に併合するには同族からの接触が効果的だろう。必然的に今の仕事に加えて厄介事が増えるぞ?」
マコトは確認する。
2人とも一瞬、「うへぇ!!」といった表情を見せたが頷いた。
「2人の意思は分かった。先ほども言ったが関係部門と協議して後にドンナー王国の残存勢力と連絡をつける。早速協力を頼むと思う」
ドンゴが、
「いや、司令。さっさと進攻して既成事実を作ってからの交渉の方が良い」
と過激な発言をする。驚くことにデンも頷いた。
「儂らが言うのもなんじゃが、儂らは頭が固い。中身も骨もな。実績を示しつつ交渉した方が良いだろうて」
マコトは鍛冶好き、酒好き、頭が硬いというドワーフの三拍子を改めて感じつつ執務室に向かった。
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