269話 新婚 5
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ドワーフの国、ドンナー王国からの使者は国境を警備する部隊が要請した多目的戦闘ヘリ『バイパー』に乗り公国の公都ノースガルド郊外にある航空基地まで特急で送迎されて来た。
城に直接降り立たなかったのは使者の身分と安全の確認の為と、一使者に過ぎない人物が事前申請を取らずに公国の指導者と謁見できるか!という事務的な理由もあった。
それでも使者は国境を越えて2日目の昼前にヤマト公王であるマコトに謁見出来ることとなった。謁見の間は旧アレフガルド王国時代の城を改装して使用している為に木材を大量に使用した落ち着いたエルフ様式の豪華な内装となっている。しかし、公国の発展に伴い新たな城?を拡張した公都内に建設中である。
「御初にお目に掛かります。ドンナー王国、会計方ドン・ドワルと申します」
レッドカーペットの上に片膝をついた姿勢で使者が待っているところにマコトが入室した。謁見を仕切る親衛隊の大佐が使者の発言を許した。
事前の情報によるとドンナー王国の公職は、鍛冶や採掘を行う鍛冶方と各国との交渉、取引を行う会計方に大別され、他国との戦争や魔物との戦闘の際は団結して武器を持って戦うようだ。実際に使者のドワル氏もドワーフらしい小柄ながら筋肉質の身体をしている。
「我が国の都、大洞窟に迫りつつあります洞窟竜、個体名、掘削野郎の討伐または撃退に協力していただきたいのです」
長くなる前口上を省かせて用件を述べるように大佐が促すとドン氏はそのように切り出した。
内容を簡略化すると、地下の採掘の為の坑道を辿り鉱物を主食とする竜が長年に渡って王国が貯め込んだ金属を狙って王都を目指している。通常であれば返り討ちにしてその身体を逆に資源にしてしまうのだが、今回の竜は千年以上生きた老竜らしくドワーフ達の攻撃が通らないそうだ。
王国は周辺国へ救援の使者を送り、援軍を出せば金銭的な報酬と交易の際の優遇を約束。見事に討伐または撃退した国には更なる見返りを約束しているとのことだった。
ヤマト公国の存在はゲシュタルト王国から独立した時点から認識しており、今回の結婚式典にも使者を派遣していたが使者が帰還する前に洞窟竜が出現した為にヤマト公国の実力を疑う声もドンナー王国内であったがドン氏が強く推したようだ。
『それって、ドンナー王国内でうちのことを見くびっている勢力が居るってことだよな?普通交渉の際に言うかな』
マコトは思った。
「貴国の事情はあい分かった。しかし、我が国も私自身の結婚直後ということもある。現在は国が騒がしいのだ」
マコトは暗に断りを入れた。ドンナー王国の主力は金属加工品だが、それが途絶えたとしてもヤマト公国ではダンジョンから採掘される鉱物とそれを加工して作られる品々が有る為にそれほど悪影響はないのだ。
前にも述べたかもしれませんが作中で「バイパー」というヘリコプターが出て来ますがアメリカ海兵隊の「ヴァイパー」攻撃ヘリのことを知らずに決めました。大したことではありませんけど報告します。




