257話 合同結婚披露式典 IN王都 6
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「行進が終わったけど音楽が止んでないな?」
「式典の間中ずっと演奏してるんじゃないか」
「お母さん、お舟わぁ~?」
『皆様、外壁正門の方角の上空をご覧下さい。我が国の誇ります魔導空中艦隊が進入して参りました』
そのアナウンスで王都の民達はその存在に気付く。
「で、デカイ!」
中心に空母2隻が縦に並び、その両脇に戦艦が1隻ずつ付き添って歪な十字を形成し、その周囲を巡洋艦と駆逐艦が円形に囲んでなんとか輪形陣を構成している。地球の海軍関係者から見れば頼り無い陣形に見えたかもしれないが初めて見る存在に対してこちらの世界の住民の反応は激的だった。
「船があんなにも連携を取れるとは!」
「そもそも、魔導船は他国では水の上を走るモノがやっと試作された
ところばかりだ。空中を、しかもあんなにも巨大な船が動けるなど夢物語だ」
「空中だけで厄介だが『大砲』と言う先程見たような武器が大量に載せられているらしいが」
「お舟だ~」
軍事行進の見物に来た人々の様々な思いを他所に艦隊は進む。
王城まで残り1kmほどの位置で艦隊が動きを止める。
「「・・・・??」」
『王都の民よ、傾注しなさい。我が公王、ヒイラギ陛下です』
今まで、フレンドリーだったアナウンスが口調を改める。それと同時に演奏される曲が厳かなものに変曲される。
空中空母から1機の魔導動甲冑が翔び出す。全体が他の機体と違い下品にならないように抑えられた金色に塗装されている。その両脇に他の機体が付き従う。
その3機はそのまま行進が行われている中心路に降り立つ。
着地の瞬間の振動や音はほとんど感じられなかった。
金色の機体の手には黒い軍服の人物が居た。直立するのに不向きな手のひらの上で体調不良を感じさせないしっかりとした姿勢で立っている。
スッと右手を挙げると真っ直ぐに王城に向ける。その動きに合わせて魔導動甲冑部隊が歩き出す。
地上から数mの位置に軍刀を杖に立ち、人々に迎合することなくただ前を見つめる初めて見る公王の姿を王都の民達は歓声を上げるでもなく、目で追っていた。
良く日に焼けた肌、制帽から覗く髪は黒く短い、先を見つめる瞳も漆黒。鼻は高くなくどちらかというと丸い、身長は高くはないが低くくもないが肩幅が広く、細身ではなくがっちりとしたドワーフの身長を伸ばしたような体型だ。
後に民衆の中に居た吟遊詩人はヒイラギの姿を軍人としては平凡だと評価した。ただ、その瞳はとても暗く見ていると深淵に沈みそうだが同時に優しかった、と語っている。
『ヤバい!!まだふらふらする、思ったよりも揺れて転けそう出し酔いそう。視線も凄いしこの演出失敗したかな?』
ただ本人は慣れない御披露目にテンパっていた。自衛隊にいた時の式典等の徒歩行進は基本的に部隊でしていたし、旗手の経験もない。小市民のマコトは何万もの瞳に晒されて背中は汗だくだった。
『そもそも、機体を金色にしたのも悪趣味じゃないかな?皆が「王族と言えば権力の象徴たる黄金です!!」って言って金板を貼ろうとするから止めて塗装にして艶消しをしたけど目がチカチカする。自分は仮面を付け替えて出世魚みたいに機体の色を変える某大佐じゃないんだぞ!アレ総帥だったかな?』
マコトの想いを他所に王城へと進んで行く。
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