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258話 合同結婚披露式典 IN王都 7

メリークリスマス!!寒い。

 王都民達に歓迎されてマコトはゲシュタルト王国の王城に入った。

 王城の正面門は大きく開かれて多数の騎士、兵士が整列して出迎えた。流石に高さが5m以上ある魔導動甲冑では門を(くぐ)ることが出来なく、腰を(かが)めた魔導動甲冑の手からマコトは悠然と降り立つ。

 地面に降りると同時に行進(パレード)に参加した公国軍に紛れ込んでいた親衛隊が黒い軍服に着替えてマコトの周囲を固める。


 「ヒイラギ公王陛下、ここからは我々が先導致します」


 30代後半だろうか男性王国騎士がマコトの前に進み出る。


 「お願いします」


 公王という名称とは言えマコトも一国の指導者だからもっと尊大な態度でも良いかもしれなかったが一般的な日本人であった身としては仲間や臣民でない他国の人間に高飛車な態度を取る気にはどうしてもなれないマコトだった。


 王都防衛戦の際に激戦となった王城であったが流石にその痕跡を認めることは出来なくなっていた。


 「私は防衛戦の折りに陛下に命を救って頂きました。ご婚約心から御祝い申し上げます」


 2人の王国騎士が先頭を進み、声をかけて来た騎士がマコトの斜め前方を歩く。マコトの王城内への視線に気付いたのか、そう話しかける。


 「本来であればこのような声掛けは非礼にあたるのですがお礼を申し上げたかったのと、どうしても謝罪しなければならないことがあります」


 そう言って、続けた。


 「前バカダ侯爵が婚約者の皆様に無礼を働き、無礼討ちにされましたこと(まこと)に申し訳ありませんでした」


 ここで騎士は立ち止まり、振り返って頭を下げる。2人の騎士も足を止めている。


 来賓の足を止めさせる等大変な無礼であった。


 「そのおっしゃりようは貴方が新バカダ侯爵ですか?」


 「はい」


 マコトは軍服の胸のポケットから『世界樹の雫』の小瓶を取り出して騎士に渡す。


 「まずはお飲みください」


 「??しかし、これは」


 マコトは嘆息する。


 「貴族としての覚悟は認めますが影腹など止めてほしい。私の結婚式でこれ以上血を流さないで下さい。腹部を刺したのですか?血臭がしますよ」

 

 「!!!」


 「恐らくこの後に独りで責任を取って果てるつもりで話し掛けて来たのでしょうが直ぐに飲んで治して、そのような謝罪はいりません」


 一行はちょうど幅のない廊下を歩いておりこのやり取りを聞く者はいない。先頭の2人は恐らく話しが付いている。何も言って来ない。


 「しかし、それでは私は・・・」


 「私達がそれを望みません。それにこの後に少し()めると思いますので味方は多い方が良い」


 「・・・・」


 騎士は無言で小瓶の中身を(あお)る。


 「良い飲みっぷりです。行きましょうか」


 一行は再び歩き出す。暫しして王の謁見の間とは違う部屋の大扉の前に辿り着く。ほとんど音を立てずに扉が開かれた。


 室内は謁見の間よりも広く、視界の妨げになる柱の類いも少ない。多数の国内外の貴族、有力者が(つど)っている。マコトの婚約者達の姿は見えない。


 中心のふかふかのレッドカーペットの上を歩きマコトはゲシュタルト王国国王ハイマンの前へと進んでいたが、


 「神の子であるヒイラギ、今回はおめでとう!」


 マコトの前方をふさぐ者がいた。


 「貴方は?見たところイージス聖教の方のようだが?」


 白いゆったりした服に金糸の刺繍の入った豪奢な肩掛けをした小太りの男だった。


 「如何にも、私は敬虔なるイージス神の使徒であるダモンクレスト枢機卿である!」


 鼻をふんす!と鳴らして男が言う。


 「何故ここに居るのかは分からないけどちょうど良かった」


 「?」


 マコトはハイマン国王に尻を向けて非礼な態度にならないように注意して貴族や有力者達に向きなおる。ハイマン国王とは目線でやり取りする。


 「お集まりの皆様、私はヤマト公国のヒイラギと言います。突然ですが我が国はイージス聖教を禁教としてイージス聖教国との国交を行わないことをここに宣言します!」




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