233話 魔王 17
コロナはますます猛威を奮っています。今年中に終息するのでしょうか?
バラバラになって逃走した天馬乗り達は空を駆け続ける者、急降下して森林の中に隠れて逃げようとする者、さまざまであった。
『ゴーレム16より空中管制機!!目標が散開して逃走した。ゴーレム小隊は地上に逃走した目標を追撃する、空中を逃走する目標はこちらに向かっている友軍に任せたい。可能か?』
『空中管制機よりゴーレム16、バイパー多目的攻撃ヘリが20分後に、制空戦闘機が10分後に到着する。空中の目標は彼らに任せろ』
『ゴーレム16、了解!!降下する。上空は任せた』
ゴーレム小隊の3機の魔導動甲冑が20mm機関砲を構えて上空300mから一気に降下する。機内の正面モニターには森林に消えていく白い天馬の姿が映し出されていた。
『ゴーレム16より各機、目標は7騎。森林に紛れて逃げる気だ。センサーをレーダーからサーモに切り替えて追うぞ、ゴーレム18は上空50mで待機して追い立てられて飛び出して来たら撃て』
『ゴーレム18、了解』
『ゴーレム17は自分と森林内で追撃するぞ、樹木に衝突しないように注意しろ』
『ゴーレム17、了解。操縦技術をゴーレム18に見せ付けてやりますよ』
『ゴーレム18より、ゴーレム17。ゴーレム17が樹木に接触するのに今晩の夕食のビール代を賭けますよ!』
『言ったな?ゴーレム18、今夜はビール飲み放題だ!!』
『ゴーレム17、18。浮かれるのもほどほどにしておけ、目標からの反撃もあり得るんだぞ!?』
『『了解!!』』
地上の2機は距離を50mほど保って森林内を捜索して行く。捜索開始10分後、上空を2機の制空戦闘機が通過して行く。応援の第一陣が到着したのだ。すると、
『ゴーレム17より各機、サーモセンサーに感あり!!1時の方向に熱源2距離150m』
『ゴーレム17、確認した!タイミングを合わせろ3・2・1、撃て!!』
ドドドドドン!!ドドドドドン!!ドドドドドン!!
20mm機関砲の射撃が熱源反応のあった場所に叩き込まれた。突然の砲声に驚いたのか野鳥の群れが飛び立つ。それに紛れて飛び立つ白い影、
『ゴーレム18より各機へ!野鳥に混じって天馬が5騎飛び出して来ました!!攻撃を開始します』
ゴーレム18はセンサーをサーモからレーダーに切り替えて1騎ずつ撃破していく
3騎を撃墜したところで、ゴーレム16、17も推進材を吹かして合流して1騎ずつ撃墜した。これで、このエリアに居た天馬乗りは全滅した。
ドカ~ン!!
離れたエリアの上空で、爆発が起こった。制空戦闘機による対空ミサイルがどうやら空中を逃走していた天馬乗りを捉えたようだ。殲滅も時間の問題だろう。
『ゴーレム18からゴーレム16、森を、森を見て下さい!!』
周辺警戒を続けているゴーレム18から悲鳴のような通信が入る。一体何が起こったというのか?魔導動甲冑のモニターアイを地上の森林に向けると、そこにはあちらこちらから黒煙を上げる森林の無惨な光景が映し出された。
ただの森林火災ならば燃えているのは樹木でここまでの黒煙を上げることはないだろう。恐らく天馬乗り達が可燃性の油のようなものを大量に撒き散らして発火させたのだろう。黒煙は瞬く間に広範囲へと広がっていく。くそ、奴らなんて置き土産を残しやがる!!
『ゴーレム16より空中管制機、方面軍指令本部イヤ統合作戦司令本部に報告して森林の付近の居住地から民間人を避難させろ!アレは普通の森林火災ではないぞ!!』
『空中管制機より、領空侵犯騎に対応中の各機へ。火災の規模を詳細に把握すべく各機のセンサー情報、撮影画像を統合作戦司令本部のチャンネル319に送信せよ、尚、当該領空侵犯騎は全ての撃破が確認された。引き続き森林火災の情報収集に務めよ』
『ゴーレム16から空中管制機、民間人の避難は始まっているのか?どうなんだ?』
『・・・・。無線傍受中の各機は良く聞きたまえ。統合作戦司令本部から機密情報の緊急特別開示が許可された。現在の火災発生エリアから南西200km地点にヤマト公国の重要拠点、世界樹が存在する古き森がある。ヤマト公国はこの街を放棄することはないし、住民も避難する意思はない。よって、この森林火災は街に到達するまでに必ず鎮火させる。ヤマト公国軍の総力を挙げてでもだ。諸君らの収集する情報はその為の判断材料となる。たかが情報収集と侮ることなく任務に務めよ。尚、領空侵犯騎の目的が街の空爆にあったのかは現在も調査中である』
『ゴーレム17、18聞いていたな?ヤマト公国の未来の為にも、この任務やり遂げるぞ!!』
『『了解!!』』
『しかし、世界樹ですか、実在したんですね?』
『ゴーレム18、軍務経験の浅いお前でも我が祖国にしかない部位欠損すら癒す「世界樹の雫」というポーションの噂ぐらい聞いたことあるだろう?皆、存在は知っていた。しかし、その供給源は永らく機密とされてきた。基地に帰還したら機密情報の漏洩防止の誓約書を書かされるぞ?』
『書類仕事は勘弁です』
『ハッハッハッ!今は任務に集中しろ、行くぞ!!』
3機の魔導動甲冑は広範囲の情報を収集すべく散開して行った。
図らずしもイージス聖教の狂信者達は自らの命と引き換えにヤマト公国をピンチに陥れました。書いていてアレですけど、宗教って怖い。




