259話 合同結婚披露式典 IN王都 8
今年も宜しくお願いします。(新年を祝えない人もいらっしゃるかもしれないので御祝いは言いませんm(_ _)m)
「・・・・それがどのような意味を持っているか分かった上での発言ですかな」
ダモンクレスト枢機卿は浮かべていた胡散臭い笑みを消して低い声で言う。
「我がイージス聖教はこの大陸の最大宗教です。神のお声をあまねく人々に伝えようとしている我々を禁教ですと?」
マコトに、というよりも周囲の王族、貴族、有力者達に聴こえよ!と言わんばかりの声で続ける。
なおも言い募ろうとするダモンクレスト枢機卿をマコトが手で制する。
「先日、我が国の使者がお国の・・・・名前を失念しましたが枢機卿に伝えましたようにイージス聖教は我が国にとって害こそあれ、益はありません。よって私達から干渉することはありませんのでそちらも関わらないで頂きたい」
マコトは聖教国の教皇に次ぐ実質第2の権力者である枢機卿の名前を覚えていないと言い放った。
「この場に居られます皆様にお伝えします。過日我が国内において『世界樹教』なる団体が結成されました。彼らの目的は世界の様々な環境を整える循環機関たる世界樹の存在を世に知らしめることです」
発言が周囲に伝わるように間をあけて続ける。
「また世界樹からは難病、負傷に効果のある水薬が得ることが出来ますので我が国が仲介に入り適正価格でお売りすることが出来ます。私の式のはずが商談のようになりましたな!」
マコトが冗談めかして言うと周囲からはささやかな笑いが起こる。
無視された形になったダモンクレスト枢機卿が大声を出す。
「『世界樹教』ですと!ヒイラギ公王は異教を擁護されるおつもりか、指導者たる者がなんと嘆かわしいことか。それに干渉するなと我が聖教を蔑ろにするような物言い、これは不本意ながら公国を異端審も・・・・・」
「我が国には国教というものは存在しない。早速内政干渉するのは止めて頂きたい、国内に教会があるのは排除する意思はないが害があるのであれば取り除く用意がある」
はっきりと言い放つとダモンクレスト枢機卿に紙片を渡す。
「???」
不思議そうな顔をする枢機卿に対してマコトは声を潜め、
「我が国にイージス聖教国との関係を隠して『世界樹の雫』を買い付けに来ていた者達のリストです。たった今から入国禁止となり入国している者は手荷物以外没収して国外退去処分となります。理由は禁止事項である「営利目的の転売」ですので撤回はありません」
と伝える。声を潜めたといえ周囲には人がそれなりにいる。聞こえた者達がひそひそ話をする。教国は神聖魔法で人を癒すとして治療に法外な金額をとっている。そんな国が治療薬を買い付けるのは~といった内容だ。
ダモンクレスト枢機卿は顔を真っ赤にするとドシドシと大きな足音をたてながら退室する。引き際が良いのにマコトは感心したが追い出す材料はまだまだ用意していたのだ。しかし毛の長いレッドカーペットでどうしたらアレだけ音がでるのか謎である。
「ダモンクレスト枢機卿は突然の急病のようだ。代わりの代役を立てる時間はないことから明日の式の進行は余が行うこととする」
突然のハイマン国王の発言に人々がざわめく。歴史上、国の指導者レベルの結婚式で代理人を立てるなどほぼ前例が無い。零ではないが。
ダモンクレスト枢機卿の横槍によりマコトの式参加者への顔見せは手順が狂ったがなんとか終わりマコトは退室して用意された部屋へと移動する。結婚する男性と女性は式の当日まで会うことは無い。
これには前夜に独身最後の夜を自由に過ごす為、前夜に会って喧嘩して破局になるのを防ぐ為など言われている。
トントンと部屋の扉がノックされた。いつの間にか部屋に居た武装侍女隊の侍女にマコトが頷いて許可を出すと彼女は扉を開けた。
「失礼します」
黒い軍服の親衛隊員と使用人以上、貴族未満の服装をした中年の男性が入って来た。親衛隊員がいつでも動けるように気を張っているのを感じた。マコトは察した。
「『王国の影』の人かな?」
中年男性は無表情のまま頭を下げると、
「お伝えすることがあり参りました。豚ですが明らかに神職者ではない者達を王城内の教会に呼び出して何らかの指示をした結果、その者達は王都に飛び出して行きました。手の者が追っております」
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