268話 新婚 4
いつもありがとうございます。新展開です。
ヤマト公国 公都ノースガルド 王城の執務室
「陛下、草案ができました」
ミラ・ノ少佐達がマコトへと新組織図の案を提出する。それによると、
○軍事省 陸海空軍、駐在武官、衛兵、冒険者等を統括
○外交省 外国との折衝を担う
○行政省 公国の内政を取りまとめる
○商業省 商工業、教育、医療、技術開発等を取りまとめる
○特務省 親衛隊、武装侍女隊、情報局などの表沙汰を避けたい業
務を統括
5つの省を設ける内容となっていた。
「採用!」
マコトは決済印を周囲が止める間もなく押してしまった。
「よ、宜しいのですか。軍事省の冒険者の統括など冒険者ギルドとの軋轢が予想されますが?」
草案をまとめた3人の他にもマコトの秘書官をする親衛隊の中佐が室内に居て意見する。
「勿論、通常の業務には口を出さない。しかし、魔物氾濫が地方の街で突如発生した際に軍の部隊が間に合わない場合も想定される。その際には通例通りに冒険者ギルドからも戦力を出してもらう。だから、領主はギルドに援助をしているんだ」
マコトは室内の人間が話しを理解しているかを確認しながら説明を続ける。
「軍の部隊が到着するまでの時間稼ぎをしてもらう訳だが、冒険者ギルドに街の防衛戦力の指揮権を与える訳にはいかない。それはその国を治める者の仕事だ。だから指揮権は私の権限を委譲された者、つまり軍事省の人間が持つこととする。これは我が国の絶対方針だ!」
草案の作成に携わった空軍の少佐が納得したように頷く。
「つまり、陛下はギルドを所属する冒険者への相互扶助に徹しさせて、今まで暗に認められていた武装組織としての力を削ぐのですね?」
「そういう訳だ」
マコトは肯定する。
「いささか、おおざっぱに感じるかもしれないが詳細は自分の方で進めるとしよう。ご苦労だった」
マコトは3人を労う。しかし、彼女達はなかなか退室しない。秘書官が苛立っているのをマコトは感じた。
「まだ何かあるのか?」
陸軍の参謀役を務めた中尉が意を決したように言う。
「陛下、この資料を作成するのに私達は空中を航行する艦内で不眠不休で取り組みました。そこで・・・・」
「分をわきまえなさい、陸軍中尉!!」
秘書官の親衛隊中佐が一喝した。
「まぁまぁ、彼女達も隣国への派遣の後に追加の仕事を押し付けられたんだ。少々の恨み節もしょうがない。後日、要望があれば検討するし、無ければ任務への貢献を個人的に評価するとしよう。本当に感謝する」
3人はそのマコトの言葉を受けて退室した。
マコトはそのまま、思考の海に沈む。
『今のヤマト公国の人口は約300万人と統計が出ている。今は軍は総数が数万というところだが、15万人ほどに増員したい。幸い経済力は領土内の各種資源に恵まれて、農業による食糧・生産自給率も高い数値を示している。工業力も自分が設置した工場の影響もあり発達している。貿易関係も輸出が多く、輸入が少なく黒字になっている。
そのうちに対策をとらないと大幅な貿易赤字になった国から難癖をつけられかねない。自分はまだ若造だとなめられているだろうから交渉カードとして軍事力が欲しい。それで軍にも政府にも幹部となる人間が不足している。商業省の教育部門には大規模なてこ入れが必要だな。・・・・自分新婚のはずだが誰も考慮してくれない。新婚旅行だって行けてないし!』
マコトが悶々としていると執務室の扉が軽く叩かれる。
「どうした」
マコトが問うと扉の向こうで警備している親衛隊員が答える。
「通信室から緊急の伝令が来ております」
「通せ」
「了解しました」
執務室の扉が開いていく。扉の左右には短機関銃を装備した2人の隊員が立っており、その間から通信部隊の伝令が入室した。
「火急の要件にて失礼します。ドワーフの国ドンナーから救援を求める使者が入国した、と国境警備の部隊から無線で連絡がありました」
「うん?ドワーフの国はドワンゴでは?」
「内紛があり、政変があったようです。周辺国には関係ありませんけど。それで王国の地下王都に洞窟竜が出現したので救援が欲しい、と各国に使者を出しているようです」
「竜かぁ」
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