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260話 合同結婚披露式典 IN王都 9

今年ニ話目です。

 思わず、マコトは声にならない笑いを漏らした。



 「クフッ・・・、豚というのはダモンクレスト枢機卿かな?」


 ゲシュタルト王国の暗部を担う「影」に問う。()は黙って頷いた。


 「今夜は旅の疲れを癒し、明日は各国の貴族や有力者達が集まっての宴があり、明後日は式の本番の予定だがいつ仕掛けて来ると王国は考えている?」


 「我々は公国陛下の御滞在中は変わらぬ警護を約束致します」


 無表情で「影」は答える。


 「教えてはくれないか。流石にイージス聖教が荒事に精通しているとは言え一国の主を暗殺する準備は1日では出来ないだろう。明日の宴も君たちがしっかりと王城内を固めるだろうから無理。とすれば明後日の式典後の国民への御披露目の行進(パレード)中が危険だな」


 マコトは親衛隊員に対しての増員の指示と武装侍女隊を派遣艦隊から追加して呼び寄せるように命令した。


 「陛下、狂信者達を更に他国の王城に入れられるのですか」


 親衛隊員は心配そうに言う。


 「親衛隊は如何にも強面(こわもて)だからな、見せる警護をしてもらい敵に警戒させる。武装侍女隊は一見して武装しているように見えないから敵を油断させて仕留める役割だ。しかし狂信者とは言い過ぎではないのかね?」


 「いいえ、陛下はあの者達の本質を理解されておりまS・・・」


 親衛隊員の若い男性隊員が黙らされる。


 いつの間にか部屋の扉付近で控えていたはずの武装侍女が背後から抱き付く体勢で三日月のように湾曲したカランビットを親衛隊員の喉にヒタヒタと当てていた。


 「私どもが何か?」


 「・・・・悪魔が!!」


 華咲くように可憐な笑みを浮かべる武装侍女に対して親衛隊員は悪態をつく。


 「・・・・・ッ!!」


 刃先が隊員の喉に触れ血珠ができる。


 「止めんか他国の者も居るのだ」


 マコトは疲れた口調で止めさせる。


 「失礼しました」


 武装侍女は親衛隊員の拘束を解き、後ろに下がってマコトに頭を下げる。既にカランビットはその手には無い。


 「この・・・・!」


 隊員が腰の拳銃に手を伸ばす。


 「・・・・・」


 黙ってマコトは前蹴りで隊員を蹴り跳ばす。


 「ガハァ!!」


 壁まで翔び隊員は沈黙する。


 「何事ですか!!」


 部屋の前の廊下で警戒していた残りの親衛隊員が音に気付き扉を開ける。


 「大丈夫だ。この者を待機場に運べ」


 倒れた隊員を示す。


 「・・・・了解」


 一瞬、何か言いかけたが隊員は倒れた隊員の足を持って引き摺って行った。


 「「影」殿お見苦しいところを見せた」


 「いえ、それでは私はこれで失礼します」


 王国側の人間が居なくなるとマコトは椅子に座った。


 「やり過ぎだ。親衛隊の待機場に行き、派遣艦隊に親衛隊と武装侍女隊の増員を私が命令したことを連絡して君も他の者と交代し次第謹慎してなさい」

 

 「しかし、それでは陛下が独りに・・・」


 「命令は既にした」


 マコトは不機嫌を隠さない口調で言った。


 「分かりました」


 武装侍女はショックを受けた顔をして退室した。


 「まったく、こんな場面で我が国の人材不足が露見するとは」


 ヤマト公国も成立して間もない国だ。なんとか詰め込み教育をして知識と技術を与えたがそれを生かす経験がある人材がまだまだ不足していた。


 コンコン


 扉をノックする音が聞こえた。対応する人間は今は居ない。


「入りなさい」


 マコトは入室の許可を出す。3人の侍女姿の少女達が入って来た。

 マコトはその服装に疑問符を浮かべた。武装侍女隊の服装ではなかった。


 「君たちは?」


 少女の1人が室内を見渡すと、


 「ヒイラギ公王様でいらっしゃいますか、国王陛下のご命令で私達が陛下のお世話を致すことになりました」


と説明したがマコトは返事をしなかった。確かに服装は王宮で見かけた侍女と同じだが先ほどの室内を走らせた視線は異様に鋭かった。


 『「影」が揉め事を見て警備の穴埋めの為に用意したのか?』


 マコトは思案する。


 「陛下?」


 「ああ、すまない考え事をしていた」


 マコトの返事を聞き少女達は視線を交わす。


 『これは』


 マコトは腰の軍刀を意識する。と同時に少女の2人が袖口から直刃のナイフを取り出してマコトに向かって走り出す。残りの1人はロングスカートの中から矢が装填された(いしゆみ)を取り出してマコトを狙う。


 「もう来たのか」


 刺客に対して軍刀を抜き放つ。







 

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