262話 合同結婚披露式典 IN王都 11
ゲシュタルト王国 王都ゲイボルグ 王城
暗殺未遂からおよそ1日経過 夜会
「ヤマト公国ヒイラギ公国陛下、ご入室されます」
王城の一室、宴等の使用目的のだだっ広い大広間に王国の貴族や他国の貴族、平民の有力者達が集まっている。他国の王族らしき人物の姿は見えないのは花嫁の一人がゲシュタルト王国の王女とはいえ主役が何処の馬の骨とも分からない成り上がりの男、とマコトが軽く見られている証左であろうか。
そんな室内には既にゲイボルグ王国国王ハイマンの姿が見える。同格とされる二人の国家元首の扱いに王国の儀礼担当の貴族は頭を悩ませたが国王の「ヒイラギ公王が主役」との鶴の一声でマコトが後の入室となった。
この話しには続きがあり、花嫁達の入室のタイミングについてもひと悶着あった。
花嫁だから未来の夫婦として共に入室する派、結婚前であるのだから慎みを以て別個に入室する派、未来の夫婦なのだから共に入室するけど花嫁が複数だから配置で花嫁に扱いの差が無いような形を取る派などが主張を繰り広げた。
結果、
「アナスタシア様、ミナサリア様、アリシア様、ご入室されます」
マコトの入室から間を置かずに3人が一緒に入室する。そして入口付近で待っていたマコトが近付き、アナスタシアの手を取って部屋の奥へと進む。
やはり、身分の有る世界。3人の中で国王の愛娘という身分を持つアナスタシアを立ててミナサリアとアリシアは後に続く。事前に彼女達の了承はもらっているとはいえ、マコトの彼女達に対するフォローは男の見せ所となるはずだ。
マコトとミナサリアが宴の参加者から拍手や祝福を受けて進んでいると、
「あれは・・・・、バカダ伯爵か?」
王城に到着時にマコトの案内役を務めた新バカダ侯爵であるが、詳しい話しを聞くと先代のしたことといえ侯爵家が失態を犯したことには変わらず、爵位の降格という処分をバカダ家は申し付けられた。
新たな伯爵は先代の従兄弟にあたる傍流の家の出自らしいが、降格された家の名誉回復を身内からやんややんやと言われてストレス、王家に対して貴族が負い目を負ったと周囲の貴族から文句を言われストレス、名誉回復の為に、と立候補したマコトの警護ではダモンクレスト枢機卿がトラブルを起こしてその日のうちに暗殺未遂が起こる。
バカダ伯爵は一睡もせずに警備強化、警護体制の見直しに取り組んでそのまま夜会に参加していた。本来であれば指揮を取りやすい別室に待機しておくべきだろうが貴族のしがらみで夜会の会場に引っ張り出された。
「だいぶ疲労しているな。警告はしていたが、まさかあんなに強引なやり方をするとは誰も想像出来なかったからな」
マコトはバカダ新伯爵に同情したが出来ることもなく通り過ぎた。
部屋の奥にはホンの少しだけ床が高くなっている箇所があり室内を見渡すことも出来、周囲からの視線も集めやすい。
そこにマコト達四人が到着するとハイマン国王と皇太子達が待っていた。皇太子とは以前にも会っているはずだが印象が薄くよく覚えていない。姉達が敗嫡されたり、他家に嫁ぐことで正式に王国の後継者として皇太子になったらしい。
マコトが周囲を見渡すと城の給仕や侍女が人海戦術で参加者達に飲み物を配っている。乾杯の習慣はこの世界にも有るのでその準備だろう。
『そういえば、あの飲み物を入れているグラスは相談されて異世界マーケットで購入したものだったな』
マコトがこの世界に転生した際にもらったスキル
・武器創造
・異世界マーケット
・アイテムボックス
・鑑定
・マップ作成
至れり尽くせりで異世界に来たマコトだったが振り返ってみて、
『武器創造、異世界マーケットには本当にお世話になっている。武器創造は各地に軍事工場を建設したがまだまだ必要だし、異世界マーケットも以前ほどではないけど医薬品や精密機械もまだまだ必要だ』
結婚を目前にして過去を振り返る余裕があるのか現実逃避しているのか思いに耽る。
『そういえば、このスキルは死神さんのおすすめだったな。あとの3個は自分が追加してもらったんだ。転生した直後は全部のスキルを使って生き延びたが安定してくると使わなくなってきたな。このスキルを使わなくてもよくなるように公国を導くことが自分の役割かな?何てな』
そうこうしていると侍女さんがマコト達の所にもグラスを持って来た。皆が受けとるとハイマン国王が乾杯の音頭をとる。
いつもありがとうございます。今回は思わせ振りな場面がありますけどまだまだ続く案はありますのでm(_ _)m




